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板尾創路の脱獄王


■公開:2010年

■製作:よしもとクリエイティブ・エージェンシー、角川映画

■監督:板尾創路

■脚本:増本庄一郎、板尾創路、山口雄大

■撮影:岡雅一

■音楽:めいなCo.

■編集:

■美術:

■照明:

■録音:

■主演:板尾創路

■寸評:

ネタバレあります。


タイトルから「脱獄広島殺人囚」など想像してしまいますが(しませんか?)違います。どう違うかというと、裸とセックスが出てこないからです。主人公の胸に刺青があるからといって「パピヨン」とも違います。どう違うかというと、主人公は濡れ衣とかで刑期が延びているわけではないからです。

さて、平成の脱獄王はもっとピュア(または単純)でした。

映画の時代は昭和初期。

チンケな罪で服役している鈴木・板尾創路は脱走の常習犯です。始めは拘置所、そして今は刑務所への階級はグレードアップしています。しかし、鈴木は逃げてもすぐに捕まってしまいます。人目につかない場所を選んで逃げるのが正しい脱走だと思われますが、鈴木は人目につくような線路沿いでなぜか逮捕されるのです。

信州の刑務所に収監された鈴木。監守長の金村・國村隼は鈴木に興味を持ちます。脱獄の目的も、動機も、鈴木は何も語りません。所長・阿藤快は捕まえた鈴木を懲独房へ入れます。作業の途中、鈴木は脱獄のためのアイテムをゲットしますが、いかなる身体検査でもソレは発見されません。そして鈴木は手鎖を外して脱獄します。

次第にエスカレートしていく脱獄のテクニック、ほとんどギャグのレベルになっている驚異的な身体能力、鈴木は無表情のまま獣道をダッシュ、とはいうものの板尾さん、あまり脚が早いとは・・・身のこなしが軽いとは・・・ま、いいか。金村、飯塚・木下ほうか、臼井・宮迫博之らが後を追います。そしてまたも、鈴木は線路沿いで捕まるのでした。

鈴木は北陸の刑務所に送られ、懲罰房へ入れられます。そこは、刑務所というよりは捕虜収容所のようなところで、こんなところで更正できるとはとうてい思えないところです。鈴木はボコられ、鎖で繋がれ、傷口からは蛆虫がわくような劣悪な環境でも、その目はキラキラ(ギラギラ、じゃないところがポイント)しています。

中村雅俊の「ふれあい」はいい曲でありますなあ。ま、こんなギャグっぽい使われ方というのは想定外かもわかりませんが。

日本は戦争に向かって突き進んでいました。金村は司法省の役人に出世します。上司・石坂浩二はこれからは戦争に反対する人たちを刑務所へ送り込むと宣言します。暗澹たる気持ちになる金村でありました。

おっと、へーちゃん(石坂浩二さんの本名は武藤兵吉)腹回りの脂肪と同時に、押し出しとアクの強さもゲットですかね。

金村は北陸の刑務所を視察に訪れます。所長・オール巨人はにこやかにエスコートしてくれますが、金村は懲罰房のことが気になっていました。雷が刑務所に落ちた日、鈴木は脱走し、またもや捕まるのでした。そしてついに、彼は絶対脱獄不可能と言われる絶海の孤島、監獄島の刑務所へ送られることになりました。所長・ぼんちおさむ以下、職員の橋本・津田寛治をはじめとして、ここの職員はみんなイカれています。

江戸時代の佐渡島の金山みたいな作業環境や、「羊たちの沈黙」をパロった拘禁服、はたまた過酷な環境で痴呆状態になった囚人達が老人ホームのような生活をしており、そのわりに軽微が手薄なのは、島の周囲が断崖絶壁、周辺の海には人食いする鱶(ふか)がうようよしているため、天然の要塞と化しているのでした。

金村は鈴木のことが気になり、監獄島へと向かいました。

鈴木がなぜ脱獄を繰り返すのか、映画の後半でネタバラシがあるので、後はどうやってそこまでたどり着くか?という興味、そして、どんなオチがつくのか?という期待を抱くのですが、残念ながらネタバラシと同時にオチがほとんど読めてしまいました。

国村隼と津田寛治は芝居でしたが、他の人はコントでした。コント観に来たつもりなら大丈夫だったでしょうが、これ、映画なんで、映画のつもりで来ていた観客にはなんとも居心地悪かったのが残念でした。

これっぽっちの動機で映画にしてしまうからにはアイデアの奇抜さだけで持たせるしかなかったわけですが、それよりも主人公のアブなさの根拠がいかにもちっちゃい、ていうか、ちゃっちい、ていうか幼稚。情熱というより自己愛の肥大による狂気という流れはいかにも現代(いま)っぽいなあと、ちょっと背筋が寒くなっちゃいました。

2010年02月28日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2010-02-28