「日本映画の感想文」のトップページへ

「サイトマップ」へ


隠密侍危機一発


■公開:1965年

■製作:東映(京都)

■企画:岡田茂、 松平乗道

■監督:山下耕作

■助監督:本田達男

■脚本:田坂啓

■原作:

■撮影:鈴木重平

■音楽:津島利章

■編集:神田忠男

■美術:塚本隆治

■照明:井上孝二

■録音:加藤正行

■特技監督:

■主演:丹波哲郎

■寸評:

ネタバレあります。


本作品のタイトルはダサい、ストーリーも「椿三十郎」のパクリ、俳優も地味、セットもちゃっちい、にもかかわらず主要人物二名が時代劇にとことんミスマッチなバタ臭い風貌、かつ口語の台詞(ほぼ「です・ます」調)というある意味先進性を感じさせて、なかなかに楽しめる。要するに、時代劇としてはダメダメかもしれないが、映画としては面白かったっつうこと。

丹波哲郎、最も出世した大部屋俳優。内田良平、最も過小評価されている俳優の一人。この二人が対決するのですから面白くないわけがない。おまけに、いいとこの子(丹波)足軽の子(内田)が乳兄弟という因縁プレミア付。

信州高遠藩の殿様が病気になって跡目相続のお家騒動が勃発。江戸家老、津島修理・二本柳寛は、国元でお家乗っ取りを企む国家老が送った偽の上意書で切腹させられそうになったので、隠密を差し向けて彼らの悪事の証拠を掴まんとする。で、その隠密っていうのが秋月慎次郎・丹波哲郎。いかにも「私はぼんくらです」というスキだらけの登場、山中で出会った美人尼さんを男性目線で全身スキャン、が、あっさりトンズラされて不貞腐れる、等々。

人気の無い獣道をあんな美人な尼さんが歩いてたら普通はなかり怪しい、案の定、その正体は高遠藩の菊姫・藤純子。実はすでに殿様は死んでいて、跡取り決めないうちに死んじゃうと家が潰されるのでその事実はひた隠しされており、そういうスキャンダルを口実に領地をせしめようとしている幕府の隠密がウヨウヨしている。

慎次郎は幼馴染でかつ上司と部下の家柄で、さらに乳兄弟でもある徹之介の紹介で、今では倉庫として使用されている鬼門丸に勤務することになる。早速、密書を受け取った男を一人、カッコよく斬って捨てる慎次郎。その密書は徹之介の手から国家老の手に渡る。密書のあて先は幕府大目付の水野備中守。

一方、悪玉、どうみても一目で分かる説得力、チョンマゲ装着時には羽二重不要の国家老、内藤刑部・内田朝雄の命を受けて善玉の重役を暗殺した元軽輩の佐倉徹之介・内田良平は足軽の息子だったため、なりふりかまわず出世して今じゃあ内藤の片腕にまでなっている。

内藤の悪行は若手藩士の忠義心に火をつけており、そのリーダーである矢吹亥四郎・河原崎長一郎は同じ軽輩のお友達大勢、中西・佐藤忠和(佐藤蛾次郎)、越水・脇中昭夫(堀田真三、眞三)らが密談中にひょこり現れた慎次郎。最初は警戒していた彼らだったが、殿様の死を知るといよいよヒートアップ。慎次郎は彼らにある作戦を授ける。内藤が藩の実権を得るために息子と菊姫とを結婚させようとしており、その結婚式が今夜であり、なんとかそれを妨害して菊姫を拉致しようというのだ。

ところがなにせ下っ端のペーペーのさらに下の若者達だったので、お姫様の顔も知らないし、城中の様子もわからない。それならば、と。慎次郎は徹之介の信頼を得るために若侍たちを一網打尽、で、返す刀で城中の牢屋から彼らを脱走させて大騒ぎの間にお姫様をゲットし、鬼門丸にて篭城作戦を開始。

その前に慎次郎が江戸の芸妓に送った手紙は炙り出しになっていて、殿様の死は江戸家老の知るところとなっている。急いで国元へ向かっているはずの津島修理の到着を待つのが慎次郎たちの目的だった。ところがすでに、幕府隠密だった医者が死ぬ間際にこの情報を幕府差し回しの忍者に手渡していたため、大目付の配下が江戸屋敷にやって来てしまう。

トリッキーな作戦で菊姫や若侍たちを再三のピンチから救った慎次郎。リーダー亥四郎の姉で徹之介を恋慕しているゆき・桜町弘子が弟の救命とバーターで、徹之介の間者となって慎次郎暗殺を企むが失敗。ゆきは菊姫さまの人柄にも打たれて寝返る。

そのとき、偶然、隣藩の殿様が病気見舞いに来るらしい。お家の取り潰しだけは避けたい内藤一派と慎次郎たちの目的は一致しているのでとりあえず休戦。その間に鬼門丸からの抜け穴が発見される。いよいよ強行突破を敢行することにした内藤たちが鬼門丸の壁面を破壊して突破したとき、曲輪(くるわ)の中にいたのは姫の身代わりを決意したゆきと慎次郎のみ。まんまと逃げ出した菊姫と若侍たちであったが、徹之介が後を追って来た。散り散りになりながらも山中へ隠れた聞く姫一行の前に、大目付、水野備中守・大友柳太朗たちが現れ、菊姫たちは城へ戻された。

やっぱり御家は取り潰し。内藤一派は永久追放。内藤刑部はその場で自刃。上意を告げて引き揚げようとした水野備中守に「そういう無理くりなルール作るからお家騒動が起きるんだ!」と言いたい放題な慎次郎。ところが泰然自若の水野備中守。実はすでに津島修理が腹を切っての同様の嘆願が実って、菊姫がお婿さんもらったら家は再興していいよというもうひとつの上意を水野は持ってきていた。

一安心の慎次郎と若侍、および家臣一同。

「幕府にだって血も涙もあるんだよ」というイイ台詞を残して去る、大友柳太朗。最後に美味しいところ全部持って行っちゃうなんて、ズルイぞ!でも、カッコよかったから許す。

納まりがつかないのは徹之介。ゆきは抜け穴の所在を言わなかった。慎次郎との一騎打ち、いい勝負、最後の決着はお姫様からもらった短刀の一撃。

ステレオタイプなお家騒動、ふらりとやってくる隠密(素浪人になることを実は希望)、年端もゆかない若い侍達との交流、なんやかんやあってお家騒動解決、親友(ライバル)と心ならずも対決。どっかで聞いた話だなあと。

「椿三十郎」のパクリでありつつ、三船敏郎と丹波先生の違いは、色気の有無。ま、当然だけど藤純子の貞操がどうにかされるということは、ここ東映京都ではありえないので、丹波先生とお藤さんのママゴトのような恋愛譚はあくまでもプラトニックラブ。そのかわり、内田良平と桜町弘子の壮絶愛には憐憫の情をもよおしまくりである。桜町の男気、内田の優しさ、イイッ!こういうの、イイなあ。非情に徹しきれない男の情愛、ユルイ、甘いという人もいるだろうけど、私こういうの好きですね。

東映京都の時代劇映画と言えばお約束ですが。福本清三さんを探せ!

鬼門丸へ最初に突入した徹之介たちは、小さな通用口に殺到して若侍たちに返り討ちに遭う。で、ここんところでたぶん丹波先生に最初に斬られて、堂々断末魔アップがたぶん福本さんだと思われます。その筋の方は、要チェック。

2009年06月28日

【追記】

※本文中敬称略


このページのてっぺんへ

■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2009-06-28