はりきり社長 |
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■公開:1956年 ■製作:東宝 ■製作:藤本真澄 ■監督:渡辺邦男 ■脚本:笠原良三 ■原作: ■撮影:渡辺孝 ■音楽:松井八郎 ■美術:北川恵笥 ■照明:西川鶴三 ■録音:宮崎正信 ■編集:庵原周一 ■主演:森繁久彌 ■寸評: ネタバレあります。 |
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社長シリーズのポイント:社長は恐妻家 自転車会社の社長たるもの、出入りのクリーニング屋(当時:洗濯屋)さんが使用する車種にも敏感です。自社製品を使用している新聞屋の売り込みはホイホイとってあげたりします。 大手自転車メーカーの社長、大神田・森繁久弥は元歌手の妻、千枝子・久慈あさみの趣味のカメラに付き合って、朝っぱらから肉体美(自称)を披露しています。朝食は半熟タマゴ4個、これもすべては愛する妻を愛するためと、仕事のためです。女中さんは訛りがキツイ、とき子・塩沢登代路(後・塩沢とき)で、実は彼女も社長に惚れています。 社長シリーズのポイント:社長はモテる 彼の秘書は公私共にパシリをしている須山・小林桂樹。どうやら社長の裏事情を握っているらしく、社長も怒鳴るけれども、小遣い握らせたりします。人は良さそうですが、須山は案外とセコイ奴です。 社長は売り上げ強化を鼓舞するために朝から大演説。この会社の幹部社員は、坊屋三郎、森川信、三木のり平。日本を代表する喜劇人のごときこの面子では甚だ心もとないですけど、ま、社長が社長ですからちょうど良いと言えるかも。マトモだと思えるのは小杉義男くらいなもんです。 社長シリーズのポイント:営業部長はお調子者 ただし、のり平部長、後年の「ぱーっと行きましょう!」はまだ未完成です。 社長夫人の紹介で、英語が堪能な若い女子、春江・司葉子がやって来ます。秘書の須山の趣味もカメラなので早速、パチリ。カメラが流行ってたんですね、そんでもって一種のナンパの道具になってるし、男子は撮る側、女子は撮られる側という鉄板の構図。実際のところ、昔のカメラですから当然マニュアルなので、露出もなにもかも、平成の御世の写メみたいにお手軽ではなく、カメラが女子禁制の精密機器だったころの話です。 社長シリーズのポイント:秘書は婚活中 あ、今でもカメラは精密機器ですけどね。完全マニュアル操作が、いい感じのオートになったということですが。あと、驚異的な小型化とか、デジタル化とか。もう写真って化学とは縁が遠くなっちまっているわけで、現像もパソコンでチャッチャッですからねえ、技術の進歩って情緒無いなあと思います。 須山は自社ビルの地下の写真店の看板娘、正子・峯京子とも仲良しです。補正無しのお安い「棒焼き」っちゅうのも懐かしい言葉になりましたね、「ベタ焼き」とかって今の若いモンは知らないかもしれませんね。暗室の酢っぱい匂いが懐かしいです、昭和の子は。 接待のために大手メーカーの社長、仙石・藤原釜足と一緒に料亭に来た社長と須山。偶然にも女将・一の宮あつ子の娘が春江でした。春江は仙石の息子、隆男・平田昭彦(様)と恋人同士のようでした。彼の趣味も同じくカメラでしたが、高級機種を使用しており、おまけに須山とは比較にならないくらいのハンサムだったので、ガックリの須山でした。 社長はキャンギャルのオーディションを開催します。ミスに選ばれたのはピチピチの桃子・中田康子。彼女も早速、社長をパパと呼んじゃったりしますので、同社の女子社員・北川町子の冷たい視線もものかはです。おまけに、そのオーディションはセクハラ祭りのごとく、社長のエッチな行為は須山秘書の写真によって、千枝子夫人の逆鱗に触れます。千枝子夫人とは喧嘩状態になりますが、夫人の歌に出会った頃の情熱を思い出した二人はあっさり仲直り。 社長シリーズのポイント:社長は浮気性 通訳として雇われた春江は、アメリカのバイヤー、ジョージ・ジョージ・ルイカーとの商談に同席します。ジョージは商談なんてそっちのけ早速、傍にいた桃子を口説きにかかります。実はこのジョージ、日本語ペラペラだったりします。 社長シリーズのポイント:出てくる外国人は女を口説くときだけ日本語堪能 ジョージとの商談が上手く行かない社長は困り果て、須山の婚活も絶不調。しかし社長は自社工場の従業員のために豪華なローマ風呂を作ってあげたりするのでした。エッチで恐妻家でガミガミ怒鳴る社長ではありますが、キチンと社長業もやっています。そこへ春江がジョージとの商談が上手く行き、大量発注を受けたと報告に来ます。 社長、大喜びで神主・沢村いき雄のみならず、春江まで風呂にぶち込んでしまうのでした。 地鎮祭のシーンで、のり平と森繁がかけ声をかけあって、まるで餅つきのようなコントをします。ほとんどの幹部社員の方々はこういう場面に慣れているので、アドリブかましても各々小芝居で対応できていましたが、小杉義男だけは我慢できずに下向いて笑ってました。 須山は春江に猛アタック。じれったい須山にイラっと来ていた春江でしたが、なんと、本社近傍の畏れ多い、皇居のお堀端の草むらで、しかも真昼間に抱き合う、っていうかほとんど須山の強姦まがいの押しの一手にクラっときた春江はあっさりと結婚を承諾します。 社長シリーズのポイント:金も無いのに秘書もモテモテ 直接交渉のために羽田を発つ社長を、夫人も春江も重役もみな笑顔で見送るのでした。 いくら東宝じゃあ先輩だからって、平田昭彦(様)をフルほどの価値が小林桂樹にあるとは思えませんが(なんかヒドイこと言ってますが)、「妻の心」(監督:成瀬巳喜男)の事例に鑑みると、相手が三船敏郎でも小林桂樹には勝ちポイントがあるのです。 それは安心感です。 超ハンサムだと浮気が心配だけど、その必要は無さそう。恋人にするならハイリスク、亭主にするならローリスク。 婚活中の婦女子の皆様は、手法とリスクを社長シリーズから学んでみませんか? 出演者の芸を重んじるマンネリズムが楽しい社長シリーズの初期作品には、監督が渡辺邦男という珍しさもあって早撮りのテクニックも楽しめます。あ、つまりは力まかせな、そういう感じ。 (2009年09月24日 ) 【追記】 |
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※本文中敬称略 |
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file updated : 2009-09-23