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パレンバン奇襲作戦


■公開:1963年

■製作:東映

■監督:小林恒夫

■脚本:棚田吾郎

■原作:

■撮影:星島一郎

■音楽:木下忠司、軍歌「空の神兵」

■編集:田中修

■美術:田辺達

■照明:神谷与一

■録音:岩田広一

■特撮:矢島信男

■主演:丹波哲郎

■寸評:

ネタバレあります。


体制側である軍関係者だけでまとめずに、にわか軍属のフリーランス(強力助っ人)を加えたことで柔軟性を出したつもりの任侠映画風味は好みの分かれるところ。ただしその助っ人が丹波先生というところが最大にして唯一の見どころ。

マレー半島にあるパレンバン製油所。これから南方へ勢力広げたい日本としては何としても欲しい製油所(協力:日本石油)なので、これを奪回するために、本隊が奇襲したとき占領しているオランダ軍が製油所を爆破しないようにする、特殊工作隊員の活躍。

本土からせっつかれているパレンバン製油所の奪回作戦については「本土の応援無しにはちょっと無理だな」と常識的な判断をしている現地の隊長・神田隆、以下、大尉・梅宮辰夫、中尉・南廣、ら。そこへ参謀本部からいかにも冷酷そうな中佐・佐藤慶がやってきて尻たたきします。隊長は、野尻中尉・江原真二郎に工作部隊の編成を依頼。軍隊バリバリの軍曹・織本順吉、飲んだくれの伍長・山本麟一、現実派の兵長・今井健二、スケベな上等兵・潮健児。体力だけはやたらとありそうですが、コンプライアンス的には明らかに失格そうな連中に、たまたまパレンバンで技師をしていた砂見・丹波哲郎が無理やり軍属扱いで協力することになります。

砂見は軍隊が嫌いなので「俺は軍人じゃない」と何度も言うし、訓練はダルダル、野尻にいちいち反抗的ですが、背に腹はかえられず、現場に詳しい彼の立場が強いので皆我慢します。いよいよ出発、隊員たちは密かにパラシュート降下しますが、砂見はパラシュートをほったらかしにしてしまいます。極秘作戦なのでそりゃマズイだろうということで、兵長と一緒に回収を命じられますが、兵長はあっさりと砂見に買収されてしまうのでした。

おかげさまでオランダ軍に発見された一同はジャングルに逃げ込みます。途中で伍長が負傷しますと、早速に「足手まといだから置いていく」と言い出す軍曹。当然、砂見の軍人嫌いが爆発しますが、その原因を作ったのは本人でもありますので、心中複雑です。一同は原住民の祭りに紛れ込んだのは良かったのですが、後からオランダ兵がやってきて首実検を始めます。万事休すと思ったら、現地の若者(協力:在日インドネシア学生会)が、住居に匿ってくれたのでした。

そこにはインドネシア独立を目指す活動家がいて「オランダのあとは日本が自分たちを占領するんじゃないか?」と懐疑的でしたが、野尻は「日本がインドネシアの独立を助ける」と本気で真面目に説明したので、一度は信用されたのですが、逃げる途中で伍長がうっかり傷つけてしまった現地の若者がオランダ兵にチンコロしてしまいます。活動家のリーダーは男気のある奴だったので野尻たちを逃がして、オランダ兵を迎撃してくれますがあえなく全滅、負傷した伍長も戦死します。責任を感じる野尻ですが、なんともしようがないのでした。

製油所近傍のトーチカに来た一同。戦車とか武器とかは充実しているオランダ軍ですが、身体能力はあまり高くなく、ナイフとかであっさりと倒されます。オランダ軍の服をゲットした一同は、赤十字のジープに乗り込んでさらに進軍。途中、トーチカの異常に気がついた本隊から電話がかかりますが、砂見の流暢なオランダ語でなんとかセーフでした。

丹波先生のオランダ語のスキルは不明ですが、丹波先生が自信満々で喋ると存外な説得力があるため、あまり細かいことは気にしなくていいような気がします。これも人徳と言えましょう。

ところがスケベ上等兵が、検問所のところで、金髪美人のヌードピンナップをからかったオランダ兵に日本語で文句を言ったので正体がバレてしまいます。なんという間抜けなのでしょう。というより、すでに砂見や野尻の顔をまともに見ているのに、オランダ軍の服着てるからってあっさり見逃すオランダ兵って一体?現地人のハーフだろうくらいに思ったのでしょうか?馬っ鹿じゃねえの?オランダ兵。ちなみにこの逃亡劇の最中、原因となった上等兵が憤死します。

パレンバン製油所のすぐ近くの教会に逃げ込んだ一同はそこで美人シスター・フランソワーズ・モレシャンに発見されますが、相手は非暴力なクリスチャンなので「乱暴しない」「製油所の爆破を止めて近隣住民に迷惑をかけない」という約束をして隠れさせてもらいます。砂見は爆破装置のありかを調査するために、製油所の職員の溜まり場であるバーに潜入、そこで日本人とオランダ人のハーフであるがゆえに差別されている美男技師(元同僚)のケッスラー・岡田眞澄に出会います。技師としてのプライドで生きている彼は製油所の爆破を止めたいということで砂見たちに協力します。しかしオランダ兵たちが教会にやって来ます。シスターの計らいで一度は逃げましたが、結局、一同は捕まって拷問されます。

スッピンでオランダ兵がうようよいるバーに行く砂見。面が割れてるはず、だから怪しまれなかったとも言えますが、すでに日本軍の潜入を知っているはずのオランダ軍がここまで無防備というのはどうなんでしょう?つくづく、相手のチョンボに助けられまくりの野尻たちなのでした。

鞭打ち拷問にも耐えて、またもや肉弾戦に弱いオランダ兵をあっさりと片付けた一同。ついにパレンバン製油所へ突撃します。爆破装置のある部屋の寸前までたどり着きますが、ここで最も頼りになっていた兵長がカッコよく死んでしまいます。今井健二、極めて珍しい、惜しまれながらの戦死でした。

オランダ軍の指揮官から命令された製油所爆破に抵抗したケッスラーでしたが、あっさり射殺。野尻と砂見を援護した軍曹は機関砲を握り締めたまま死亡。ついに砂見と二人きりになった野尻は被弾しつつも活躍、ついに砂見が爆破装置を破壊します。しかし作戦成功の目印である発炎筒を炊かないと、本隊が降下できません。負傷した野尻に代わって、砂見が製油所のタンクのテッペンに向かいますが、発炎筒に着火したところで銃撃されてしまい、(丹波先生のお人形が)転落死します。

パレンバン製油所の奪回に成功した隊長に、野尻は部下の一人一人の戦死を告げるのでした。

教会で出会う、モレシャンとファンファンは外国映画のようで素敵でしたが、そのファンファンに引けを取らない、肩幅ガッチリの外人体系で彫りが深いマスク、しかも偉そうでなく、細いハシゴをするする上がって行く運動性能バッチリでワイルドな魅力炸裂の丹波先生のお姿には、現代の若い婦女子の腰もグラグラになるのではないかと期待されます。

誰にでも若いときはあったのですよ。ほら、そこ、セリフほとんどないけどまだ痩身な梅宮辰夫とか、ね。

大量のパラシュートが降下する絵柄は、ちょっと水クラゲの大群を思わせてノンビリしますが、降下しているところは無防備なので、撃ち殺されたり、せっかく着地しても銃撃されたり、鉄条網までたどり着いたけど、肘から先の腕を残して千切れちゃったりと、凄惨を極める奪回作戦の結末。

ジャングルのロケは難しいですね、日光と植物だけは誤魔化せませんね、端から現地ロケなんて期待しませんけど、どう見ても日本ですね。飛行機はどうなんでしょう?ミニアチュアと本物が入れ替わり立ち替わりという感じで、なんとなくカッコよかったですけど。なんといってもパラシュート降下が本物ですから、そこは感動しました。まさか製油所に落下するわけなので、そこだけ、マット画の上にセル画載せて動かすんですけど、それがまあなんともはや、紙芝居屋さんみたいで笑いました。

単純な反戦映画ではなく「プロセスは悪かったけど人間(日本人および日本人に協力した人たち限定)は悪くなかった」という主張が、最後まで鼻につきます。

有り物流用のお安い感じでしたが、丹波先生と今井健二がカッコよかったからいいや。

2009年01月10日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2009-01-12