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零戦黒雲一家


■公開: 1962年

■製作:日活

■製作:岩井金男

■監督:舛田利雄

■脚本:星川清司、舛田利雄

■原作:萱沼洋

■撮影:山崎善弘

■音楽:佐藤勝

■美術:松山崇

■録音:橋本文雄

■照明:

■編集:

■主演:石原裕次郎

■寸評:

ネタバレあります。


いきなり航空自衛隊の訓練シーン。その教官・浜田光夫が本作品の語り部だ。

太平洋戦争末期、戦局は圧倒的に日本が不利、っていうかほとんど消耗戦になってしまい、南方戦線では敗走につぐ敗走。ソロモン諸島の中の小島に飛ばされたハミダシ部隊のところへ着任した、隊長・石原裕次郎の活躍。

東宝が無国籍ギャング映画を作ればその後を追い、西部劇風の戦争アクション映画を作ればその後を追い(注:日活映画ファンのみなさん、怒らないでね!)そして本作品に至っては音楽に佐藤勝を起用してしまったので、ますます日活版の「独立・・」である。

この島はすでに戦力外、米国もあまり相手にしていなかったくらいだったのだが、いよいよ総攻撃の雲行き。戦闘機(実物大!本物!)でやってきた彼を出迎えたのは、対空機関銃の一斉射撃、撃ったのは内田良平草薙幸二郎江角英明たちである。彼らは元は本職のヤクザだったりするのだが、規律に反したとか、上官侮辱罪とかでこの島に捨てられたも同然なのだった。

とにかく全員やたらと裕次郎に反抗的なのだが、彼らのリーダー・二谷英明は裕次郎に一目置いてはいるが心を開かない。軍医長・大坂志郎は温厚な性格で彼だけは裕次郎のよき理解者である。無法者に熱血を説くヒーロー、それをサポートする年長者。ようするにこれは日活青春映画のセオリーに忠実である。

若くてカッコよくて台詞が聞き取りにくい(カツゼツ悪いよな・・・)隊長の熱血指導。徐々に従う兵、たとえば若手の浜田光夫とか、戦闘恐怖症の近藤宏とかも出てくるが、近藤宏は勇気出して出撃し、華々しく戦死。

はじめはうまくいくかと思われて、いい人から順番に死んじゃう。徐々にテンションが上がっていくのが日活映画。

あと、残ってるのは鼻っ柱の強いヒロイン。出ました!意味不明に漂流している女・渡辺美佐子。おいおい、おまえは椰子の実かい!無理にもほどがあるよなあ、え?二谷英明に惚れていたからって?

どんな困難も若気の至りで乗り切ろうとする(か?)日活、おそるべし。

サファリパークのような島に女が一人、当然だが速攻で営倉入り。

連合軍のパイロット・ジャック・セラーを捕虜にしたが、彼は脱走し、残った戦闘機をいくつか爆破してしまうのだった。連合軍による連日の爆撃で、兵隊はどんどん戦死してしまう。

ある日、無線で敵米国の総攻撃を知った通信兵・天王寺虎之助。逃げるか、戦うか?最前線でそれはないだろうと思うが、個人の自由を尊重する日活なので、アリだ。必死に残った飛行機を整備する、催・郷^治は爆撃で吹っ飛ばされそうになった飛行機を命がけで守った。冴えないけれど、アイツ、いいヤツだったよな。しかし、いい身体してたな(蛇足)。

そこへ撤退のために潜水艦(わ!本物だ!)がやってくる。艦長・芦田伸介、副長・杉江弘はわずかな時間で全員撤収しなければならない。少しでも時間をかせごうと、定員オーバーの裕次郎と二谷英明が島に残り、戦闘機で戦うことにした。

イカスナンバーワンとツーの泣かせる奮闘の結果、全員潜水艦の乗れた。そこへ敵機が大襲来!二人は零戦黒雲一家、ヤクザの殴りこみのように立ち向かうのであった。

日本の軍隊には捨てられたが、仲間は見捨てない。反戦映画の仮面を被った青春映画の戦争映画。

本物なんだよ、飛行機が!地面スレスレ飛ぶの!もうそれだけで、あとはどうでもいいや。

裕次郎だから、で説明が省かれているような気がするので、例えばこの新任隊長がどうやってあらくれどもの信頼を勝ち得ていくかのプロセスはやや弱い。二谷英明は東宝なら池部良のあたりか?浜田光夫は久保明、内田良平は佐藤允、ジャック・セラーは中丸忠雄(おいおい)、どうも東宝映画に慣れてるもんだからそっちに準えてしまうのだが、説教臭くないぶん、カラッとした戦争映画。

2010年08月11日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2010-08-29