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ポルノの女王 にっぽんSEX旅行


■公開:1973年

■製作:東映(京都)

■企画:天尾完次、三村敬三

■監督:中島貞夫

■助監督:篠塚正秀

■脚本:金子武郎、中島信昭

■原作:

■撮影:国定玖仁男

■音楽:荒木一郎

■編集:神田忠男

■美術:雨森義允

■照明:金子凱美

■録音:溝口正義

■特殊メイク:

■主演:クリスチーナ・リンドバーグ

■寸評:

ネタバレあります。


本作品の主人公は「もぐら」とあだ名される地味な青年です。才能はありますがセンスはゼロ。ほぼ童貞のくせに最初の女が金髪娘、ところが意外なほどセックスが上手いとうアンビバレンツ。しかし、やっているのが荒木一郎なので何の違和感もありませんでした。むしろ、荒木一郎ならそうだろう、いや、そうでなければ。

京都でニコヨンをしている五味川一郎・荒木一郎の趣味は爆弾製造。当然、まったくモテません。スカした眼鏡とか買って女の子を必死にナンパしようとしますが、変態だと思われたり、面と向かって爆笑されてしまったりと、散々な目に遭います。ところが明らかに自分よりもブサイクな仲間のセックス話を聞いてどうでもいいようなジェラシーを感じた一郎は、東京へ行けば女を抱ける、しかもイイ女が入れ食い(らしい)という誇大な幻想を抱いたまま、羽田国際空港へおんぼろ車をかっ飛ばして到着します。

この猪突猛進が、一郎にとっても、この後に登場する外人娘にとっても悲劇の始まりなのでした。

空港だからといって別にスッチーなんか、一郎にとっては高嶺の花。どうしたものかと一郎がウロウロしているうちに、巨乳の金髪娘がグイグイと車に乗り込んでくるという奇跡に遭遇してしまいます。状況がよくわからぬまま娘を乗せて一気に京都へ向かう一郎。実は彼女と正しく出会うはずだった人物は、角刈りにサングラス、あきらかに暴力団風の男たち・川谷拓三片桐竜次なのでした。

後に倉本聰のドラマで演技派に転向する殴られ系チンピラ役専門の俳優と、さらに後に警察お偉方を演じるまでに出世する乱射系チンピラ役専門俳優の最強コンビは、日本語がまったく理解できない、つまり車のナンバーに書かれた漢字なんてチンプンカンプンな金髪娘の勘違いで大切な取引をオシャカにされてしまうのでした。

金髪娘はスウェーデン出身のイングリット・クリスチナ・リンドバーグ。得体の知れない外人のオープンな雰囲気に最初は気圧されていた一郎ですが、バラックのような彼の自宅に入ったとたん、これは明らかにヤバイと抵抗を開始したイングリット嬢を裸にひん剥いて、泣き叫ぶ彼女にボディブロー連打、動きが鈍くなったところへ横っ面へ往復ビンタ、おいおいどうしたんだ?って感じでアグレッシブになった一郎は、たぶん童貞っぽいはずなのに、イングリット嬢を押さえつけて、片手でするすると下着まで脱いでスラスラとセックスを完了してしまいます。

なにか吹っ切れた感じの一郎は急にふてぶてしい野郎へと大変身。逃亡を阻止するためにイングリット嬢を素っ裸にして椅子に固定。「コレクター」のテレンス・スタンプも真っ青の倒錯愛に目覚めた一郎でしたが、所詮は人のイイお馬鹿さんなので、三度の食事に入浴、シモの世話までイングリット嬢に至れり尽くせり、ただし丸裸で猿ぐつわに鎖つきという事を除いては。

なにせ言葉が通じませんし、一郎はそんなに変態ではない(やってることはド変態というかすでに犯罪)のでせっせと彼女の好みの料理を試みたり、好きそうなお洋服を準備してあげたりするわけですが、そんなもん素っ裸にされてるイングリット嬢にしてみれば「馬っ鹿じゃないの」レヴェルなので、なかなか打ち解けられない二人なのですが、徐々にセックスが二人の仲を取り持っていくような流れとなっており、さすがスウェーデンのヒトはセックスが共通言語なんだね!と、スウェーデンのヒトが聞いたら確実に怒られそうな展開で二人はちょっとだけ良い感じになっていきます。

一郎は窓に目隠しの板を打ち付けて、玄関には南京錠。そんなことをしていれば周囲も不審に思います。大家と思われるオバサンにバレそうになったので、一郎は彼女が持ってきたスーツケースと彼女を一緒に川へ捨てようとしましたが、偶然通りかかったパトカーにおびえて、荷物のみ捨てて、またボロアパートへ戻ってきてしまうのでした。小心者のくせにやることは大胆という、極めて危険な一郎に、イングリット嬢は「こんな奴、死ねばいいのに」くらいの憎悪を感じるのでありました。

イングリット嬢は一郎の隙をついてアパートから逃走。ヒッピーが集まる穴倉バーに連れて行かれた彼女は、スウェーデンのフリーセックスに共鳴しているとかなんとかテキトーこいてる男達に犯されてしまいます。「フリーセックスと公衆便所は違うわ!」と、そんなことをイングリット嬢が思ったかどうかは知りませんが傷心のイングリット嬢は夜明けの町で一郎に遭遇。「日本の男はみんなセックス馬鹿なのね」と悟った彼女は、その中でもいくらかマシな(そうだろうか?)一郎のアパートに連れて帰ってもらうのでした。

しかしそんなシアワセな時間は長くは続きませんでした。川へ捨てた彼女の荷物の中から大量の麻薬が発見されており、彼女は何も知らずに小遣いもらって運び屋にさせられていたのであって、当然のことながら暴力団風ではなく本物の暴力団だった男達は血眼になって彼女を追っていました。警察も同様で、大家さんの通報により暴力団よりももっと喧嘩が強そうな刑事・岩尾正隆がすでに一郎のアパートを突き止めていました。暴力団たちがイングリット嬢を取り返しに来ました。一郎は抵抗しますが、ボコられて血まみれ。そこへ警察が乗り込んできてイングリット嬢を連れて行こうとします。一郎は刑事たちに爆弾を投げつけますが、大切なときに不発。一郎が絶望した瞬間、大爆発が起こるのでした。

タイトルの「ポルノの女王」というのはクリスチナ・リンドバーグのこと。東映のポルノ外人(って凄い呼称ですが)と言えばサンドラ・ジュリアンと彼女が双璧らしいですが、美人度ではサンドラ嬢のほうに軍配があがるというのが世間の常識かと思われます。どういう世間かは知りませんけど。才能はあるのにセンスが悪い、それって荒木一郎そのものでもあり、ダメ人間映画の巨匠・中島貞夫とのゴールデンコンビは不滅なのであります。しかし、タイトルにも全然センス感じませんね、いやはやまったく。

2008年12月14日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2008-12-14