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国際秘密警察 絶体絶命


■公開: 1967年

■製作:宝塚映画、東宝

■製作:田中友幸

■監督:谷口千吉

■脚本:関沢新一

■原作:都筑道夫

■撮影:斎藤孝雄

■音楽:別宮貞雄

■編集:黒岩義民

■美術:植田寛

■録音:西川善男

■主演:三橋達也

■寸評:

ネタバレあります。


なんていうかね、最末期っていうのは何か物悲しい。それに、中丸忠雄が出てないから他のシリーズ作品と違って、見たのはたった3回目。感想文にも全然思い入れなくて申し訳ないが、まあそういう事情なんで。

宝塚映画は、宝塚ガールたちが映画界へ逃亡しないように作った会社、映画のスキルが無いし人材もいないので東宝が全面的にバックアップしてた状態。装置や仕掛けには大盤振る舞い。

国際秘密警察シリーズも5作目にして最終作となり、その馬鹿馬鹿しさはピークに達しているわけだが、それでも存外に面白かった。面白かったというのは、悪役が一ひねりしてたこと。裏切り者はどっちなのか?と見せて実は・・という娯楽性がタップリなのは脚本のなせる業かも。

やっぱねえ、中丸忠雄とか、ジェリー伊藤とか、さらには桐野洋雄、若松明、伊吹徹、ハロルド・コンウェイ(は、ともかく)とかバタ臭いとか本当に外国人とかが出てこないので、悪役のリソースが貧弱なのは否めないが、特撮系の土屋嘉男と平田昭彦(様)が頑張ったので、勘弁してあげよう。

3000倍だかに膨張し、石化するという化学物質を開発した暗殺組織が、東南アジアの某国の元首暗殺を何者かに、依頼される。暗殺団の首領・中村哲は交渉現場を監視していた国際秘密警察の存在を察知していた。

いや、あのシルエット見て!あんなローマ人みたいなワシ鼻の日本人なんて、ていうか、東宝には一人しかいないじゃん!

と、実はこれが伏線なのね。

某国、それはブッタバル国のことで、暗殺組織を内偵していた国際秘密警察の凄腕(か?)エージェント、島田・堺左千夫が自動車の中で圧死された状態で発見される。同じく秘密警察員の北見・三橋達也は、証拠物件を渡すという新聞広告で指定されたホテルへ行くと、そこには、素っ頓狂な若い娘・水野久美がいて、同じ秘密警察員のジョン・ニック・アダムスと遭遇する。

もう第二次世界大戦は遠くなったんですね・・というわけでジョンは朝鮮戦争に従軍していたとき、作戦中に片腕を自分でぶった切った部下のハヤタ・佐藤允にも再会。しかし、どうやらハヤタはヤバイ仕事をしているようだ。

お、今回は悪役ですか?佐藤允は。てもこの人の場合は一筋縄ではいきませんし。

ブッタバル国の元首・田崎潤は、労組の親玉から出世した、ポーランドのワレサ議長のような気さくなタイプ、ていうか単なる横丁のオヤジ、ドリームランド(ただし奈良の、宝塚映画ではロケの定番、ほとんどタイアップ)で大はしゃぎという、暗殺者に狙われている緊迫感まるでなし。

それは、実は・・・最後に種明かし。

元首には、母国の警察長官・平田昭彦(様)、将軍・土屋嘉男が同行、予算なかったの?画面に出て来るの二人くらいなんだけど・・・。二人もどうやら腹にイチモツある様子。

女の子から渡された証拠はニセモノ、北見とジョンは暗殺組織の三馬鹿トリオ、じゃなかったウィスパーたち・天本英世大下正司河上一夫らとの死闘っていうか暗闘っていうか、を繰り返していく。

そんなバカバカしい映画に黒一点、ハヤタはジョンとシャープな男の戦い。ただし、ワイヤーで吊られているその姿は、ムササビみたいでアレだけど。

どこぞの奈落で、トラバサミに足首かまれたジョンが、例の膨張するシェービングクリーム(発砲性のナントカ)に押しつぶされそうになり絶体絶命。

暗殺団の一員は、エキゾチックな昭和のボンドガールじゃなくてイレブンガールズのダンサー、アヤ子・真理アンヌ。北見を誘惑してまんまと催眠ガスでトランク詰めに。しかし、これまた絶体絶命の危機を救出したのは、例の女の子だった。

お色気フェロモン爆裂の真理アンヌ、ぶっとい二の腕の疱瘡の痕がこれまたカワイイ?

ドリームランドで休暇を過ごすブッタバル元首、ターバン巻きでジェットコースターではしゃぐ、元首と将軍、かなり恥ずかしい感じだが、元首の豪快な笑いがそれを解消。

パフォーマンス(芸人として、西川キヨシ横山ヤスシが登場するがほとんどどうでもいい)の最中に誘拐された元首が例の、膨張する化学兵器にやられそうになったところを間一髪で救い出した北見。暗殺団の首領とアヤ子は仲良く泡まみれになって死亡。

警察長官と将軍はグルで、ともに元首の暗殺を計画していたが、将軍が長官を毒殺。一人で高笑いかと思われた将軍だったが、長官が死に際に仕掛けた時限爆弾で爆死する。

残されたハヤタとジョンが、荒野で対決し、ハヤタが切腹(はあ?)して決着がつく。実は、あの女の子はブッタバル元首の側近にして、敏腕のエージェントだった。都合がいいにもほどがあるけど、まあいいか。

そりゃまあ、安心してたわけだよね、元首もさ。北見よりも、ジョンよりも、はるかにこっちのほうが信頼できそうだし、敵の動きも味方の動きも先手打って監視してたし。悪の組織の名前が「ZZZ」なんだかなあ。最初から勝負捨ててる感じだ。

暑かったんだね、撮影当時。ニック・アダムスなんてさ上半身はだけちゃって(いや、そういう設定なんだけど)胸毛ばかすか見せるし、下向くとアゴから汗がポタポタ。三橋達也も背広着てるから、余計にタイヘン、こめかみから汗が滝のように流れてる。汗、拭いてあげなさいよ!

ニック・アダムスの吹替えが矢島正明だったせいか、全体の構成が「ナポレオン・ソロ」風でありました。どうせなら、三橋達也を矢島正明、ニックを野沢那智がやればよかったね。目をつぶったらまるっきり、だったかも。

2010年06月27日

【追記】

※本文中敬称略


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file updated : 2010-06-27