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明治・大正・昭和 猟奇女犯罪史


■公開: 1969年

■製作:東映

■企画:岡田茂、天尾完次、佐藤雅夫

■監督:石井輝男

■脚本:石井輝男、野波静雄

■原作:

■撮影:わし尾元也

■音楽:八木正生

■美術:富田治郎

■録音:野津裕男

■照明:和多田弘

■編集:神田忠男

■主演:吉田輝雄だけど個人的には小池朝雄でお願いします。

■寸評:

ネタバレあります。


目の前に撮りたいものがあったら躊躇なく、それこそ舐めまわすように撮りたおす!

映画の限界も、常識も、何もかも超えてでも!

映画を破壊するのではなく、観る者を常識という名の鎖から解き放つ映画、ちなみにもうひとつのそういう映画は「不良番長 やらずぶったくり」だ。

観察医務院で毎日々々死体を解剖していた医師・吉田輝雄は、ある日、時分の妻・中村律子の自殺死体を解剖することになり、他人の精液を体内に残して死んだ妻の、自殺の理由を知るために、過去、女性がからんだ猟奇的な事件について調べてみることにした。

そんなことする前に、妻の交友関係とか日記とかやっておくべきことはたくさんあるような気もするのだが、そんな理屈はどうでもいいからとっとと先行くぞ!

昭和三十五年、ホテル東洋閣(実際の事件では日本閣)で起こった殺人事件。

経営者・石山謙二郎の情婦・藤江リカが仲間の藤木孝と共謀し、石山謙二郎の妻・葵三津子と一緒に入浴中、背中を斧でめった打ちにして惨殺し、その死体をホテルの地下にあるボイラー室の壁に塗りこめてしまう。葵三津子がホテルのお金を持って失踪したことにした藤江リカはホテルを乗っ取るために、石山謙二郎も撲殺してしまう。葵三津子の死体を一緒に埋めに行った藤木孝の女狂いに腹を立てた藤江リカは彼も刺殺してしまうが、犯行の最中に火事を起こしてしまったため、警察に目をつけられて逮捕され、死刑の判決を受けた。

色と欲とに狂った末の犯行という事例であるが、んなもん何か参考になるんだろうか?あなたの妻の自殺の原因を探す目的に対して。ところで藤江リカと葵三津子は全裸だったが藤木孝は越中フンドシなのはなぜか?見たいものは惜しげもなく、見たくない=撮りたくないものはそれなりに、だろう、たぶん。

象徴切り事件っても、なんのことだかさっぱりだが、ようするに愛した男の大事な物を他人が触れないように、自分の物にしてしまう、そういう事件。

学生服の第二ボタン=男子のイチモツ、同じじゃないぞ!それ、絶対!

阿部定・賀川雪絵が。勤務先の料亭の主人・若杉英二と出奔して、SMプレイの挙句に若杉英二を絞殺してしまい、このままでは愛する男の身体を奥さんが持っていってしまう!そんなのイヤ!じゃ、じゃあ、この男の「男」を切り取って私だけのものにしよう!という明快な動機で、性器を切り取って逃げてしまう。

法廷で裁判長・沢彰謙に事件のいきさつを説明する賀川雪絵、それよりなにより阿部定さん本人が、吉田輝雄と橋の上で立ち話するところが本作品のすごいところだ。服役した後だから普通の人なわけだが、吉田輝雄はどんな顔して彼女の話を聞いたんだろう?アップは別撮りだからなあ、吉田輝雄も困ったと思うが、色男だから(なんのこっちゃ)阿部定さんも安心してたかも。

象徴切り事件の再現ドキュメンタリー、痴呆症の入ったお婆さん・金森あさみに年齢詐称も甚だしい詰め襟学生服の男・由利徹。コ汚いパンツ丸出しでアソコ切られて悶絶。ここまでくるともうSFのレベルだな。次の事例は浮気性の男・大泉滉が本命の女・三笠れい子に切られてしまう事例。大泉滉がなんでそんなモテるんだよ!と憤ってもしようがないのであるが。

小平義雄・小池朝雄(なんとなく名前の字面が似てる)は戦時中に、軍需工場の女工を強姦殺人してからというもの、敗戦のドサクサにまぎれて買出しに出かけた女たち・木山佳松井みかを甘い言葉で誘って絞殺し屍姦してしまう。進駐軍に就職させてやると言ってアルバイト・片山由美子を、バチアタリにも芝の増上寺境内で殺してしまいついに小平は逮捕され、絞首刑となる。

ブヒブヒと歪む鼻腔やタバコのヤニにまみれた歯をむき出しにして、殺人の瞬間を興奮しながら語る小平義雄の不気味さ、ようするに病気なわけだが、肌の毛穴から立ち上る臭いがたまらない嫌悪感を醸し出してくる。石井輝男監督としては女優を裸にして、ゴミみたいに捨てられちゃったところを撮りたかったんだろうけど、それらを圧倒する小池朝雄のタバコのヤニであった。

明治時代(あれ?大正時代は?)の高橋お伝・由美てる子

最初の結婚相手・林真一郎は顔が崩れてしまう病気にかかり精神も薄弱になってしまったので、それでもお伝・由美てる子は看病してたんだけど、身持ちの悪い男・蓑和田良太とデキてしまい、林真一郎をボッコボコにして二人でかけおち。しかし蓑和田は、お伝を遊郭に売り飛ばしてヒモ生活。お伝は市・林彰太郎という男と情を交わして逃げようとするが後を追ってきた蓑和田を川へ叩き込んでしまう。

林彰太郎もやっぱりお金に縁の無いヤツだったのでお伝は、身体を売った相手を殺して金を奪って逃走するが、警察に捕まってしまい死罪を言い渡される。

最後に斬首された女の人なんですね、お伝という人は。しかも、映画じゃ首切り役人が土方巽ですからね、きっとトンでもない斬られ方するんじゃないか?とか、裸にならないといけないんじゃないか?とか想像したかどうか知りませんが、お伝は大暴れ。深手を負ってるのに猛ダッシュ、と思ったけどやっぱり捕まって首をはねられてしまう。

ここまでエログロな事件をトレースしてきた吉田輝雄だが、妻の自殺の原因は「わからない」のだった。

そりゃそうだよね!

2010年08月09日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2010-08-10