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ゼロ・ファイター 大空戦


■公開:1966年

■製作:東宝

■製作:田中友幸、武中孝一

■監督:森谷司郎

■脚本:関沢新一、斯波一絵

■原作:

■撮影:山田一夫、有川貞昌、富岡素敬

■特撮:円谷英二

■音楽:佐藤勝

■美術:北猛夫

■録音:矢野口文雄

■照明:

■編集:黒岩義民

■主演:加山雄三

■寸評:

ネタバレあります。


太平洋戦争末期、最南端のブインに、カッコいい隊長・久保明が率いる八生隊という戦闘機の部隊があった。先任飛曹・佐藤允、軟派な飛曹長・ 江原達怡、他、大木庄司土屋嘉男東野孝彦(英心)、波里達彦宇仁貫三

司令官・千秋実の命令により、最近、乗っていた飛行機が撃墜されて壮絶戦死した山本五十六長官(写真で登場)の弔い合戦のために出撃しようとしたところ、待ってましたとばかりに敵機の襲来をうけ、久保明と宇仁貫三が戦死する。

要するに本部からの命令の暗号がまるまる解読されていたわけで、飛行長・玉川伊佐夫、通信担当の中尉・太刀川寛は古い乱数表を燃やしてしまう。

新しい隊長が来るというので佐藤允たちがてぐすね引いて待っていると、どえらくヘタクソな隊長マークがついた零戦がやってくる。乗っていたのは少年二飛曹・小柳徹。てんでガキんちょだ。

後から来る隊長の名前は、靖国神社を髣髴とさせる九段中尉。潜水艦でやってきた九段中尉・加山雄三は、イキナリ敵機の定期便と呼ばれる銃撃に出迎えられるのだった。

度重なる定期便のおかげで若手の波里達彦も負傷してしまい、治療のため他の基地へ送られることになったが、おかげで小柳徹はいきなり出撃のチャンス到来。

「椿三十郎」で久保明の弟(本当は本当の弟・山内賢がやるはずだった役)を演じたときはまだ高校生だった波里達彦、もうすっかりお兄さんだね、ってか、前任の隊長はお兄さんだったんだね。

本題に戻りましょう。

加山は徹底的な合理主義であり、精神論をふりかざす専任作戦参謀・綾川香とことごとく対立。この作戦参謀は「大和魂で飛べ」とか言い出すイタイ奴。こんなのがいたから日本は負けたんじゃないかと思わせるほどだ。

定期便を叩くために、新型爆弾を搭載した戦闘機(注・爆撃機ではないのでミスマッチ)がヨタヨタ飛びながら敵機を迎え撃つ。最初は馬鹿にしていた隊員たちも、加山隊長のあざやかな手腕にビックリ。しかし、この作戦の最中、初陣の小柳徹をかばったベテランの土屋嘉男が撃墜されてしまう。小柳徹は責任を感じ、生還した直後に泣き出してしまうのであった。おまけに、ギリギリの燃料を使い果たした佐藤允の愛機は不時着、炎上。

加山隊長は、燃料を節約しすぎる司令官たちに苦情を意見具申。つまり、合理的な作戦を打てるほどの力はすでに、帝国海軍には残されていないということなのだ。

次に加山隊長は総攻撃のニセ命令を敵に傍受させて誘い出し、飛行基地を粉砕する作戦「夜這い作戦(夜陰に乗じて敵を誘い出す、の意)」を提案する。敵に傍受させるためには、解読され済の古い乱数表が必要だが、全部燃やしてしまった後。

基地の整備班長・谷幹一はリサイクル&リユースの天才、なんせ物資が枯渇してますから・・・捨てるものでも大事にとっとく性質だったので古い乱数表を手に入れることが出来た。

おびき出された敵編隊を尻目に超低空で侵入し、待機していた敵機や武器庫を破壊した八生隊はさっさと引き揚げようとするが、土屋嘉男の敵討ちに燃えていた小柳徹は長く留まり過ぎて引き返してきた敵機に銃撃され重傷を負ってしまう。

スコールの中、佐藤允と加山雄三が並行して飛び小柳徹を誘導したが、ついに力尽きて小柳徹の飛行機はゆっくりと墜落していく。

故郷の歌をくちずさみながら必死に頑張った小柳徹は、まるで「ゲンと不動明王」のときの頑張り屋さんのゲン少年のようだな、と思ったら同じ人だった。きっと故郷でおっちゃん(あ!千秋実じゃんか!)と妹がさぞや哀しむことであろう・・・って小柳徹、大きくなったなあ。

加山雄三はここでも冷淡、しかし得意のギター(谷幹一・作)を一人奏でて、小柳少年の死を悼むのでありました。あ、ここんとこ、若大将、いい!美男子が涙を流さずに、悲嘆するシーン、横顔カッコいい!はじめて、加山雄三をカッコいい、と思った。

さて、友軍機はわずかになった。

そこへ、ガダルカナル島へ逆上陸する作戦のために、陸軍の中将・藤田進と彼らの一行を輸送してきた連合艦隊参謀・中丸忠雄が島にやってきた。中丸忠雄と加山雄三は因縁あり。

実は加山は派手に戦死したことになっている、敵から恐れられる名パイロットだったが、作戦命令が合理性を欠くと判断し、攻撃せずに引き返したため軍法会議で更迭されていた。中丸忠雄は、加山がマークされないように、そして敵の戦意を喪失させるために加山を戦死したことにしていたのだった。

加山と佐藤允が小柳少年を庇って飛んでいたとき偶然発見していた、ガダルカナルの電探基地はバケモノのような高性能。これを破壊しないで上陸しようなんてありえないと加山は進言したが、無謀な作戦だとわかっていても断ることは許されないのが軍人だと言い残して藤田進と中丸忠雄は出撃していった。

千秋実は、個人の尊厳やプライドに固執していた加山雄三を諭し、作戦参謀(そんでもって加山雄三と同期)としては最善を尽くした中丸忠雄の真意を説く。

佐藤允は敵の不発弾を抱いてガダルカナルの電探基地を破壊する作戦を加山に進言。多少、無理でも、不合理でも、戦局がここまで押されてしまった以上、ベストよりベターを選択すべきという佐藤允のめずらしく理性的な進言を受け入れた加山雄三。

きっと、中丸忠雄は電探基地に特攻しかけて藤田進を助けるだろう。ただし、佐藤允は乗る飛行機も無いし、負傷してるのでお留守番。しかし、ここで谷幹一が以前爆撃された飛行機と佐藤允が落っことした飛行機の部品を補完して、オンボロだがなんとか一機作ってくれていた。後を追う佐藤允であった。形見の軍刀を谷幹一に渡す佐藤允、カッコよし!

加山雄三たちの戦闘機に敬礼する中丸忠雄と藤田進。あ、順番逆か・・・だけど藤田(大)先輩よりか、かなり目立つし、シナリオの初期の設定よりも決定稿でかなり善玉にシフトしてたし、思いっきりカッコいい感じだったので中丸忠雄ファンとしては眼福であった。

ありがとう!森谷司郎!

作戦は成功するが、八生隊はほぼ全滅、最後に不発弾を電探基地に放った加山雄三が、ヨタヨタついてきた佐藤允に「さあ、帰ろう!」と、本作品ではほとんど見せなかった爽やか笑顔を見せた直後、被弾していた加山の機体が大爆発。

死ぬために発進した佐藤允が涙ながらに生還を誓い、必ず帰ると言った加山雄三が戦死。

本作品が監督デビューの森谷司郎。

おそらく空前絶後なくらい加山の殺し方が実に上手い。音消して、佐藤允の絶叫だけにして、泣けたよ、ホント、マジで。

女優が一人も出てこない、ほとんど真面目に戦争する東宝の戦争映画であっても、全体に不条理で不合理な戦争に握りつぶされた若い命の切なさがキッチリ出ていて、なお、アイドル映画としても成立している。

2010年08月11日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2010-08-15