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黒と赤の花びら


■公開:1962年

■製作:佐川プロ、配給:大宝

■製作:佐川滉

■監督:柴田吉太郎

■脚本:宮川一郎、柴田吉太郎

■原案:牧源太郎

■撮影:須藤登

■音楽:菊村紀彦

■編集:

■美術:宮沢計次

■照明:傍士延雄

■録音:沢田一郎

■特技監督:

■主演:天知茂

■寸評:

ネタバレあります。


新東宝分裂後、わずか数ヶ月で倒産した会社の作品を観る機会は、二十一世紀の日本においてはほとんど絶望的と言ってよい、のはずだったがこの度、関係者のご尽力で鑑賞する機会に恵まれたので、感謝の意を込めての感想文。

タイトルは、真犯人に絡む二人の美女のことらしい。花びらって呼ぶには、一人はいいけど、もう一人はどうか?

台風の暴風雨の最中、船長室に潜入した西条・安井昌二は船長・沖竜二に発見され、保険調査員の正体を見破られた挙句に射殺されそうになるが、背後から忍び寄った航海長の蛭間・細川俊夫が二人に向けてイキナリ拳銃を乱射。船は沈没し、救命ボートには二人の姿は無し。この船会社は最近、立て続けに沈没事故を起こしていて、しかも船体が発見されず、保険金メタボの状態。

そこで西条の敵討ちとばかりに、保険会社の社長・二本柳寛の命を受けて同僚の田代・天知茂が、あらくれ港湾労働者がたむろするあやしげな賭場にやってくる。そこで、オーケーの松とあだ名される、ブルドッグが人間に進化する途中のような怪しい男・大友純から、500円札数枚で情報を買った田代はキーパーソンの百瀬が宿泊しているホテルを探し出す。

そこには先客がいた。どう見てもカタギだがシチュエーション的にはコールガールと思われる若い女性、アキ子・上月左知子、彼女は西条の婚約者。せっかく見つけた百瀬は死んでおり、おまけに死体は翌日、轢死体として全然別の場所で発見される。真相はまたもや闇の中、ところが偶然、ブルドッグの松、じゃなかったオーケーの松から、怪しげなスタジオの経営者である花田・丹波哲郎という男を紹介してもらった田代は、またもや謎の美女と遭遇し、今度は「宇宙人」というまるで電波系のような名前のクラブにいるガガーリンという源氏名の、どういう趣味だか・・・ダンサー・三原葉子を紹介してもらうのだった。

田代がテンポ良く観客を引き連れ、事件の真相へジワジワと接近していくなかで、程よく配置された登場人物がそれぞれに秘密を持っているという、ワクワクな展開。もちろん、最初の遭難&拳銃乱射のシーンでオチのほとんどは読めるので、犯人登場型のスリラーだと思えばよろしい。

とにかくラストは見えてるから、ビジュアルとか台詞とか完璧に読めてるから、とっとと話進めろよ!じれったいなあ!まったく!などど焦ってはイケナイ、ましてや途中で睡魔に負けてもイケナイ。

花田と蛭間は麻薬の密輸に手を染めていて、沈没したように見せかけて輸送用の船をゲットしていたという次第。オマケに蛭間はドスケベでもあったのでコールガールの斡旋もやっていて、そこに目をつけた田代が無謀にもアキ子を囮にして潜入させるが、直情径行にありがちな不注意であっさりと正体がバレてしまう。一方の田代はガガーリンっていうか謎のダンサー、実は今回の黒幕の情婦、彼女の部屋に監禁されていたが、なんとか脱出。

っていうかさー、その程度のドアなら体当たりでも何でもして出れるでしょう?腕時計をエアコンの隙間から、外へ垂らして子供に拾わせるなんて手の込んだことしなくてもさあ!色男、金はあるけど力なし?

おっと、事件はいよいよクライマックス。アキ子が連れ込まれた船、沈没したはずの船の船長室にいたのは・・・・さて、ここから観てのお楽しみ。ってもさあ、真犯人と情婦が最後は海に身を投げて心中ってさあ、ここまでテンポ良かったのにさあ、なんか激安なメロドラマになったのは惜しかったかなあ。

ヒーローをピンチに陥れたり、悪玉を調子づかせるためには、展開に注文のつくヒロインの失態的な活躍は欠かせない。アタマの痛い存在である本作品のアキ子も、台詞が大時代的なのを除けば合格点を上げられる。ただし、恋のライヴァルが、ドスコイ体型で変なダンスを踊る三原葉子だったのは災難だった。何せ相手は宇宙人、登場の時点で大敗は見えていた。

脚本がよくできてるだけに、表出した絵柄も、俳優もムード満点、が、60年代という時代のなせる業と割り切るには、あまりにも技斗が下手。下手といっても色々あるが、トロい、拙い、クサい、という三重苦なのは気の毒なくらいツライところ。特に新派のアノ人ったらもう、最悪。

ようするにアクション映画だと思うからイケナイのであって、純粋に探偵(保険調査員だけどさ)モノだと思えば、天知茂の大向こう受けを狙う(そう、常に彼はそう、ファンサービスってことで)ハッタリの効いた芝居が奏功で楽しい。あと、丹波哲郎って女の肩抱くの上手いよね、新たな発見。細川俊夫の悪役ってどうだろう?東宝なら平田昭彦(様)のポジション狙いか?知的なところは共通項だけれど、平田昭彦(様)の気品という観点では、細川俊夫は健康的すぎるので正直どうもというところ。

クラブの歌手で松尾和子が出てくる、って歌ってるだけ。

予算も時間もそんなに無かったかもしれないが、新東宝の残党が多く出演しているし、ロケの絵柄もキレイだし、埋もれた作品にしておくには惜しい力の入りように誠意を感じる。それだけ昨今のドラマが安っぽいのかもしれないが、本作品はかなりちゃんと作ってある良心作。

2009年07月18日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2009-07-19