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泡立つ青春


■公開: 1934年

■製作:大日本ビール

■製作:

■監督:マキノ正博

■脚本:

■原作:

■撮影:

■音楽:

■美術:

■録音:

■照明:

■編集:

■主演:

■寸評:

ネタバレあります。


タイトルだけだと、ソープランドの話かと思うが、内容はビール会社の宣伝映画。

健全、明朗、お子様にも安心してごらんいただけます。

この映画が21世紀になって突然、復活上映されたのはプリントが発見されたかららしい。みなさんも、天井裏や物置などでプリントフィルムを発見したら、むやみに捨てないようにしましょうね。

野球場で勝ったチームを応援していたヒゲデブと負けたチームを応援していたハゲ出っ歯が、一緒にビールを呑みに行く。勝利の美酒と、ヤケ酒のコンビだ。ようするに、理由なんかどうでもよくて、呑みたいだけだ。

ビアホール、おっさんたちでほぼ満員。みんな楽しそうにビールを呑んでいる。ほどよく酔っ払ってきたら歌の1つも歌おうじゃないか!ホールの歌手が歌う歌にあわせて、ジョッキを掲げて、知らぬもの同士が気勢を上げる。給仕係のお嬢さんたちも、揃ってステップを踏んでいる。なんだかやたらと楽しそうだ。

ヒゲデブの自宅で二人はさらに呑む。心の広い奥さんと、美人の妹もオツマミをせっせとテラスへ運ぶ。

ハゲ出っ歯はべろんべろん。そこへヒゲデブの友人と青年がやってくる。どうやら彼のお目当ては妹らしい。青年は彼女と結婚したいのだ。 男が過剰に恥じるとほとんどの場合、オカマっぽくなるのであるが、なんかもうナヨナヨしていて、青年、オマエはっきり言って気色悪いぞ。

妹も照れくさい、へべれけのハゲ出っ歯にからかわれて「いや!」とかなんとか言っちゃって、奥さんにご報告、あらいいお話じゃないの!とまんざらでもない様子。

さらに4人の男たちは飲み続け、ハゲ出っ歯はもうどうしようもない感じ。大人が呑むのはビール、子供は余った炭酸で作ったジュース。だけどあまりにも大人のビールが美味しそうなので、子供もビールが飲みたいという。 それはだめだと言うのだけれど、ハゲ出っ歯の要領を得ない説明に子供が納得するはずもなく、ではビールのできるまでをお話しましょうと、お父さんの友人による、解説スタート。

ようするに、ここからこの映画の本題なのである。

日本列島各地はおろか青島(チンタオ)にまで、ビール工場がある。瓶ビールの瓶はリユースが当然という、エコロジー的にもいい感じ。 アナログで人間くさい治具で毎日、大量生産されるビール。瓶は灼熱のガラス工場で、職人さんたちの重労働によって作られていく。

こんな冷たくて美味しいビールが呑めるのも、こうした職人さんたちのおかげなのだ。 ビールの味の決め手は、大麦とホップ。なるほど、農家の奥さんが一粒ずつ手摘みするホップ。これだけ手間ヒマをかければ、素晴らしく美味しいビールができそうだ。

企業の宣伝映画というモノは、実は外向けにあらず、内向けの効果のほうが大きいものだ。

企業の宣伝映画を真面目に観る消費者なんかそんなにたくさんいるはず無いが、自分がチラっと映ってるかもしれない、自分らの苦労を知ってもらえる希少な映画をいちばん熱心に観ているのは、その企業の従業員。

ビールの作り方を理解した子供が、ビールを呑んではいけない理由を理解したかどうかはこの際、どうでもよくて、とにかくビールは素晴らしい!のだ。 最後は、芸者さんたちが集団で踊る「ビール音頭」とにかく、楽しくノリましょう!というあっけらかんとした明るさがたまらない。そして最後に一文字で「オワリ」と出る。 音声は相当に悪い、当時の技術だからあきらめざるを得ないのだが、なんとなく下戸でもビールを呑みたくなるような映画だった。

2010年09月19日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2010-09-19