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黄金バット


■公開:1966年

■製作:東映

■企画:扇沢要

■監督:佐藤肇

■脚本:高久進

■原作:永松健夫

■撮影:山沢義一

■音楽:菊池俊輔

■編集:長沢嘉樹

■美術:江野慎一

■照明:銀屋謙蔵

■録音:内田陽造

■スクリプター:加太こうじ、田中真紀夫

■主演:

■寸評:

ネタバレあります。


アニメの黄金バットの放送はこの映画の後、らしいです。この映画で黄金バットの吹替えをした小林修はアニメにもスライド登板です。でも、ナゾー役の関山耕司のほうはこれっきりで重厚声質(参照「特別機動捜査隊(テレビ版)」)な島宇志夫になってしまいました。あんなに頑張ったのに・・・顔出てないけど。あと「ローンブローゾー」とも言いません。

惑星イカルスっていうのが突如、軌道を変えて地球に向かって突進してきます。

天体観測マニアの少年ケニア、じゃなくて風早アキラ・山川ワタルが警邏中の巡査・青島幸男に、惑星接近を報告するのですが、地球のピンチには興味が無い巡査に早く帰るように説教されてしまいます。ある意味、失意のアキラ君でしたが、突如、東映の東京撮影所の常連俳優で、顎の割れたハンサムな中田博久にそっくりなサングラスの男を筆頭に、いかにも技斗のカラミ役を得意としていそうなガタイの良いアンちゃんたちに拉致されてしまいます。誘拐されている最中なのにウトウトしてしまう大胆なアキラ君は、なんと日本アルプスの麓にある怪しい研究所へ連れて行かれるのでした。

そこには運動(だけ)は得意そうなヤマトネ博士・千葉真一と、お色気助手のナオミ姉さん・筑波久子、ハーフのエミリーちゃん・高見エミリー(そのまんまじゃんか!)がいて、その筋では有名な天文ヲタクだったらしいアキラ君は、その才能を買われて地球規模の正義を守るバール博士・アンドレ・ヒューズの研究所の隊員にスカウトされてしまいます。怪しい男達はここの隊員で、清水隊員・中田博久、中村隊員・岡野耕作、他多数なのでした。それならそうと、あそこまで怪しくする必要が感じられませんが、ま、いいや、どうでも。

イカルスの軌道は自然に変更されたのではなく、宇宙の大王ナゾー・関山耕司(カブリモノ)が「宇宙の生命体はナゾーだけでいいんです!」という夜郎自大な野望のために地球殲滅爆弾に仕立てたものでした。おまけに、イカルスの速度は自由に変えられるそうです。天文台が気がつかなかった惑星の異常をいち早くキャッチしていたバール研究所のヤマトネ博士は、惑星を破壊できる超破壊光線を開発していましたが、光線を発射させるために必要不可欠なレンズのための原石を探していました。

そんなん研究開発してるんだったら、正義もヘチマもあったもんじゃなく、死の商人の研究施設みたいな気がしますけど?ところで、ナゾーは貧乏くさいカブリモノの宇宙人でしたが、ナゾータワーはイカみたいでした。

ナゾーを追っていた調査機が消息を絶った海上で謎の大陸を発見したヤマトネ博士とバール博士。隊員たちは大火傷で死んでいました。そこは謎の大陸「アトランタス(アトランティスじゃないです)」でした。

ヤマトネ博士たちの前に現れたナゾーは、ジッパーが丸見えの戦闘員たちを差し向けますが、こいつらときたら持っている銃器をほとんど使用せずに、とても理系とは思えないガンアクションを展開するヤマトネ博士(七色仮面)と清水隊員(キャプテン・ウルトラ)にバカスカやられていきます。神殿の奥で不気味な棺を発見したエミリーちゃんが、中に収められていた気色の悪い黄金の(注:この映画はモノクロです)骸骨人間の胸に水をかけてあげると、たちまちゴムのマスクに歯ッ欠けでなんとも間抜けな黄金バットさん・小林修(声)が復活するのでした。黄金バットさんは、エミリーちゃんに指名権を与えて、コンタクト方法として黄金バットのブローチをあげるのでした。ついでに巨大なダイヤモンドも汚いグローブに抱えていた黄金バットのおかげでレンズもゲット。

超破壊光線装置が完成します。試し撃ちに利用されたのは、ナゾーの偵察衛星でした。自分から先に手を出しておきながら、ちょっとでも反撃されるとブチ切れるというどこかの大国のように、頭に血がのぼってしまったナゾーは、三人の幹部、ケロイド・沼田曜一、ピラニア・国景子、ジャッカル(っていうか狼男?)・北川恵一に、超破壊光線装置の強奪を命じるのでした。地球をぶっ壊すだけでなく、新たな兵器もゲットしようだなんて、一見するとキレやすくて馬鹿っぽそうなナゾーですが、案外と悪賢い奴です。

ナオミ姉さんの姿を複写したピラニアは、エミリーちゃんに急接近。先に誘拐しといて、ケロイドが化けたバール博士と涙の再会をさせます。しかし、ナオミ姉さんが盗んだ超破壊光線装置には肝心なレンズがありませんでした。怒り狂うナゾー、ですがあきらめません。バール博士がケロイドの正体をあらわすと、今度はエミリーちゃんまでも誘拐します。バール博士の目前で首絞め拷問されるエミリーちゃんに「地球と全宇宙の平和のために死んでくれ」と言わんばかりのバール博士。しかし、ナゾーは殺しませんでした。「まだ利用価値がある」ってことらしいです。

別にエミリーなんて殺しても良かったんじゃないの?と思いますが?どうなのかしら?おまけに黄金バット呼び出し用のコウモリさんも鳥かご(何のヘンテツもないフツーの鳥かご)に囚われるの身だし。

偽ナオミ姉さんとして作戦続行中のピラニアも正体を暴かれます。地球の自動車で逃走するピラニア。追跡してきた清水隊員たちも拉致して意気揚々とナゾータワーに帰ってきますが、レンズは見つからなかったので責任とって死刑にされます。人質には手加減するナゾーですが、直属の部下には容赦ないナゾーです。

レンズは黄金バットが持ってました。ナゾータワーから次々と突き落とされ、人形のようにコロコロと惨殺される隊員たちを見かねたヤマトネ博士は、とうとうレンズをナゾーに渡してしまいます。ところが惑星イカルスの接近が早すぎました。ナゾーが速度をアップしたからです。地球の爆発に巻き込まれては大変と、慌てて脱出準備をするナゾーでしたが、ジャッカルが操縦していた空飛ぶ潜水艦を奪った黄金バットがナゾータワーを攻撃したため、ロケットにもなるタワーが飛行不能になってしまいます。

ああ、なんて間抜けなナゾー。怒り狂うナゾーはバール博士、エミリー、ナオミ姉さんを腹いせに処刑しようとします。そこへ黄金バットが現れ、最後に残った高級幹部のケロイドとその手下たちと銃撃戦をします。まるで「地獄」にあるような針の山(正確には剣の床)でヤマトネたちの行く手を阻んだケロイドでしたが、黄金バットの正義の杖をボディに食らってあえなく絶命。せっかくの剣の床も黄金バットに軽くいなされてしまいます。

ビルの屋上に超破壊光線の発射台を設置したヤマトネ博士は、目測だけで惑星イカルスに照準を合わせて超破壊光線を発射。イカルスは大爆発。惑星の急接近状態での爆破について「ディープインパクト」を予見したような、災害予測を立てていたヤマトネ博士の心配は全然大丈夫で、完全無傷の地球。

いよいよ黄金バットとエミリーちゃんはお別れの時を迎えます。って、別に死ぬわけじゃないですが、きっとまたどこかで眠っていて、続編のときに起きるつもりなんだと思います。

この映画の見所は、白のタートルネックがオシャレだったこと、カットソーやニットの裾はズボンの中に入れるのが普通だった当時のファッションセンスと、沼田曜一のキレっぷりです。いやあ、ソフトパーマにラメを散らした素敵なヘアスタイル、歌舞伎の隈取を取り入れたメイク、いちいち身体をこわばらせる過剰なパフォーマンス。どれをとっても、誰にも真似できない、ていうかコピーされたという設定のアンドリュー・ヒューズが同じ演技要求されたらかわいそうだろう!と思われるくらいのクレイジーぶりが、本作品のあらゆる欠点を帳消し、というか雲散霧消してくれます。

ありがとう!沼田曜一!そして、二度と復活するなよ、黄金バット!次は「ケロイドの復讐」くらいなイキオイがあればさらに東映馬鹿でしたが、やっぱないか・・・。

2009年01月25日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2009-02-01