怪猫謎の三味線(恩讐 謎の怪猫) |
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■公開: 1938年 ■製作:新興キネマ(京都撮影所) ■製作: ■監督:牛原虚彦 ■脚本:波多謙治 ■原作:波多謙治 ■撮影:高橋武則 ■音楽: ■美術: ■録音: ■照明: ■編集: ■主演:鈴木澄子 ■寸評: ネタバレあります。 |
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この映画に化け猫の全身は出てこない。 日本の怪談映画の本質は、罪の意識によって自滅する様子である。ある意味、本作品はオーソドックスな怪談映画。 芝居の人気役者・鈴木澄子は当然タカビーな性格で、イカす常磐津・浅香新八郎と恋仲、しかし、浅香は師匠・嵐徳三郎から芸道に打ち込むためには恋愛禁止です!と厳命されてしまうのだった。浅香は劇場の奈落に迷い込んだ黒猫のクロを大切にしていたが、ある日、そのクロが行方不明になってしまう。 クロはイエネコだったので外出が不慣れ、うっかり外に出たときにケガをしてしまい、動けなくなっていた。そこを助けてくれたのが武家の娘・歌川絹枝。歌川は浅香に一目ぼれ、浅香も愛猫の命の恩人だから、お礼に大切にしていた三味線を歌川にプレゼント。その現場を目撃してしまった、鈴木澄子はカチンと来て、浅香に嫌味を言う。 婚約不履行をチクチク言われた浅香が、一言、師匠の厳命だと言えばよかったんだけど、すでに時遅し。師匠を言い訳にするつもりだろうと、ジェラシーの負のスパイラルはこうしてゆっくりと回り始めた。 歌川絹枝に、常磐津の才能があったことも結果的には不幸。クロの見舞いを兼ねて浅香の家に来る歌川に、嫉妬した鈴木澄子は、かんざしでクロを刺し殺してしまうのだ。猫の恨みは怖いぞ、それを一番知ってるのは、身を持って知ってるのは、鈴木澄子、オマエだろう! 芝居を見に来ていた殿様・尾上栄五郎が鈴木澄子に惚れてしまい、屋敷へご招待。公務そっちのけでどんちゃん騒ぎしたもんだから、忠義な家臣・松本泰輔がこれを諌めようとして、殿の逆鱗にふれてしまい、お手討ちにされてしまう。 浅香を恋するあまり家出した歌川絹枝だったが、鈴木澄子のパシリ・伴淳三郎に見つかってしまい、三味線の奪回とウザい恋敵をいっぺんに始末しようとした鈴木澄子に、刺殺されてしまうが、三味線ごと川に落下したため、その死体は発見されなかったが、三味線は巡り巡って常磐津の女師匠・森静子の手に渡る。 弾いているとすぐに糸が切れてしまうこの三味線を放り投げたところ、化け猫の顔が現れ、とにかく不気味なんだと、森静子は仕事仲間の浅香のところへ持ってくる。やっと元の持ち主のところへ戻った三味線だったが、歌川絹枝の安否が気がかり。 妹・森光子のところへ幽霊となって現れ、事件の真相を告げた歌川絹枝。姉の恨みを知った森は浅香新八郎とともに、鈴木澄子への復讐を誓う。 森光子が芝居の舞台で猿に変装し、鈴木澄子に接近し、仇討ちをすることに。 怨霊のとりついた三味線をかき鳴らすと、鈴木澄子の目の前には、黒猫と歌川の顔が浮かび、彼女は次第に狂気にとりつかれていき、こともあろうにお殿様めがけて矢を射てしまう。すっとんできたお殿様の家来は、森光子に殺される。そう、お父さんの仇=実行犯はその男。さらに狂乱した鈴木澄子の身体の上に、舞台装置が落下、直撃された鈴木澄子は息絶える。 何もかも、上手く行ったと、森光子と浅香新八郎は晴れやかな笑顔だが、お侍さん一人殺してんだから、そりゃタダでは済まないだろう。仇討ちにはお殿様の許可がいるわけだし、無届の仇討ちは殺人だし、それもこれも、きっとクロがなんとかしてくれたに違いない、そういうことにしておこう。 鈴木澄子のキュートな化け猫演技を期待していた人には物足りないかもしれないが、狂気にハマった彼女の目の据わり方は、まさに猫そのもの。 (2010年09月04日 ) 【追記】 |
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※本文中敬称略 |
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file updated : 2010-09-04