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四つの恋の物語(1966年)


■公開:1966年

■製作:日活

■企画:坂上静翁

■監督:西河克己

■脚本:三木克巳

■原作:源氏鶏太

■撮影:岩佐一泉

■音楽:池田正義

■編集:鈴木晄

■美術:木村威夫

■照明:森年男

■録音:秋野能伸

■主演:芦川いづみ

■寸評:

ネタバレあります。


四姉妹の、四姉妹による、四つの恋の物語かと思いきや。

現代劇を見る楽しさの一つは、その時代の風俗を疑似体験できることです。退職慰労金が250万円とかの生活感もさることながら、自動車や新幹線などの交通事情、当時のオシャレなファッションセンスが意外と古さを感じないのも新たな発見です。

三沢平太郎・笠智衆は美人四姉妹、一代・芦川いづみ、二美子・十朱幸代、三也子・吉永小百合、志奈子・和泉雅子を男手一つで育てて、本日無事に定年退職。同僚たちの送別会は年代的に軍歌のオンパレード。料亭のお色気女中の玉子・横山道代のモーションにお父さんの心はクラクラしますが、バツイチ長女は堅実なOL、次女はイカす町工場の社長の息子・藤竜也と婚約中、三女は馬鹿陽気、四女はヴァイタリティー溢れる性格。四姉妹は誰一人不良の道を歩むことなくスクスク成長して、お父さん、多少の不安はありつつも大満足。

次女はタイピスト、三女は電話交換手、長女までもがお父さんが勤務する(お父さんの最終役職は課長)会社で働いていて、四女は自社ビルと思われる建物の近傍(テナント)の花屋の店員。娘三人を情実入社させるとは、なかなか凄腕の課長だと言えるかも、このお父さん、侮れません。それとも、おそらく戦後のドサクサ紛れに色々と社長の弱みとか握っていたのかも。と、考えすぎではありますが。

250万円の退職金を娘とお父さんとできっちり五等分。それぞれが責任を持って今後の人生を歩むようにと言い残し、お父さんは「自由に憧れて」夜遊び解禁。次女は婚約者の会社がピンチなので早速融資に充当。長女は結婚生活に幻滅し、馴染みのマダム・白木マリの勧めで喫茶店の開業を検討中。四女は元手を競馬で増やし、グライダーの操縦にも挑戦、人生をすこぶるエンジョイ。

戦時中疎開していた先の息子、隆太郎・浜田光夫は学生運動なんかしていて就職も決まらず経済力がありません。心配した田舎の母親・賀原夏子は、四姉妹の仲で一番仲良しだった三女を嫁にしたいとお父さんに相談しに来ます。三女としてはまんざらでもないけれど、ちょうどお父さんの会社の重役の令息・関口宏からも言い寄られて舞い上がっていた真っ最中。経済力を取れと勧める長女のアドバイスに説得力を感じつつも、チンピラに絡まれている女子高校生を助けて刺されたり、就職先の組合工作が露呈してリンチにあったりする、馬鹿正直というよりも人生全般に不器用な隆太郎に母性本能が刺激され、大いに悩む三女です。

他の姉妹にもドロドロ発生中。長女はロマンスグレーと不倫関係。次女は婚約者を借金のカタにセレブ美女・浜川智子(浜かおる)に略奪されてしまいます。時代が土曜ワイドなら、長女は相手に離婚を迫って心中または返り討ち、次女は最後の思い出作りのホテルで無理心中または返り討ちというのが相場。女中さんとのアバンチュールに夢中なお父さんはそんなこととはつゆ知らず。肩寄せあって暮らしてきた父一人娘四人、家庭崩壊の大ピンチ。

しかし本作品は日活作品であって、決して大映作品ではありませんでした(意味ないけど)。

三女は金持ちボンボン特有の慇懃無礼なデリカシーの無さに失望、おまけに両親は明らかに身分違いを馬鹿にしていて鼻持ち悪く、身の丈にあった恋愛がなによりと、怪我をした隆太郎とゴールインの予感。長女は不倫関係を清算し、四女と資金を折半して喫茶店開業を決意。三女は婚約者とキレイに分かれて屋台でおでんをパクパク。お父さんは女中のモーションが退職金狙いとわかって夢から覚める。そして最も安定していた四女はグライダーの免許を取得して女性冒険家としての将来が開けるのでありました。

最後(四女のその後)はウソですが、ま、ざっとこんな感じで、恋の物語の主人公は長女・次女・三女・お父さんの四人なのでした。 四女だけが妙に実人生とシンクロしていて笑えますが、もちろん当時はその後に極地冒険に旅立って姫ダルマのような体形になってしまうなどまったく想像もつきません。

美人はいいですね、女優は、やっぱりキレイなほうがいいです。不美人には説得力が必要ですけど、美人には無言の説得力があります。登場する四人の個性は、日ごろ女優にまったく興味が無い観客(筆者ですが、何か?)にも、他に観るところがないんで仕方ないんですけど、アップ多様でありながらもその表情の美しさと豊穣さがドラマチックで楽しめました。

芦川いづみはアダルトな雰囲気で憂いのある横顔のショットが素晴らしく、十朱幸代の豊かな表情の変化は自動車の中で藤竜也とのシーンで余すところ無く描かれ、和泉雅子はクルクルと頭の切れる元気印が目の表情の変化で瑞々しく、吉永小百合の屈託の無さは呆れるほど。軽薄なドラマは彼女達の実力には不釣合い、ドロドロ一歩手前で踏みとどまる、とどまり方も三者三様。

気になったのは、芦川いづみの肌荒れが酷かったこと。実生活で何かあったんでしょうか?やはりタバコは身体に悪いのかも。バーで並んでいた十朱幸代の肌がピッチピチだったので余計に目立ちました。それと、吉永小百合の剥くリンゴの皮が信じられないほど厚くて残った実が2/3くらいになってたこと。子役スターですから家事なんてやったこと無かったんでしょうか?包丁さばきはスルスルとしているので、単に性格がアバウトなだけかも。そういうところもカワイイ!って奴ですか?

2009年01月12日

【追記】

※本文中敬称略


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file updated : 2009-01-18