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女番長(スケバン) 感化院脱走


■公開:1973年

■製作:東映

■企画:天尾完次

■監督:中島貞夫

■脚本:鴨井達比古、中島貞夫

■原作:

■撮影:古谷伸

■音楽:荒木一郎

■美術:井川徳道

■照明:

■録音:荒川輝彦

■助監督:牧口雄二

■主演:

■寸評:

ネタバレあります。


ゲリラロケ、それは無許可の隠し撮り。街中をダッシュする杉本美樹や賀川雪絵にはもう慣れました?

元女番長のるり子・杉本美樹は感化院(後・教護院、現、現・児童自立支援施設)を脱走中、街中をオバサン走りで猛ダッシュです。ガラの悪い刑事さんたちに捕まりそうになり、ドブみたいな川へダイブしますがついに捕まってしまいます。身体に悪そうなものがたくさん浮いていそうな本物のドブ川へ女優を叩き込むというのは如何なものかと思いますが、かつてそういう目に遭ったスタアさんは破傷風予防の注射(あの、クソ痛いヤツ)までさせられたそうですので、この会社の社風は男女機会均等っていうか容赦なしです。

るり子は、お嬢様然としていますが実は殺人犯であるミナ・ 須永かつ代と一緒に感化院へ送られます。脱走常習犯のるり子は懲罰房へ、ミナはさる大物の情婦だったので優遇されます。で、この感化院というのは名前は優しそうですが中身は凄くて、強制収容所さながらの設備に院長・金子信雄、教官は小池・今井健二、黒田・室田日出男という、教育とか更正とかいう言葉とは対極にあるような人々によって運営されているため、他の収容者じゃなかった生徒さんたちの心もヤサグレ放題なのでした。

法務省の役人の方々・中村錦司らが視察に来ることになったので、職員のみなさんは大慌て。るり子を懲罰房から出してやり倉庫のようにカモフラージュ、作業に集中しているところを見てもらおうとするのですが、食費をピンハネするために、脱走の連帯責任を口実としてゴハンを減らされていた生徒さんたちは大暴れを始めてしまいます。ますます悪化する、っていうか最悪の感化院に見切りをつけたるり子と同房の、マキ・須藤リカ、ユキ・大森不二香の極悪姉妹、施設で産んだ子供を故郷の母・菅井きんに預けている杏子・叶優子、そして栄養状態が悪いため「化粧のノリが悪くなったら困る」というわけのわからない理由で賛同したミナを含めた彼女達は、ボヤ騒ぎを起こして脱走に成功するのでした。

さて、脱走するところまでは目的が同一ですが、杏子は子供に会うために危険を冒して母のもとへ、ミナはパトロンとの愛の巣へ、マキとユキはあてどなく、そしてるり子は「内灘の海」へ。杏子は子供の死を知り、ミナはドスケベなパパ・名和宏(案の定だ)の心が他のベイビーに移っていることを知り絶望しパパを刺殺、リカとユカは食い詰めて、なんとなく仲間を求めて移動を開始。るり子は強盗犯の洋一・渡瀬恒彦がトラックをパクる現場に居合わせて一緒に逃亡します。るり子は洋一と「一発5万」で結ばれます。

内灘の海、そこには自由を求めるるり子が埋めておいたダイナマイトが。ゲバ学生じゃあるまいし、とか思いながらも徐々に仲間が集まってきます。そこで見つけたささやかな自由、船を奪って外国へ逃亡しようという夢に、みんな協力を約束するのでした。女同士の団結を乱す最大の要因はオトコです。自由平等を謳った生活ルールでしたが、色恋だけは別でした。最年少のユキに洋一を寝取られそうになったるり子は嫉妬からユキをぶっ飛ばしてしまいます。

警察も馬鹿ではないので、いや実際は馬鹿っぽい人たちですが、鬼のような教官の小池が所轄のボンクラ刑事・川谷拓三たちの陣頭指揮に立ってるくらいですから、一人を逮捕するよりどうせ行く宛ての無い女たちがいずれは集合するだろうと泳がせておいた作戦がズバリ的中。一網打尽に凶悪犯のオマケまでついています。

ダイナマイトと猟銃で応戦する洋一と生徒のみなさん。なんとかトラックで脱出した一同でしたが、結局は逃げ切れず洋一がアタマを射抜かれてトラックもろとも炎上。るり子は「金網のあるところからはいくらでも脱走してやる」と叫んで逮捕されるのでありました。

女番長シリーズといえば、とりあえず囚人服でキャットファイトを繰り広げる男子の下半身を直撃することを身上とするイタリアの女囚モノをルーツとする作風ですが、本作品はフランス映画のような思想性を感じます。ヴァイタリティー溢れる共同体の責任者としての女番長ではなく、社会への反抗から女番長魂に殉ずるがごとき主人公のあり様には、ポーランドの社会派映画のごとき虚無感が漂います。

杉本美樹の裸がやたらとキレイに撮られており、女優と雑巾の区別をつけないがごとくの取り扱いが多い従来の女番長モノとはここでも一線を画します。社会とか体制とかそんなのどうでもよかったはずの女番長、回と齢を重ねて一皮剥けたのでしょうか?それとも監督がダメ人間の巨匠・中島貞夫だったからでしょうか、たぶん両方。中島貞夫監督と言えば、荒木一郎、今回は音楽で参加。

ところで、火炎瓶の原材料とするのはともかく、暖を取るためにガソリンを使用するのは危険だと思います。ガソリンは火を取りに行く性質がありますから、下手すりゃ渡瀬さんと生徒さん全員速攻焼死です。

2009年08月11日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2009-08-16