「日本映画の感想文」のトップページへ

「サイトマップ」へ


意気に感ず


■公開:1965年

■製作:日活

■企画:岩井金男

■監督:斎藤武市

■脚本:小川英

■原作:源氏鶏太

■撮影:峰重義

■音楽:小杉太一郎

■編集:近藤光雄

■美術:坂口武玄

■照明:土田宇保

■録音:橋本文雄

■主演:小林旭

■寸評:

ネタバレあります。


サラリーマン映画を観ていて思うこと。こんなサラリーマン(概ね「馬鹿かスケベ」)がいてたまるか!と、こういうサラリーマン(概ね「いい男&女」)ならいてもいいかも!、の2つ。今回は後者、だってアキラさんだから。というわけで本作品は徹底的にエコヒイキします。

サラリーマン映画のはずなのに、クレジットに「技斗:高瀬将敏」とあったのが大笑い。さすが日活、そう来たか。サラリーマン映画とはいえ小林旭だもんね、歌うよね、きっと、ほーら歌った!というわけで主題歌はアキラさんの熱唱(ヤケクソのようにパワフル)。

神保物産は今、経営危機です。神保社長・十朱久雄はワンマンで息子の一郎・平田大三郎を溺愛しており重役に据えています。おまけに元腹心の西田・山内明に裏切られ独立されてしまい、顧客をごっそり横取りされてしまいました。

同社の熱血社員、志田英吉・小林旭の所属は営業部。今日も今日とて接待のために女性をアテンドするように課長に命ぜられるも「イヤです!」と小学生のように業務命令拒否をしています。そんな彼は同僚の池山・藤竜也に「要領が悪い」と言われてしまいますが、彼の男気を買ってくれている大口の取引先の日東カメラがいるのでクビになる心配は無いようです。課長に怒鳴られてタバコふかしている志田のところへ謎の美女(電話で声だけですが正体まるわかり)から電話がかかります。

バーに呼び出された志田の前に、西田社長の秘書をやっている皆川佐樹子・浅丘ルリ子が現れます。彼女は30万円の支度金とともに彼をヘッドハンティングしたいと言います。体育会系の志田は交換条件として、佐樹子のカラダを要求しますが、これがなんとあっさりと交渉(事務的にも肉体的にも)成立。おまけに佐樹子は処女でした。

こんな性欲馬鹿が正義の味方といわれても、二十一世紀の日本では認められ難いものがありますが、当時の日活の空気感のようなものを感じていただければよろしいかと。

ユルんだ会社の状態に業を煮やした神保社長は、かつて自分の経営方針に真っ向勝負を挑んできたために感情的になってクビにした武士(もののふ)、東沢・伊藤雄之助を呼び戻すように志田に命じます。早速、九州へ向かった彼のあとを佐樹子が追って来ていました。

志田は地元の飲み屋で東沢を待ちます。彼は男前なのですぐに女給の若子・十朱幸代に惚れられてしまいますが、そこへタイミングよくヤクザ・高品格が乱入してきます。乱闘の最中に現れた馬面の紳士が東沢その人でした。若子のとりなしもあって無事に東沢との対面を果たした志田ですが、神保社長から預かった手紙が何者かにすり替えられており、白紙の手紙に東沢は激昂してしまいます。

佐樹子は西田社長の懐刀でした。東沢の実力を知っている西田の命令により、彼の復帰を妨害するのが彼女のミッション。手紙の件も彼女の仕業。西田物産への移籍を蹴飛ばした志田は、東沢をやっとこさ説得します。東沢の上京を心待ちにする神保社長とは反対に、息子の一郎を含む重役たち・弘松三郎伊藤寿章雪丘恵介は戦々恐々。特に村井部長・藤村有弘は大いに挙動不審。

日東カメラが取引停止を通告してきます。志田の横っ面を二回もひっぱたいて絶交したのみならず営業職のライバル宣言をした佐樹子が次々と得意先を横取りしていたのでした。神保産業の利益は下方修正しまくり。東沢を副社長に迎えようとしていた神保社長でしたが、彼の復帰後、悪化するばかりの経営状況についに社長も耐え切れなくなってきます。

神保物産の重役たちはひそかに自社株を買占めており、代表権もゲットし、東沢を封じ込めようとしています。志田は日東カメラに続いて取引を停止してきたお得意さんの京浜機械へ乗り込みます。いささか難物でオコゼのような顔立ちの社長・東野英治郎に持ち前の熱血パワーで面会を果たす志田。しかし社内に西田への内通者がいるばかりでなく、会社の機密情報が業界にダダ漏れであることにショックを受けてしまうのでした。

志田はまたもやヤクザたちに襲撃され負傷します。九州から志田を追ってきた若子は西田社長が常連になっているバーに就職します。しかし佐樹子に正体を見破られてしまいます。若子と志田の関係にムカついた佐樹子でしたが「私は正々堂々と営業スキルで勝負したいの」とこしゃくな宣言をしているので若子を見逃します。

ビジネスのためには処女もくれてやるルリ子ったら、こんなアンビバレンツなところもまた魅力です。

西田のスパイは村井部長でした。若子は西田物産の大沢部長・近藤宏に襲われそうになりますが、ダンディーな人だと思っていた西田社長の裏の顔に絶望した佐樹子によって救われます。ヤクザたちは大沢部長の指示で今度は東沢を襲撃します。そこへ志田が駆けつけ、ヤクザを撃退。ついに運命の株主総会当日を迎えるのでした。

心の狭いヤクザの幹部などをネチネチ演ることが多い近藤宏、ついに男子の本懐かと思いきや、子猫ちゃんの爪にひっかかれてアウトでした。そりゃまあ、お父さんが一緒(ってもカラミないけど)だから無理か。佐樹子の男気に完敗した若子が泣きながら志田に電話するところが超カワイイでした。

息子の一郎は西田から女をあてがわれていて骨抜きにされており、寝物語に会社の機密を漏洩していました。東沢が突き止めたこの事実に社長はほぼ初めて息子を面罵。ユルんだ会社は見事に立ち直ります。小汚い西田の手口も公表され、ヤクザを使っていた大沢ともども彼はパトロンから見放され社長の座から陥落確定。佐樹子にプロポーズする志田、しかもそこは西田の社長室、さすがに怒られるわな。

古巣の危機を救った東沢はおきゃんな若子と一緒に飛行機で九州へ。息子の常務も目が醒めて、神保物産も志田と佐樹子も万事メデタシ。

アキラさんがサラリーマン役なんてちょっと意外でしたが、すっごくハマってました。テンポもアクションも、アキラさんの表情がクルクル変わるのが楽しくてノビノビとした明るさが最後まで失速しないのが良かったです。ルリ子さんも幸代さんも魅力的。健全な小市民のくすぐりがメインの東宝のサラリーマン映画とは違い、大人の悪に挑戦する若者の熱血を善玉の年長者の知恵が救う爽やか系の図式(それって日活)が妙に新鮮。

ところで神保物産の重役たちの中になんとなく伊藤雄之助に似た人がいますが、あれ実弟の伊藤寿章=澤村昌之助(現)ですね。直接対面の無かった十朱父娘と違い、こちらは兄弟対決ありでした。

2009年03月01日

【追記】

※本文中敬称略


このページのてっぺんへ

■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2009-03-01