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六人の女を殺した男


■公開:1965年

■製作:大映

■製作:

■監督:島耕二

■脚本:小国英雄

■原作:

■撮影:小原譲治

■音楽:大森盛太郎

■編集:鈴木東陽

■美術:加藤雅俊

■録音:飛田喜美雄

■照明:木村辰五郎

■主演:フランキー堺

■寸評:

ネタバレあります。


フランキー堺、二十代で爆発的に売れたジャズドラマーで、コメディアンで、俳優。お調子者でテンポのいいギャグが身上、かつ、市井の庶民が見せる喜怒哀楽も、本芸の1つ。「モスラ」と「世界大戦争」で観客の涙をちょちょ切れ(死語)させた、特撮ヲタの業界では現人神の一人。

その喜劇役者が陰湿な殺人鬼に変容していくブラックユーモア。

現代絵画の売れっ子作家、阿部健・フランキー堺は、浪費家の妻・万里昌代と、自身の浮気問題で大喧嘩。その最中、キッチンで転倒し頭部を強打した妻が死んでしまいます。

これは正真正銘の事故。万里昌代のヒステリーはアスリート系の瞬発力。

健は、夫婦喧嘩の原因となった浮気相手のバーのマダム・藤村志保と再婚。しかし彼女は最初からスピード離婚が目的だったので入籍直後に離婚したいと言い出します。貧乏臭い家財道具をほっぽらかして高笑いのマダムでしたが、イキオイ良く閉めたドアの衝撃で、老朽化していた邸宅のシャンデリアが偶然落下してきて彼女は圧死してしまいます。

これもちゃんとした事故死。

いつもは清楚な藤村志保が悪企み全開モードの結果、相当に間抜けな死にっぷりというのが意外でツボでした。女優さんが目を見開いて死んじゃうのって、女優生命的にいかがなものか?

ピアニストの友人、哲也・船越英二のすすめで田舎に静養に来ていた健は、地元の純朴な娘、千代・明星雅子と知り合いそのまま意気投合して結婚。都会に出てきた千代はゼイタクな暮らしに慣れてしまい、元々画才があったため健の贋作を描いて画商を騙して小遣い稼ぎ。健は絶望し、千代と心中しようとしますが、悪気の無い千代を殺すのが可愛そうになり一人で自殺しようとします。

ドライブの最中に、本当に事故が起こってしまい千代だけが死んでしまいます。

一応、こちらも事故死。

ていうかさ、ようするにコイツ、健は女好きで、いや好きなだけならいいんだけど、セックス依存症だってことですね。

負傷した健が入院していた病院の看護婦、芳江・春川ますみが気に入って結婚。芳江は病院から催淫剤や精力剤をちょろまかして、健に過剰摂取させ、心臓が弱い健を腹上死させて保険金をせしめようとします。この計画に気づいた健が、逆に芳江に毒を飲ませて殺しますが、ついうっかり健も同じ薬を飲んでしまったので、警察は無理心中と断定。

こちらは、やや事故死、やや殺人。

春川ますみ、日本のデブタレントの草分けですが、女の武器を全開にしたヴァイタリティー溢れる女を演じさせてワタシが不快感を抱かない、唯一の女優、きれいごとを言わず身体を張って生きてる女、向上心の欠片も無い感じがある意味、尊敬。

新進の服飾デザイナー、ペギー・久保菜穂子は健のアイデアを商品化してヒットしますが、マスコミに対しては健が自分のデザインを盗作したと訴えます。美貌のペギーを横浜ドリームランドに誘い出した健は、観覧車の上から彼女を突き落とします。

こちらは、正真正銘の殺人。

久保菜穂子、体当たりのアクションに挑戦!だって、ドアの下に地べた見えてたし、得意の絶頂で悲劇的なまたは喜劇的な死を迎えるところに本領発揮、誰がみても高ビーだったっつうことですか。

ですが、確たる証拠がないということで健は釈放されます。そしてついに、六番目の女が登場、というか最初からずーっと出てました。

彼女は健の家に仕えていた家政婦の兼子・岸田今日子。彼女は何もかも知っていて、ペギーの殺人を裏付ける決定的な証拠で健を脅迫します。 当然ですが、彼女も健に抱かれた女、しかし健、一度は自分でモノにした相手をそのまま家政婦として雇い続けるってところが鬼畜じゃないのか?

だから、オマエなんて誰かに殺されちゃってもよかったんじゃないか?

日陰者の女がやっと日のあたる場所に出られると思った矢先、かつては女好きの小心者だった健はすでに冷酷なシリアルキラーとなっていたことに兼子は気がつきませんでした。健は外出するときにそっとガスの元栓を開に。地味な兼子が派手な被害者達に憧れて、慣れない化粧をしてヘンテコメイク、ゴージャスなバスタイムの最中にガス中毒死、そして笑える死に顔アップ、怪優(褒め言葉です)岸田今日子さんの面目躍如(かい?)。

最後の殺人を終えた健は、哲也のコンサートの会場から警察に連行されるのでありました。 僕みたいなことには皆さん、ならないと思いますけどね、とフランキー堺の童顔がスクリーンから語りかけてきます。笑わない喜劇俳優の黒いマジ顔、これぞ最高のブラックユーモア。

刑事に囲まれて、会場の階段を上がって行くフランキーさんに「わたしは貝になりたい」を思い出してしまいました。 まさか、セルフパロティってことは?(ないか、ないよな)

ところで哲也ったら、船越英二さんのくせに何もせず?兼子に実は協力してたとか、そういうのナシですか?あんた、何のために出てきたの?と、そこまでは言いませんけど、勝手に騙されてしまいました。

音楽が大森盛太郎さんです、メロディーラインが「37階の男」(特にバーのシーンでマダム口説くところとかでかかってた楽曲)だったため、頭の中で別作品を上映してしまいました(爆)

2010年05月05日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2010-05-09