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深夜の市長


■公開:1947年

■製作:松竹

■製作:小出孝

■監督:川島雄三

■脚本:陶山鉄

■原作:

■撮影:長岡博之

■音楽:

■美術:森幹男

■録音:小尾幸魚

■照明:小泉喜代司

■編集:

■主演:安部徹

■寸評:

ネタバレあります。


安部徹と神田隆といえば、ともに大魔神にやっつけられた極悪人として有名であるが、本作品では各々、兄の冤罪を晴らす青年と、その青年に協力を惜しまない正義の新聞記者である。

深夜の銀行、夜食を食べていた職員・日守新一(特別出演)が射殺されて現金が強奪される。犯行現場にわざとらしく放置された遺留品。それが手がかりとなって無実の男が死刑にされてしまう。犯人とされた男の弟・安部徹が、事件の真相を探る新聞記者・神田隆とともに、夜の東京で一目置かれている顔役で、今では当該事件の黒幕とウワサされるブローカー・三津田健の一味となっている「夜の市長」・月形龍之介の助力を得て、兄の冤罪を晴らすというストーリー。

戦時中、大陸でスパイ活動をしていたらしい三津田健の腹心の部下であり、彼が経営しているクラブの歌手・村田知栄子の身体とクラブの経営権を狙っている三井弘次は、遺留品を盗んで犯人でっちあげの手伝いをした少年・山内明を証拠隠滅のために殺害しようとしていた。

戦後、タクシーの運転手になった安部徹は山内明の妹・空あけみと知り合い、いい感じになるのだが、偶然助けた山内明が、遺留品とされた品々を兄から盗んだ犯人であり、つまりは犯人でっちあげの生き証人であることを突き止めてしまう。事件の真相が明るみに出れば、山内明は凶悪事件の共犯者。「そんなことされたらワタシたちの生活が・・」安部徹の恋心を利用して、真実を闇に葬ろうとする空あけみの卑劣な(いや、それほどでも)アピールに安部徹の心は乱れるのであった。

無実が証明されたって、すでに兄は死刑になってるんだから取り返しつかんわな、いやいや、故人の名誉っていうのも大切だ。ていうか、それだけの罪を犯しておきながら、戦時中、特務機関で政府のヤバイ仕事を請け負っていたからという理由でお目こぼしされ、戦後は人並み以上の生活水準をエンジョイしている三津田健と三井弘次を許してはいけない!

月形龍之介は村田知栄子にベタ惚れされる、カッコよくてバリバリに渋い紳士。トレンチコートにハットがステキだ。例の、怖い目と渋い声で、三津田健たちの悪事を暴いていく。

実は月形龍之介と安部徹の兄は元同志という間柄。これはなんとしても同志の無実を証明しなければ。「夜の市長」として、悪人たちに追いつめられた山内明と安部徹を助けに行くが、山内明が殺され、安部徹も悪人たちに撃たれて海に転落する。

逃亡を図る三津田健。三井弘次と月形龍之介は大乱闘を演じ、二階のバルコニーからもんどりうって転落。死闘の末に三津田健がうっかり三井弘次を射殺してしまい、月形龍之介も重傷を負う。駆けつけた安部徹があわや!というところで、月形龍之介が最後の力をふりしぼって三津田健を射殺。安部徹は空あけみと一緒に新しい門出。

安部徹がマーロン・ブランドのような純情な二枚目なのにまずビックリ。神田隆のインテリジェンス溢れる新聞記者もカッコいい。なにより、安部徹は図体がデカイから見栄えがするし、小柄な月形龍之介はやや不利だ。三津田健の眉毛が大笑いするほど太くて濃いので、なにもそこまでしなくても、とは思いつつ優しそうな三津田健の顔をなんとか凶悪にしようとした努力は褒めてあげよう。無理だけど、どう見ても、ヘンだけど。

二枚目と美女、謎の男、特務機関の黒い組織、定石どおりのギャング映画。技斗が野暮ったいのは許容範囲としよう。大坂志郎が悪の一味なんだけど、落ちてきたお皿を脳天で受け止めてきゅ〜なんていう演技もあって、コメディリリーフ。

ストーリーとは直接関係ないのだが、勝鬨橋が上がるところが見れる。

日本製のフィルムノワール、それを純メイドインジャパンな月形龍之介がやってるってところが希少価値。

2010年10月23日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2010-10-24