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緯度0大作戦


■公開:1969年

■製作:東宝、ドン・シャープ・プロ

■製作:田中友幸、 ドン・シャープ

■監督:本多猪四郎

■脚本:関沢新一、テッド・シャードマン

■原作:

■撮影:完倉泰一

■音楽:伊福部昭

■編集:武田うめ

■美術:北猛夫

■照明:隠田紀一

■録音:藤好昌生

■特技監督:円谷英二

■監督助手:中野昭慶

■合成:向山宏

■操演:中代文雄

■主演:シーザー・ロメロ(推奨)

■寸評:

ネタバレあります。


この映画はシーザー・ロメロを観る映画である。

海底油田の調査中、海洋学者の田代・宝田明とマッソン・岡田真澄、そして米国紙の記者であるロートン・リチャード・ジェッケルの3人が乗った探査艇が深海で突然の乱泥流にまきこまれて操縦不能。動けなくなった彼らのところへキンキラキンに派手な海パンとビキニの男女がやってきて探査艇ごと、謎の潜水艦に収容する。意識が戻ったらジャーナリストの本能ゆえにロートンは、精悍だがどことなく貧乏クサイ潜水艦の艦長のマッケンジー・ジョセフ・コットンを質問攻め。負傷したマッソンは、デコピンがキュートでエロい制服を着た女医のバートン・リンダ・ヘイズに介抱してもらって、重症だけど夢心地。

潜水艦アルファ号は「緯度0」の海底基地へ向かう。そこには地上世界の優秀な知性が集まっており、軍事目的に利用されることを嫌った彼ら、彼女たちが永世中立な環境で研究に没頭できるまさに桃源郷のようなところであり、頻繁に地上世界と連絡をとりつつ、すべてを人工的に制御して快適な生活を送っている。しかも、そこでは時間がゆっくりと流れるらしく、ようするに浦島太郎の竜宮城みたいなわけで、マッケンジー艦長の実年齢は二百歳超なのだった。

しかしこの海底王国の存在を快く思ってない人もいるわけで、しかもそいつは二百年も生きてて、かつ、マッケンジー艦長の元ポン友にして1歳違いのマッドサイエンティスト、マリク・・シーザー・ロメロ。そして、夫唱婦随ともいえる、派手で性格が悪そうな妻のラフレシア(注:死肉色した臭い大きな花を咲かせる植物)、じゃなかったルクレチア・パトリシア・メデイナ。さらに、マッケンジーの高機能潜水艦に対抗する「黒鮫号」を操る女性司令官の黒い蛾(注:あだ名)・黒木ひかる。そしてトドメは副官の陳・黒部進、および謎の生物の皆さんである。

悪玉たちはブラッド・ロックと呼ばれる要塞からたびたび出撃してはアルファ号を攻撃してくるのだが、緯度0は特殊なバリアに守られているので中には入って来れない。アタマが良いのは自分ひとりしかいないので、マッケンジーに出し抜かれてばかりのマリクは、日本人の科学者で放射能の免疫血清の開発に成功した岡田博士・中村哲とそのバタ臭い一人娘、鶴子・中山麻里の誘拐に成功。彼らを人質にマッケンジーをおびき出すことにした。

マリクの特技は改造人間を作ること。しかも、下等動物に人間の脳みそを移植することで、人語を解し、巨大化もするトンでもないシロモノにしてしまうのだ。かねてより度重なる失態を重ねていた黒い蛾の脳みそを凶暴なライオンに移植することにしたマリクだったが、唯一つ、大切なことを忘れていた。脳みそを移植すると、人間だった頃の感情もそっくりそのまま受け継がれるということを。

岡田博士が血清の秘密をなかなか吐かないので、脅し目的でライオンと黒い蛾の脳みそ交換ショーを見せ付けていたマリク。そこへ救助にかけつけたマッケンジー、田代、マッソン、ロートン、そして艦長の忠実なる助手で巨漢の甲保・大前鈞たちは数々のトラップ、巨大鼠の襲撃をもかわしてジワジワと要塞に接近していた。せっかく妻のルクレチアが「あんた!敵が入ってくるわよ!」と教えてやったにもかかわらず、ライオンに装着する翼を持ったコンドルの解体ショーに夢中でそれどころじゃないマリク。

要塞の侵入口を突破したのは、弾丸を跳ね返す免疫風呂の効果でもなく、指先から火炎放射やらレーザー砲やらが出てくるビックリ兵器でもなく、大前鈞の馬鹿力。あっさりと手術現場になだれ込んだマッケンジー艦長の一行は、全然強くない直立猿人(しかも飛行能力あり、あ、猿人じゃなくてコウモリだ)たちをバッタバッタとなぎ倒す。その最中にルクレチアが憤死。空飛ぶライオン=グリフォンに改造された元黒い蛾はアルファ号を叩き潰す最終兵器として大空へと飛び立った。

磁力装置で崖に激突しそうになったアルファ号は、全然話に出てこなかった特殊な改造がこっそりされておりまんまと脱出成功。長いこと愛人生活を送らされた挙句にブサイクな(本当に不細工な縫いぐるみの)巨大グリフォンに改造された元黒い蛾はマリクの命令にシカトこいただけでなく、こともあろうにマリクが乗った黒い鮫号のほうを襲撃して自爆させてしまう。

アルファ号と緯度0を守ったのは、マッケンジーたちの勇気ではなく、元黒い蛾=グリフォンの悋気だったのである。女のジェラシーってのは怖いですな、どんな未来兵器も太刀打ちできませんな、って、そういう話じゃないですけどね。

緯度0のの生活がすっかり気に入った田代は鶴子を、マッソンはバートン女医をゲットして残ることに。一人地上へ帰ることになったロートン記者だったが、ゴムボートで漂流しているところを助けてもらったまでは良かったのだが、証拠の写真フィルムは全部パーになっており、緯度0からタダでもらったダイヤモンドはすべて消えていた。完全に「アタマのおかしい人」にされたロートンの前に現れたのは・・・。

ここからはオチです、読みたい人だけ→「田代にそっくりな日本人の艦長、マッケンジーに瓜二つの米海軍の艦長、そしてやたらとカッコいいマリクにそっくりな船医が出てくる。はたして緯度0は実在したのか?夢だったのか?」←ここまで。

シーザー・ロメロが断然いい。ロメロはテレビ版「バットマン」(毎週、予告編の馬鹿馬鹿しい盛り上げ方が大好きだった、ナレーションはロイ・ジェームスの名調子)で悪役のジョーカーやってた。ド派手なメイクで狂ったように笑っていたので(素顔出してたかもしれないけど子供だったんで覚えてません)本作品では、終始渋面で声優の納谷悟郎のおかげでなんとかカッコがついたコットンよりも、派手でわかりやすくてエンディングのどんでん返しのシーンなんて「お!コットンより断然カッコいいじゃん!」と思ったほど。二枚目だしね〜笑顔素敵だよ〜ホント。

怪獣とか怪人とか出さないのでイマイチ盛り上がりに欠けたところを、やりたい放題の熱演で全部さらったシーザー・ロメロが最終的に一番キャラが立っていた。ジョセフ・コットンは「第三の男」で有名だが個人的には「ジェニーの肖像」のほうが好き。よく考えるとあの作品もタイムスリップのパラレルワールドだったし。

マリクの妻、または「野村沙知代」っぽい巨乳のパトリシア・メデイナはコットンの奥さん(本物)。 じゃ、ロメロは亭主の目の前で奥さんとイチャイチャしてたってことになるのね、きゃあっ。長身、語学堪能(英語)あたりが日本側キャスティングの条件だったのか、おタカ、ファンファン、概ね特撮映画では悪いほうのコスモポリタン・中村哲が珍しく善玉の博士役。スマートなお医者様でバートン嬢をやさしく見守る姿医師に平田昭彦(様)も!透明ビニールのコート脱いだら、トレパンにTシャツで、まるで中学校の体育の先生みたいな衣装だったけどさ。

「緯度0がオープンにするのは地球上から争いがなくなったとき」というマッケンジー艦長の一言は「だから緯度0は永遠に秘密のままなのさ」とも聞こえる。それって単なるインテリの現実逃避?それとも、監督の深いメッセージ?あとは見る人が決めること。

2009年05月06日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2009-05-06