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茶々 天涯の貴妃(おんな)


■公開:2007年

■製作:東映

■製作:坂上順

■監督:橋本一

■脚本:高田宏治

■原作:井上靖

■撮影:

■音楽:海田庄吾

■編集:

■美術:

■照明:

■録音:

■主演:和央ようか

■寸評:

ネタバレあります。


淀殿と言えばヴァンプの代名詞。

大坂城落城寸前。燃え盛る大坂城下を天守閣から見下ろす淀殿こと茶々・和央ようかの脳裏には今までの人生が走馬灯のようによぎっています。おはつ・富田靖子(大人になった後)、おごう・寺島しのぶ(同)、三姉妹の長女である茶々・菅野莉央(子役)。母のお市の方・原田美枝子はエキセントリックな暴君で兄ある織田信長・松方弘樹によって夫である浅井長政を自害に追い込まれます。信長の死後、今度は柴田勝家と再婚しましたが、こっちは家来だった羽柴秀吉・渡部篤郎によって滅ぼされ、とうとうお市の方も自害してしまいます。

寺に預けられた三姉妹は田舎娘の世話係、キク・メイサツキとともにスクスクと大きくなりますが、美人だった妹二人は信長の死後に天下を取った羽柴秀吉によって政治の道具として各地の有力大名にバーゲンセールされてしまい、茶々は独りぼっちになります。

娘時代の茶々、実によく似た子役さんを探してきたものです。少々獅子っ鼻の成人後に比較すると子供の頃のほうが美人だったような気がしますがそれはさておき。実際、三人の子役の奮闘ぶりはすばらしく、ここだけ切り取って1本作っても良かったんじゃないでしょうか?なにせ成長したあとがどえらく退屈だったので。

茶々は秀吉の側室に迎えられます。実はお市の方に惚れていたジジイの秀吉でしたが、血の繋がった娘のほうをモノにしました。ある意味、変態です。親の敵である男のところへ嫁ぐなんて!と思う茶々でしたが「傍にいれば何時でも殺せるじゃん?」と大蔵卿局・高島礼子にもアドバイスされて茶々は入城します。他の側室たちから馬鹿にされる茶々でしたが、毅然とした態度でこれを無視。しかし、一緒にくっついてきたキクがキレてしまい、彼女達にドロップキックをかましてキャットファイトに大勝利。以降、この美女と野獣に逆らう女はいなくなります。

せっかくカッコよかった和央ようかを台無しにした感じのメイサツキ(熱演でしたが)。ウケ狙ったんだとしたらそれは失敗、場内大失笑。

茶々にメロメロの秀吉でしたが、生まれた最初の男の子は大きくならずに死んでしまいます。ガッカリの秀吉。お得意のブタ顔で泣きわめく渡部篤郎のクサイ芝居に対して、表情が硬い和央ようかはタイトルどおりの孤高な感じがしてまずまずです。ま、最初から最後まで芝居には他の男優よりもはるかに堂々たる男気が溢れていましたが。

秀頼・中林大樹は美青年に成長します。貧相でこれまた芝居がクサイ徳川家康・中村獅童はこの若者にジェラシーを感じ、秀吉亡き後、一気に豊臣家を滅ぼすべく活動開始。秀頼の妻として、かつ、人質として、家康の孫である幼い千姫・佐々木麻緒が大坂城にいるのに、家康は戦を仕掛けてきました。成長した千姫・谷村美月はカッコいい秀頼と一緒に死ぬと主張していました。

家康は圧倒的な兵力で大坂城を包囲した上で和睦を提案します。しかしその条件というのが、大坂城の明け渡しとか、秀頼を地方大名へ左遷するというトンでもない内容。理不尽な要求を跳ね除けるために、秀頼のみならず、茶々までもが鎧に身を包んで家康の陣中へ馬を走らせるのでした。

茶々、ジャンヌダルクになるの図。さすが男役です、カッコいいです、ようか姐さん。でも、乗馬はどうしようもなく下手糞でした。この次は頑張ってね!

真田雪村・黄川田将也も討ち死にしてしまい、戦局の好転は絶望的です。茶々は城中の女たちを逃がします。秀頼は決死の突撃をかまして(え?)壮絶な戦死(はあ?)を遂げてしまいます。

多少の火薬にはびくともしない岸本乗馬センターのお馬さんたち、ナイスファイト!秀頼のほうは、どうでもいいです。実際に火薬使ってるところと若干CG?っぽいところがありましたがガンバル馬さんのほうに注目しており、人間のほうは全然見てませんでした、スイマセン。

おごうはおはつの仲介により大坂城で茶々に会います。人質返還に反対する大蔵卿局を制し、茶々はキクに命じて千姫を城外へ脱出させます。いよいよ最期の時が迫ります。大坂城を無傷で手に入れたいという家康の眼前で、茶々がいる天守閣が大爆発。戦に勝って、勝負に負けた家康。

火薬に点火したはずの茶々の周りを幼い秀頼と千姫が走り回ります。死んだはずの秀吉も笑顔です。そして、亡き母お市の方に迎えられて茶々はその胸に抱きとめられるのでした。

和央ようかはかなりの長身(渡部篤郎といい勝負します)ですので、そのまま原田美枝子に体当たりしようものなら、小柄なお母さんが吹き飛ばされるか、娘のほうがハグする形になってしまいますので、男役だからそれはそれでサマになるかも?ですが、和央ようかは一生懸命身体をかがめて抱きついていました。なんとなく微笑ましてくて良かったです。

久々にゴージャスなミニアチュア爆発を堪能しました。それと、信長の側近で黒人の人が出てくるのですが、これはウィリー・ドーシーへのオマージュでしょうか?オマージュされても困りますが、東映オールドタイマーズの頭に密かな電波が送られた模様。

それと、一つ気がついたのですが、字幕が無いと登場人物が誰だかさっぱりわかりませんでした。役者の面相が昔日の日本映画のようにヴァリエーション豊富ではないというのも一因でしょうが、俳優はともかく登場人物は歴史上、ソコソコのビッグネームのはずなのでシチュエーションから判断できるはずなのですが・・・TVは人類の脳みそを確実に退化させている現実を再確認した次第です。

2009年02月15日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2009-02-23