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僕は独身社員


■公開:1960年

■製作:東宝

■製作:金子正且

■監督:古沢憲吾

■脚本:松木ひろし

■原作:

■撮影:飯村正

■音楽:佐藤勝

■編集:

■美術:阿久根巖

■照明:高島利雄

■録音:藤縄正一

■主演:佐原健二

■寸評:

ネタバレあります。


良い子のみなさんと怪獣ヲタのボクたち(イイトシこいたオッサンも含)!映画の冒頭10分くらいは目をつぶっていなさい。熱血ヒーロー野郎のイメージが飛びますからねっ!

大手石油会社の中東進出の足がかりとして現地へ社員二名を赴任させることを会議で決定。社長・江川宇禮雄の出した条件は「語学堪能」これは納得、「独身の男子」って?世が世なら差別だとかセクハラだとかパワハラだとかで大騒ぎになるところ。

案の定、当時のこの会社でも「差別よね!男だけなんて」と女子社員からブーイング。さすが東宝、サラリーマン社会の描写においては一日長あり。

海外赴任を外遊と勘違い、というか前向きに解釈した若手社員トリオが本作品の主役。

鳴海・佐原健二、関・佐藤允、遠山・ミッキー・カーチスは早速、バラク行きを志願。そのためには語学のスキルアップは当然として、結婚しないようにしなければならない。プレイボーイの鳴海は結婚を迫ってきた同棲中の若手女優・原知佐子をフってトンズラ。失意の女優は自殺未遂を図るが、その現場にかけつけた女性誌の記者、多鶴子・白川由美はゴシップネタにドンピシャだわ!と早速、鳴海の取材を開始。

佐原健二ったらイキナリのキスシーン、きゃあ!そんな!真面目な佐原クンのイメージが傷つくじゃないの!きいぃっ!優等生・佐原健二のプレイボーイを戒めんと立ち上がる、女性学級委員(みたいな)白川由美。実に分かりやすい構図であります(なにが?)。

電話で取材を申し込んできた多鶴子に、代理として遠山を派遣した鳴海。しかし、ボンボンの遠山は芝居が下手クソだったのであっという間に正体がバレ、今度は会社へ乗り込んできた彼女に、あまつさえ真面目な関を身代わりとして差し出すのですが、ウソのつけない関のおかげでこの作戦も水泡に帰します。

鳴海は色っぽいマダムの奈美・久慈あさみが経営するバーの小夜子・柳川慶子のアパートへ転がり込みます。その頃、遠山は箱入り娘の静代・北あけみ(え?)と強制見合いの真っ最中。結婚したらバラク赴任はダメになりますので、独身社員トリオはピンチになったら「バラク」と三回唱えるのをお呪いにしています。決して、高ビーな見合い相手の母親・一の宮あつ子を封じ込めるための呪文じゃあないです。

さて、小夜子が転職したクラブで、偶然、鳴海と関、そして多鶴子がハチ合せ。存外に美人だった多鶴子に色目を遣う鳴海が気が気でない小夜子の接客がぞんざいだったので、キレた銀座の不良に喧嘩を売られた関はパンチ一発でぶっ飛ばしてしまいます。ああ、やっぱり!昔は不良仲間とブイブイいわしたに違いない関クン。更正した愚連隊は節操があるものですから、昔っから女と浮名を流していた鳴海クンとは大違い。ちなみに、マザコン気味の遠山は最初から論外です、多鶴子的には。

金髪娘にまで手を出す鳴海クン、流暢な英語と女性関係にだらしが無いゆえにマトモな結婚とは縁遠いだろうと思われたことが奏功したのかどうかは不明ですが、バラク行きは鳴海クンに決定。

英語が得意なプレイボーイ?それって同期の宝田明の十八番じゃん?でも本作品の主役は佐原健二。

朴訥だけど、真面目でオクテな関クンが見事に多鶴子のハートを射止めます。一人取り残されたかと思いきや、見合い当日とその後のデートではブルジョワのお嬢様だった(ありえねえ!北あけみの普段の役どころから推察するに、ですが)静代が実は複数のボーイズを引き連れて銀座を練り歩くようなアバズレ(あ、何もそこまで)だったのでボンボン遠山クンとしては、制限ユルイかも?と期待したのかどうかは不明ですけど、静代とゴールイン。

「結婚なんて人生の墓場」と公言していたトリオでしたが、上司・小栗一也と妻・中北千枝子の年季の入った夫婦の姿を目の当たりにしてそれなりの変化があったようです。

白川由美と佐原健二の名前をクレジットで見た観客の多くは「最後はこの二人がくっつくに違いない」と予想したはずです。だって、怪獣映画ではいつもそう。ところが結果は違っていました。冒頭の佐原健二の濃厚なキスシーン、東宝映画にはあるまじき?このシーンから、佐藤允のディープキスも見られるかしらとドキドキ(何期待してんだか)したのですが、上手いことカメラワークでスカされました。

意外な拾い物は佐原健二の女ったらし野郎です。サマになってましたよ、わりと。不器用きわまりない技斗と比較して、そういう方面に回してもイケてたんじゃないかと思いますが、同期に宝田明がいるからNG(たぶん)。それに、テレもあったのでは?テレ屋さんのほうがそれを隠そうとして吹っ切れた大胆演技をするものなので、佐原健二ならありえそう。

自殺未遂現場へかけつけるアパートの管理人・佐田豊。いろんなものに振り回される小市民を演じさせたらこの人の右に出る者はおりますまい。そして、登場したとたんに善人だと分かる風貌、癒されますなあ。

2009年03月08日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2009-03-08