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スター毒殺事件


■公開:1958年

■製作:新東宝

■製作:大蔵貢

■監督:赤坂長義

■脚本:蓮池義雄

■原案:葭原幸造

■撮影:吉田重業

■音楽:渡辺宙明

■編集:

■美術:鳥居塚誠一

■照明:石森浩

■録音:竹口一雄

■主演:天知茂

■寸評:万里昌代さんの初主演作

ネタバレあります。


ストーリィが映画会社の話なので当然ですが新東宝の撮影所が出てきまして、カメオ出演する俳優さん多数、さながら新東宝映画俳優図鑑のごとしでありました。

第七映画の中堅スタア、上原城二・天知茂は恩師のお嬢さんである万里ちゃん、じゃなかった真理ちゃん・万里昌代を会社の社長・高田稔に紹介し採用してもらいます。真理ちゃん、最初は嫌がってたけど実はまんざらでも無い様子です。デビュー作の木戸監督・中村彰のところへ挨拶に行くと、第七映画の二枚目スタア、須賀浩・江見渉(江見俊太郎)がいました。

万里昌代さんとママゴトのようなデートをする天知茂さんのマヌケけな感じが新鮮です。

須賀は女ったらし全開で真理ちゃんを「ソフィアローレンそっくりだ」とか言っていい気にさせます。なんとなく嫌な予感の城二。城二と仲良しの助監督、黒木・沼田曜一もなんとなく真理ちゃんにドキドキしている感じでした。

第七映画は半裸の女子がハミケツで踊りまくるような扇情的な映画を製作している会社です。普通の女子ならドン引きですが、真理ちゃんは先輩女優があられもない姿でダンスするのを食い入るように見つめるのでした。「いつかワタシもこのステージに上がってみせる!」そんな決意を固めてしまう真理ちゃんでした。真理ちゃん、その方向性は間違っていると言いたいところです。

昭和のグラマーはかなり健康的な下半身ですが、そんな中でも小柄ではありますが万里昌代さんのスタイルはバツグンに良いです。で、本作品は万里昌代さんの初主演作でもあります。スクリーンの外と内とが地続きというところでしょうか。

須賀は撮影中、撮影後、あらゆるチャンスを狙って真理ちゃんに猛アタック。須賀は女優を次々と喰っていたので、現在の恋人、愛住礼子・城実穂なんて「古タタミ」くらいにしか思ってません。ショックの礼子は仕事面でもスランプ中です。そんなドロドロした映画界に嫌気がさすかと思った真理ちゃんですが、礼子を蹴落として(結果的に)主役をゲット、城二より売れていた須賀とのコンビでバリバリ売り出してしまいます。

城二は掌中の玉のように大切にしていた真理ちゃんが羽ばたいたのは嬉しかったのですが、すでに自分のことが眼中に無いと分かると、可愛さ余って憎さ百倍、だけど未練タップリという女々しいマインドがどんどん膨らんでいくのでした。

そんな丈二の心のスキに滑り込んだのはジャンボなお色気を放つ、信濃あけみ・三原葉子でした。しかし城二としては真理ちゃんの動向がいちいち気になります。城二が持ち込んだ企画をあっさりと横取りしてしまう須賀。しかも、須賀より前に城二から相談されていた大物プロデューサー・江川宇禮雄は須賀と真理ちゃんのコンビで製作を決定してしまうのでした。

失意の城二は仕事もスランプ。須賀と真理ちゃんは公私共にますます大接近で大活躍です。

須賀は仕事の打合せだと言って自分の住むアパートに真理ちゃんを引っ張り込みます、っていうか真理ちゃん、その後の展開を百も承知で同行します。しかも、城二には座談会があるからと嘘ついています。すでにジェラシっ子になっていた城二は真理ちゃんのことを思って、ていうか動かぬ証拠をつかもうとしたのか座談会を主催した雑誌社の記者・林寛に確認の電話をしてしまい、直感的に須賀のアパートへ車を走らせて、二人がベッドインしているところをついに見てしまいます。

須賀に捨てられた礼子は妊娠していました。撮影所の隅っこでゲロ吐いていた礼子にハンカチを貸してあげたのは黒木でした。小道具の倉庫に怪しい人影、翌日の撮影に使用するウイスキーの小瓶をそっとすり替えます。黒木は立ち去るその後姿に見覚えがありました。

須賀がその小瓶に口をつけて真理ちゃんに口移しをしたところ突然苦しみ出します。ちょっぴり飲んじゃった真理ちゃんも七転八倒。いっぱい飲んだ須賀は死亡、真理ちゃんは一命を取り留めます。現場に落ちていたハンカチには須賀に捨てられた礼子のイニシアル、おまけに彼女は自殺してしまいます。ライバルと重要参考人が両方ともいなくなって一安心の城二でした。

しかし真理ちゃんは薄々気がついていました。ジャンボあけみといい感じになったかのように装っていますが城二が自分に未練タラタラ、その挙句に須賀を殺したに違いないと。

黒木はもっと確信していました。ゲロ吐いた礼子はハンカチをもってませんでした。誰かが彼女のハンカチを盗んで犯人にしようとした、ってそれは城二に決まっていると。黒木は証拠の小瓶を城二に突きつけて自首を促しますが、城二は真理ちゃんとのバラ色の未来がNGになるとイヤなので黒木をビルの屋上へ呼び出して転落死させてしまいます。

坂道を転げ落ちていく役どころというのが天知茂さんには似合います。一方、最後まで徹底的にいいヤツだった沼田曜一さんはひじょうに珍しいです。きっとまた天知さんを唆して破滅させるに違いないと思っていたら、天知さんにあっさりと殺されてしまいました。

すでに真理ちゃんは城二と無邪気な追いかけっこをしてくれる気は全くありません、当たり前ですが。逆上した城二は引きつった顔で逃げようとする真理を追いかけて、とうとう絞殺してしまいます。城二は真理の死体を運んで逃げようとしますが、所詮は思いつきでやっちまった連続殺人ですから警察はとっくに彼をマークしていました。

警官に追いつめられる天知茂さん、やっといつもの(いつもって?)天知茂です。

映画スタアとしてのスポットライトからは永遠に見放された彼は、警察のサーチライトに照らされて放心状態のまま逮捕されるのでありました。

戦後の時代劇では押し出しの立派な役どころが多い坂東好太郎がポマードかっちりのオールバックでスーツ着てるとヘンな感じですが、タッパあるし造作が二枚目なのでなかなかカッコよかったです。撮影所を歩く真理ちゃんに声をかける先輩俳優として中山昭二、スタッフっぽい感じで雑談に興じる古川緑波若杉英二、いずれもカメオ出演です。ほかに女優さんが出てくるんですが、興味ないので誰だか不明でした。

万里昌代さんのアップがぐぐっと、お色気ムンムンな感じでその筋の趣味がある男子の方々の下半身はイチコロだと思われます。

しかし本作品は天知茂ファンにとってもステキです。ラブコメ→メロドラマ→アクション、三つの味が同時に楽しめる美味しい作品でありました。

2010年01月01日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2010-01-01