マライの虎 |
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■公開:1943年 ■製作:大映(東京) ■製作: ■監督:古賀聖人 ■脚本:木村桂三 ■原作: ■撮影:西村四郎 ■音楽:鈴木哲夫 ■編集:辻井正則 ■美術:進藤誠吾 ■録音:岩間久政 ■照明:三橋勇 ■主演:中田弘二 ■寸評: ネタバレあります。 |
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戦意高揚映画の目的は2つ、1つは戦争への協力を奨励すること、もう1つは戦争が正当なものであることを説明すること。本作品はほぼ後者です。 太平洋戦争中、本当に現地ロケ、マレー(英国領、当時)にあった日本人街で床屋さんを営む一家がありました。お母さん・浦辺粂子、長女・国分みさを、次女はまだ子供です。長男はハンサムで、まだ幼い妹をとても可愛がっているナイスガイ、豊クン・中田弘二です。この家にはマレー人の使用人、サリー・村田宏寿がいますが、忠実な彼とこの一家の関係は良好です。 子供と遊んでいるときの二枚目の男子の顔は、一瞬にして婦女子の腰を蕩けさせる最終兵器です。 ほとんどすべてのマレー人は英国人にこき使われており、中国人は日本人の技術力を高く評価していました。植民地で日本人の株が上がることを快く思わない英国人たちと、共産華僑は、なんとか日本人の評判を落とそうと暗躍します。サングラスで不気味な、共産党のスパイ、陳文慶・井上敏正とその一味なんてまるでゲシュタポかショッカーのような印象です。 陳はマレー人を扇動して、日本人街を襲撃させます。豊クンの一家はサリーの機転で早々に避難しますが、外出していた豊クンを待っていた妹は、陳に射殺されてしまいます。 子供とか小動物とか「無辜の命」を蹂躙する絵柄というのは、人間にとって憎悪を掻き立てる最も効果的な手法です。 駆けつけた豊クンの腕の中で、幼い妹は涙を流して死んでしまうのでした。しかも陳たちは、妹を殺したのはマレー人の暴徒だという噂を流しましたが、サリーが現場を見ていたのでヘンな誤解をせずにすみました。豊クンの怒りはおさまりません、当たり前です。豊クンが日本刀を振りかざして敵討ちをしようとするのを諌めたのは、日本軍軍属の安田さん・南部章三でした。彼はきちんと警察に届け出ようと豊クンを諭しました。 警察をしているのは、占領者である英国人ですが、なぜか豊クンの訴えをマトモに取り上げてくれません。警察署長なんてゴルフのパター練習なんかしやがって、全然無視です。カチンと来た豊クンが裏口から忍び込むと、なんと!陳を操っていたのは警察署長だったのです!暴動は警察のマッチポンプで、現地人と日本人を争わせて漁夫の利を得ようという、英国人の鬼畜な作戦なのでした。 ぶち切れた豊クンは、警察署長に侮辱された怒りも上乗せされて、署長室に突入すると高級そうなインテリアの椅子で署長を滅多打ち、ミンチになるまで粉々にしてしまうのでした。 ちょっと・・・豊クン、やりすぎなのでは?署長さんにも家族いるでしょうからねえ。 犯罪者となった豊クンですが、安田さんがまたもやフォロー。個人的な復讐なんかするより、マレー人を英国人の圧制から解放してあげようじゃないかとアドバイスします。日本武士道を愛する豊クンは、弱き者を助けて強き者をくじくという、壮大な復讐プランに賛同します。彼は身分を隠し、マレー人たちとともに、ブルジョワ英国人の商人や農場主の家を襲い、金品を奪っては貧しい人々に配布する義賊団を結成、尊敬を込めて「ハリマオ=虎」と呼ばれるのでした。 妹が死んでから十年、お母さんと上の妹は帰国することになりました。お尋ね者の豊クンは、そっとお金を渡そうとしますが「こんなバッチイお金は受け取れません!泥棒になったアノ子はもう死にました!」とまで言われて、ガックシです。やってることは、結果的には立派でも、その手段は単なる泥棒ですから、お母さんとしては、情においては息子のことを愛していても、やっぱ教育上正しくないことはNGです。 さすがお母さんです、男親は結果重視ですが、女親はプロセス重視ですから。 豊クンはハリマオの名前を捨てて、チューマと名乗り実業家へ転身しますが、相変わらず裏家業は継続。英国人の警察に雇われていたマレー人の刑事、バテバウ・上田吉二郎は英国人の上司におだてられて栄達を夢見ますが、それはあくまでも口先だけの約束でした。英国人は、ハリマオを取り逃がしたバテバウを国外追放しようとします。「マレー人なんて所詮は使い捨てかよ!」英国人を見限ったバテバウは、ハリマオこと、チューマを頼ります。 共産華僑が、恩人の安田さんを狙っています。安田さんは日本軍のために諜報活動をしていたからでした。英国人が植民地でしている人権侵害を告発するメモを奪おうと、陳が襲撃してきて安田さんは瀕死の重傷。豊クンはメモを預かって無事、日本軍へ届けました。 豊クンはついに陳を追いつめて、射殺します。豊クンは、天国の妹に仇を討ったと報告するのでした。 妹が殺されて以降は、夜叉のような顔をしていた豊クン、ここでは安堵の笑顔で、かなり素敵。 英国軍が日本軍の反転攻勢を阻止するためにダムの爆破を計画しています。マレー人の迷惑なんて関係ないということでしょうが、正義の日本軍はそれはダメだということで、爆破阻止の決死隊を結成します。連隊を仕切る福原少佐・押本映治は、神谷軍曹・植村謙二郎の推薦で、民間人である豊クンに決死隊の指揮を命じます。彼の類稀な正義感と胆力、そして土地カンが採用の理由です。 豊クンはいよいよ英国人に復讐し、マレー人の独立を助けられると張り切ります。バテバウも許してあげて仲間にしました。豊クン、ささいな失敗をあげつらう英国人とは違って度量の広いところを見せつけてくれます。決死隊のマレー人の中でもハッサン・小林桂樹、そしてかつての使用人サリーは頼りがいのあるタフガイです。ジャングルを切り進み、川を下って決死隊はダムに到着します。 ダムは大勢の英国軍に守られていました。どいつもこいつも間抜け面ですが銃器は強力です。決死隊は、一人、また一人と英国軍の銃弾に倒れますが、ついに爆破装置のところまで豊クンのみ、たどり着きました。体中に銃弾を浴びて、とっくに死んでるはずの豊クンですが、気力で導火線を引きちぎります。もう、いくらなんでも死んでるはずなのに、生き残った仲間が駆けつけると「もうすぐ日本のカミカゼがマレー人を救う!」とか「マレー人は日本軍に協力すれば幸せになれる!」とかタップリと大演説をしてから倒れます。 そんなところで体力使っちゃうから、でしょうか?日本軍の手当ての甲斐なく豊クンは死にますが、名誉の戦死として葬られるのでした。 そして日本は、馬鹿の集まりである国連を脱退し、素敵な指導者に率いられたナチス・ドイツと手を組んで英国軍を蹴散らすことでありましょう! もう極端ですから、英国人なんて人間じゃないくらいのイキオイです。 情報が少なく、統制された環境下で、こんな映画を見せられたらついつい「英国と中国の共産党ってヒドいんじゃね?」と素直に思えるかもしれません。英国人なんてトロマ映画に出てくる巨大ミミズに食われてしまえばいいんだ!手法がベタなほど、わかりやすいということに気がつかされるわけですが、今、よく見えていると思い込んでいるマスコミのニュースや、報道番組で流される映像や字幕にもこういうサブリミナルな仕掛けがあると、覚悟したほうがよいということです。 主演の中田弘二さんは、東映のプログラムピクチュアや「キャプテンウルトラ」だった中田博久さんのお父さんだそうです。二枚目の血統ですね。 (2010年05月02日 ) 【追記】 |
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※本文中敬称略 |
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file updated : 2010-05-03