ともだち |
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■公開: 1974年 ■製作:日活児童映画 ■製作:結城良煕、福田慶治 ■監督:沢田幸弘(澤田幸弘) ■脚本:勝目貴久 ■原作: ■撮影:畠中照夫 ■音楽:小杉太一郎 ■編集:鈴木晄 ■美術:徳田博 ■録音:建部日出夫 ■照明: ■主演:阿部仁志 ■寸評: ネタバレあります。 |
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1974年、日活がロマンポルノでブイブイ言わせていたとき、日活児童映画もまたブイブイしていたのである。「まんがまつりからポルノまで」が東映の宣伝文句だとしたら、日活は「児童映画からポルノまで」である。だからどうしたと言われても困るので言わないように。 全国の教育関係方面から推薦されまくりの本作品が、名画座にかかる最大の理由は「松田優作が出てるから」であるが、いやいやどうして、良く出来た、本当に良心的な映画なんですよ。 二十一世紀の今、学校の道徳の時間にみんなで鑑賞していただきたいほど。 川崎市(神奈川県)にある小学校。京浜工業地帯の真っ只中のため、大気汚染がひどくて、社宅やアパートがどんどん引っ越しているほど。 サッカー大好き少年の新太・阿部仁志は、平成の御世では絶滅したピッチピチ半ズボンの健康優良児。新太はいつも手下の二人と一緒に猛練習。運動が得意というわりには、身体が硬そうなのと、ムチムチの体型が若干気になるが、まあいい。 新太のクラスに、病弱な良子・鈴木典子がいて、新太としては陰気な良子が嫌いなため席替えで隣になっちまった新太は超ブルー。担任のチンピラ教師、じゃなかったルックスはチンピラだが真面目で誠実な戸山先生・地井武男に懇願するが聞き入れられるわけが無い。 逆に新太は「男と見込んで」という殺し文句で先生から、良子を明るい積極的な子供にしてほしいと 一時は「げー!」となった新太だったが、良子は誘うとついてくるタイプ。それに、ガッツもありそうなので、そんなにイヤな子じゃなさそうだ。 それよりなにより、新太は自分が盲腸炎になってしまったとき、はじめて病気の同級生の辛さに共感する。しかし、気管支を患っている良子には周囲の目は冷たい。病気が伝染したら困る、あるいは、急に発作を起こされたら迷惑、という理由。理不尽な世間の常識に対して、新太は必死に抵抗する。 その手段は「猛勉強して通信簿に5が2つついたら、良子を自宅へ呼ぶぞ!」作戦。新太の家は食べ物を扱うのであるから、病気の子が出入りしてたら評判が落ちる!と両親に言われたため、件のマニフェストが達成されたら、良子を自宅へ呼ぶことをOKしてほしい。そうすれば、クラスのみんなも実は良子を嫌ってるわけじゃないから、きっと彼女を自宅へ招待したり、彼女に家に遊びに行ったりできるだろうと言うのだ。 なんて素晴らしいお子さんなんでしょう!いや、本当に。子供の社会に、大人の思惑、特に見えざるなんとかを怖がる見識を持ち込むとロクなことはありません、っつうことですわな。ま、もちろん、これが伝染性の病気だったら話は別でだけども。 田舎から出てきたおじさん・下川辰平の薦めもあって、良子の両親・高原駿雄、石井富子は転地療養を決意。 山奥の赤貧生活から脱出するために川崎に来た良子の一家だったが、空気が悪くて病気を発症した良子。 親の都合で病気になったといえなくも無いが、良子は両親を恨んだりはしてない。 しかし、クラスのみんなで海を見に行く話はついに実現しなかった。 ・・・子供が死んでしまうのは、何が悲しいかと言って、少しの思い出しか残してくれず、未来の可能性もなくなってしまう、ダブルの悲しみ。 互いを「かけがいの無い人」だと思えることを「ともだち」と言うわけであるが、さて、一生のうち何人のともだちを持てるだろうか? ね、いい映画なんですよ、これ。普遍的な事実を説教するのに動物と子供を使うのは卑怯という意見もございましょうが、いいの!これは!直球な映画なんだから! 撮影のテクニックとか、演技がどうだとか、そんなの大多数の映画観てる人が、映画の良し悪し判断するのには全然関係ないことなんですよ。 知らないことを知らせてくれるとか、大事な事を気づかせてくれるとか、そういう映画をね、人は「いい映画」って言うんですから。 さて、松田優作はどこに出ていたかというと、新太の家(両親は牟田悌三と谷口香)が営むケータリングの弁当屋さんに住み込みで働いているやさしい兄ちゃん、小松さんです。この方は、手がひじょうに大きな方でして、新太の教科書を見開きで、片手の手のひらに収めちゃいますから・・・どんだけデカイのか。 で、さらに新太の姉ちゃんは、まだ少女時代の原田美枝子。 (2010年07月11日 ) 【追記】 |
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※本文中敬称略 |
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file updated : 2010-07-13