大人には分からない・青春白書 |
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■公開: 1958年 ■製作:東宝 ■製作:三輪礼二 ■監督:須川栄三 ■脚本:須川栄三、森谷司郎 ■原作: ■撮影:小泉一 ■音楽:宅孝二 ■美術:阿久根巖 ■録音:保坂有明 ■照明:隠田紀一 ■編集: ■主演:夏木陽介 ■寸評: ネタバレあります。 |
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風俗映画で重要なことは、その時代性を象徴するような俳優を主演させることで、本作品では、夏木陽介である。 夏木陽介(21)、佐藤允(24)I、佐原健二(26)、江原達怡(21)ほぼこんな感じの実年齢構成。佐藤允が黒ぶち眼鏡、しかもデカイ眼鏡なのだが、これはどうやっても大学生に見えない佐藤允をなんかしようとする苦肉の策であろうか。眼鏡=インテリ、その発想は「ひょっこりひょうたん島」の博士さんかい? 大学生四人・夏木陽介(ドラム)、佐藤允(ピアノ)、江原達怡(サックス)、佐原健二(ベース)と団令子(ボーカル)は、人気も実力もある学生バンドで、芸能プロのマネージャー・草笛光子からも強烈にプッシュされている。夏木陽介の父親は、閣僚目前の代議士・柳永二郎、母親は女性評論家・沢村貞子。彼は独り息子であり、妹・笹るみ子と、すでに嫁いでいる姉・杉葉子がいる。つまり、期待の長男であるから、ご両親の期待もさぞや大きいに違いない。 男子四人は団令子を巡って正々堂々の喧嘩をしたり、家出と称して海で遊び惚けているので、おそらく経済的に困窮している家庭の子息ではない、それなりに遊んでいるボンボンたちである。夏木陽介は、団令子にプロポーズして受け入れてもらうのだが、ちょうどそのころ、父親の柳永二郎は文部大臣の椅子が目前であり、団令子だけは実家が美容院でちょっとロウワーなため、母親の沢村貞子としてはもう少し、ハイソな娘と結婚させたいところである。 関西出身の令嬢・環三千世との見合いの席でトンでもない失態を演じた夏木陽介であったが、環三千代も現代ッ娘であったので、両者とも言いたい事をはっきり言う。素直というより、幼稚でデリカシーに欠けるような気もするが、とにかくお互いに納得の上で、この見合いはご破算に。 こういう役どころでは、あまりいい芝居ができない代わりに、単純明快な夏木陽介が適役だ。ヘンに芝居されると、イラっと来るだろうから、馬鹿っぽすぎて。 お母さんが実はお妾さんな白川由美の実の父親が柳永二郎だと、偶然知ってしまった夏木陽介だったが、母親がショック受けるだろうからと、秘密にしてあげるのだった。 男子四人は伊豆へ遊びに行き、白川由美も誘ったのだが、彼女は途中で愚連隊・若松明、岩本弘司たちにからまれてしまう。さっそく、浜辺で大喧嘩になった夏木陽介たちだったが、ここでいちばん活躍したのは佐原健二。技斗はいまひとつだが、なんとなく白川由美と上手くいきそうな感じ。ああ、ここでもやっぱり、佐原健二の相手は白川由美なのね! バンガロー荒しと間違われた一行、すわ!息子の不祥事か!と夜中に辞表まで書いた柳永二郎と沢村貞子がさすがに堪忍袋の緒を切らして一同に大説教。夏木陽介はついに、白川由美の素性を明かして、今度は激しい夫婦喧嘩へ。聖人君子なんてそうざらにはいるもんじゃない、みんなスネに傷持つ間柄じゃあないですか! えー?それで親子と夫婦の和解とか、アリなの? ま、そういうことにしておきましょう。そんなこんなで佐原健二と白川由美、夏木陽介と団令子、一度は夫婦仲が冷え切った杉葉子と旦那・高松英郎(大映)との仲も修復された。バンドもリサイタルが開けることが決まって、メデタシ、メデタシ。 柳永二郎を出世の道具に利用しようとする新聞記者・三島耕と、その恋人でカメラマン・白石奈緒美の爛れた大人のセックス以外は、健全すぎてウソくさくてどうかと思うが、東宝若手男優のプロモーション映画だと思えば多少のインチキは目をつぶろう。 いちばんの笑いポイントは、相手がいない佐藤允と江原達怡が踊るチークダンス、なんとかならなかったのか?女優あと二人連れて来りゃあ済む話だろう、ってことはないか。それと、意外だったのは品行方正なイメージの佐原健二がいちばんチークダンスが上手かったこと。健ちゃん、かなり踊りこんでると見たね。 青春スタアのみなさんとともに、後に東宝ギャング映画の悪役トップに出世する中丸忠雄が、環三千代の親族としてちょいと登場し、後に肉体派のボンドガールになる若林映子がモデル役で顔出しする。いろんな意味で、プロモーションしてるわけだな。 加山雄三にその座を奪われるまでは、間違いなく東宝の青春スタアだった夏木陽介の少年っぽさが炸裂するアイドル映画。ただし、ここで苦言、音楽バンドの映画なんだからさあ、少しは楽器を弾きやがれ! (2010年10月03日 ) 【追記】 |
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※本文中敬称略 |
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file updated : 2010-10-03