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流星空手打ち


■公開:1956年

■製作:東映東京

■製作:光川仁朗

■監督:津田不二夫

■脚本:小林大平

■原作:牧野吉晴

■撮影:福島宏

■音楽:大久保徳二郎

■編集:

■美術:中村修一郎

■照明:森沢淑朗

■録音:広上庄三

■主演:高倉健

■寸評:

ネタバレあります。


かつて仲村トオルは「第二の高倉健」というキャッチフレーズだったことがある。「長身、イイ身体、朴訥」あたりが営業的な買い要素だったと推察するが、今、高倉健のデビュー作を鑑賞する機会にあっては「デカイ、野暮ったい、一重マブタ(しかも三白眼)」というあまり芳しくない要素を確認できる。

前編「電光空手打ち」では逃げてばっかのヒーローだった健さんであるが、後編ではどうだろか?興味深いところだ。

冒頭のあらすじ。大正時代の沖縄で実戦空手の知倒派のエース、忍勇作・高倉健は、非戦派の名越先生・山形勲の暗殺に失敗、そして彼の弟子になると言い出した忍を、知倒派の赤田先輩・岩城力、師匠のお嬢さんである恒子・藤里まゆみ、頼りない克明坊ちゃん・北峯有二たちが付け狙うようになり、散々逃げ回った忍は東京へ唐手(後に空手に改称)の紹介のために赴いた名越先生の後を追ったのであった。

で、数ヶ月たってみたら、破門中なので名越先生を頼ることも出来ない忍勇作はルンペン(ホームレス)同様の生活。たまたま暴漢・三重町龍(三重町恒二)らに囲まれていた、三河屋のボンボンである鹿島耕三・波島進を救った忍は、彼の父親が経営する酒屋の住み込みとして働いて夜学へ通う。東京来てから全然、唐手の修行とかしない忍勇作だが、彼は耕三クンの妹・春日とも子や、芸者たちからモテまくる日々。

名越と忍を追って東京へやってきた赤田先輩は右翼の政治家をパトロンにして、文部省主催のスポーツ大会で唐手を紹介して絶賛されている名越を倒すべく活動開始。当然のことながら、恒子お嬢さんと克明ぼっちゃんも一緒である。すでに師匠は故人となっているので、赤田先輩としては知倒派の屋台骨を背負っている身である。裏切り者であり、かつ、お嬢さんが惚れている忍勇作も生かしておくわけにはいかない。

三河屋にいることを突き止められた忍勇作はまたもやマッハ逃げ。ルンペンの大将・花沢徳衛のところへ身を寄せるのであった。「いい若いもんがこんなとこいちゃいけない」と大将からなけなしの小銭をもらった忍は名越先生のところへ行くが、まだ破門は解かれない。東京には沖縄の舞踏を紹介するために志那子・浦里はるみも来ていた。名越先生の弟子、比嘉・神田隆のとりなしにもひけ目を感じてまたもや行方をくらます忍勇作。

なんか本作品でも逃げっぱなしのヒーロー、忍勇作である。

で、なんやかんやあって、右翼の肥田・藤井貢と赤田たちが集団で名越先生を襲撃するらしい。比嘉と志那子はあっちこっち走り回って行方不明の忍を探し出し、襲撃現場へ向かう。赤田先輩は忍勇作に利き腕を潰されてからは沖縄古武術の釵(さい)を常用、肥田の手配した助っ人はなんと刀を使用。

おいおい、赤田先輩、いくらなんでも卑怯すぎだろう?そりゃまあ忍のほうが先に卑怯だったんだけど、武道家としてはいかがなものか?

刃物持った大勢に囲まれた名越先生としては逃げることも出来ず、今回ばかりは必殺「流星の型」で敵をなぎ倒す忍をいわば黙認状態である。名越先生、なかなか臨機応変である(か?)、やっぱ命は惜しいもの。

残った左腕も潰された赤田先輩はもはや戦闘能力ゼロ。どうやら勝ち目もなさそうだと、肥田たちはこっそりと闇に消えてしまう。志那子と忍勇作のラブラブな状態を見せつけられた恒子お嬢様は、ナサケナイ弟と赤田先輩をかついで敗退。忍勇作は志那子をヒシッ!と抱きしめるのでありました。

ライバルが岩城力というのはいささか物足りないが、長身の健さんに対抗するタッパと運動神経のある人材は、東映東京でも希少である。岩城さんはハスキーボイスが印象的で大変に理知的な面差しにものすごーく優しいタレ目、従って今回のような狂犬キャラを演じるにあたり、目張りギンギンである。ここでも「無茶させるなあ」の感が大。ちなみに岩城さんは慶大出身、健さんは明大出身、トンだところで慶明戦である。

柔道に比較すると空手のほうが派手であるから、見た目のカッコよさも付けやすい。非英語圏の俳優がハリウッドではマッチョのアクション映画(ようするに台詞のスキルが問われない)でのし上がった構図が後にあるが、本作品はそういう手法の大先輩であると言える。芝居の基礎がない、口跡があまりよろしくない、男性新人スタアの売り出すために東映東京が「空手映画」をチョイスしたのは、ある意味、しごく真っ当なことである。

しかも東映はその後も懲りずに、ある種のブーム便乗ではあったが「空手映画」で、ゴハンを何杯も食べちゃうのである。そんなんだから、健さんの次回作も凄いぞ、だって「無敵の空手!チョップ先生」だもん。岡田英次が空手チョップするらしい、見てえ。

2009年04月05日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2009-04-06