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戦国群盗伝(再見)


■公開:1959年

■製作:東宝

■製作:藤本真澄

■監督:杉江敏男

■脚本:山中貞雄、黒澤明

■原作:三好十郎

■撮影:鈴木斌

■音楽:団伊玖麿

■美術:北猛夫

■照明:西川鶴三

■録音:保坂有明

■主演:鶴田浩二

■寸評:

ネタバレあります。


再見です。

天城山一帯を縄張りにしている野武士の一団がいて、頭領は治部・千秋実。手下は梵天・田島義文、抗兵衛・小杉義男、猿丸・山本廉、藤太・田武謙三、岩松・堺左千夫、その他大勢のゆかいな仲間たち。拾った鉄砲を猿丸がぶっ放したため、その音に驚いた藤太の馬が逃げ出します。人の足で馬に追いつくわけがありませんが、馬は貴重品ですので必死です。ちょうど、馬が逃げた先に一人の侍がいたので藤太は捕まえてくれと頼みます。

その侍、甲斐六郎・三船敏郎は馬を捕まえてあげますがそのまま乗り逃げします。しかも、その馬を百姓・瀬良明に売りつけようとしますが、その百姓が馬の元の持ち主だったため、六郎は馬泥棒呼ばわりをされてほうほうの体で逃げ出すのでした。

いつもはヒョロヒョロしている瀬良明に怒鳴りつけられて逃げ出す三船敏郎、無抵抗のうえに「バカヤロウ!」の捨て台詞で笑わせてくれます。

度胸も腕っ節も乗馬も巧みな六郎を治部は仲間に引き入れ、御用金強奪計画に参加させます。

当地を治めていた土岐左街門尉・志村喬の二人の息子、兄の太郎・鶴田浩二、弟の次郎・平田昭彦(様)はともにハンサムでしたが、何をやっても兄のほうが優秀だったので次郎は面白くありません。男のジェラシーは始末の悪いものですが、そこにつけ込んだのがお家乗っ取りを企む家老の山名兵衛・河津清三郎でした。

時代劇に不向きな俳優の多い東宝において、本作品の河津清三郎の重厚感は圧倒的です。頭良さそうで、強そうです。

関東管領に収める上納金を輸送中に、太郎は六郎たち野武士に襲撃されます。御用金を乗せた馬を追った太郎は狙撃されて谷底へ転落します。六郎はまんまと野武士達から御用金を横取りして行方をくらましてしまうのでした。襲撃の事実をつげに来た共侍・中丸忠雄は口封じのために山名に殺されます。太郎は御用金横領の犯人にされてしまうのでした。

三船敏郎と鶴田浩二。性質的には水と油。感の役者と型の役者。

同じスタアシステムであっても東映のようなカースト制度(または男子校の運動部並の上下関係)が顕著でない東宝では珍しいガチンコ対決。この二人が共演するとどちらかというと三船のほうが譲るような場面が多かったと思います。鶴田さんてお山の大将だから分かりやすいしノセやすい、三船さんのほうが神経質で難しい、役柄とは実際真逆のお二人です。

太郎と意気投合した六郎は野武士たちを説得しますが、金を横取りされているので最初は断られてしまいます、当たり前です。そこで六郎は彼らの義侠心を刺激します。卑劣な罠にハマった太郎のために立ち上がろうと言い出すと、彼らは日ごろ日陰者扱いですから、ここ一番の男気魂が揺さぶられるとイチコロです。

牢屋にぶちこまれた太郎を助けるために、役人たちを蹴散らかして救出する野武士達。彼らは管領からも追われる身になります。

太郎を助けた、田舎娘の田鶴・司葉子は彼に一目ぼれしますが、小雪姫の存在を知ってガックリしてしまいます。野武士のリーダーになった太郎は、中学生なみの規律しかない彼らを持ち前のインテリジェンスで統制します。弱いものいじめはしない、女を強姦しない、金持ちから奪った金品は貧乏人に無償配布。彼らはいつのまにか「天城の赤鬼」という義賊になってしまいます。

しょせんは男子校の運動部のような知能程度の野武士たち、やがて治部と梵天が性欲を抑えきれなくなり、こともあろうに田鶴に目をつけます。田鶴の貞操危機一髪!アワヤというところで太郎が助けますが、治部は太郎の報復を恐れて役人にアジトをチンコロしてしまうのでした。治部は六郎に発見され、しらばっくれますが鉄砲で殺されてしまいます。

太郎を罠にはめたことを薄々気づいた土岐左街門尉。次郎はこともあろうに父親を崖から突き落としてしまいます。邪魔者がいなくなった山名はついに本性をあらわしますが、太郎が死んだと聞かされた小雪姫が自害してしまうと、次郎は発狂。なんのシガラミもなくなった太郎は山名を倒して、六郎、生き残った野武士達と何処へか去っていくのでした。

本作品はリメイク版でオリジナルでは甲斐六郎が主役、本作品は太郎が主役です。オリジナルは前進座系ですので、品格がありますが、本作品のほうはとっつきやすくて気さくな方向です。

珍しかったのは男言葉の司葉子です。ぱっと見誰だか瞬間的には分かりません、それくらい珍しいです、高飛車でない司葉子というのは。キレイキレイの小雪姫は上原美佐ですが、どうもあの、ベッチャーとした台詞回しに馴染めません、馴染まなくてもいいですが。本作品ではほとんど喋りませんので、いい感じでした。

脚本に山中貞雄と黒澤明。武士道の道徳とシェイクスピアのドロドロが合体した感じ。ある意味、物凄くモダンな時代劇でした。

馬もたくさん出てくるので馬好きには必見です。運動神経だけで乗りこなす三船敏郎は上手いというより凄いです。たぶんあんまり得意じゃない鶴田浩二はキャンターが2ポイント、いささか殿様らしくないです。端役の中丸忠雄ですが、共侍のくせに主人より堂々と乗ってるのは如何なものか?という気もしましたが、ファン的には二重丸。

2009年09月24日

【追記】

※本文中敬称略


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file updated : 2009-09-27