ボディジャック |
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■公開:2008年 ■製作:有限会社アリックスジャパン、株式会社ベンテンエンタテインメント ■製作:佐々木秀夫 ■配給:太秦株式会社 ■監督:倉谷宣緒 ■助監督: ■脚本:藤岡美暢 ■原作:光岡史朗 ■撮影:早坂伸 ■音楽:水澤有一 ■編集: ■美術: ■照明: ■録音: ■特殊メイク:梅沢壮一 ■主演:高橋和也 ■寸評:田宮二郎さんと浜田晃さんの大柄ジュニア対決。 ネタバレあります。 |
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これは現代(平成)の話なのでしょうか? だとすると年代的に不整合かも。日本で学生運動が盛んだった頃、ヘルメットに顔面タオルの学生さんたちが校舎の屋上に植木鉢を並べて、当然ですが観賞用ではなくポリ公めがけて投げつけるための武器ですが、身構えていたのは昭和40年代。そこから20年後ということはバブル絶好調の昭和60年年代のはず、ということは本作品の舞台は平成二十年よりもさらに二十年前であると思われるから。つまり平成で語るなら定年間際のジジババでないと。それと、看板のゲバ文字にも違和感。刷毛またはガムテで一気の直線で構成されていなければなりません。セリフやウロコが付いてちゃダメです。学生運動は本当に、劇中の台詞のように「化石」になってしまったようですね。 広告代理店のコピーライターをしている澤井テツ・高橋和也は左翼くずれの中年男。毎晩、中途半端な浅川マキ似のママ・美保純の経営する飲み屋で飲んだくれていますが、妻の玲子・星ようこ、娘の奈々・松岡茉優を愛するマイホームなパパでもあります。最近、通り魔が増えているので年頃の娘を持つパパであるテツはちょっと心配です。 酔っ払って家路についたテツは、土佐源氏のようなホームレス・坂本長利とすれ違いザマに強烈な光を浴びます。その日以来、テツの身体の中に別の人格が宿ります。そいつはお侍さんで、ヒゲ面の長身。なかなかハンサムですが、テツにしか彼とコンタクトできないし、彼の声は周囲には聞こえないので、テツは多忙な状況も相まって不気味な「独り言おじさん」になってしまうのでした。 テツをボディジャックした幽霊・柴田光太郎は、同じく転生していろんな人の身体を借りて人殺しをしているもう一人の幽霊を探したいと言うのでした。テツにとってははた迷惑な話ですが、武芸の達人である幽霊のおかげで、因縁つけてきた若造を一撃で倒してしまうというお得な点もありました。拙い土佐弁と幽霊が経験した切腹シーンのビジュアルを手がかりに、テツは助手のジョーチン・安藤希の協力を得て、彼の正体が武市半平太であることを突き止めます。武市は自分の野望のためにヒットマン役となり、武市の手で毒殺されかかり、ついに処刑された岡田以蔵・浜田学の霊を探しているのでした。 テツのゲバ棒仲間の吉岡・吉満涼太が通り魔事件の犯人として逮捕されます。そのニュース映像に青白い不気味な影がダブります。以蔵の霊は悪霊(あくれい)となり、頻発する「動機なき殺人、衝動殺人」を引き起こしているのでした。 「スタートレック(放送当時「宇宙大作戦」)」のエピソード「惑星アルギリウスの殺人鬼」に登場するエイリアンと似てます。悪霊は善良で心の強い人にはボディジャックできません。心にスキのある人や、邪悪な劣情に駆られた人間にだけボディジャックできます。 以蔵はテツのボディジャックを見破り、武市への復讐のためにその身代わりとなっているテツの家族を狙います。奈々は優男にストーキングされており、テツの後輩はどうやらジョーチンにフラれたらしくひょっとしたらジョーチンを恨んでおり、さらにテツの妻である玲子は美人ゲバ学生として早世した姉とテツの仲を邪推しており、さらに清純そうだったジョーチンは実は色仕掛けで男をたらしこむ雌狐だったりなんかして。テツの周囲には悪霊にボディジャックされそうな士官候補生がいっぱいいるのでした。 ついに悪霊が正体をあらわします。以蔵にボディジャックされた「真犯人」がテツの家に押し込んで玲子を人質にします。間一髪でテツがかけつけますが、そのとき時空を超えた世界で武市と以蔵が対決します。ボディダブルを交えて、映画俳優のジュニア同士の対決、ただし体躯はジュニアではない大柄な二人がトリッキーで運動神経抜群の殺陣を繰り広げます。ユルイ映画の空気感が一気にシャープになるのでちょっと驚きますが、ここんところは最大の見所です。勝負は武市に有利となりますが、以蔵の飛び道具で一気に形勢逆転。そこへ突然姿を現したのは、幕末のヒーローであり、以蔵が心酔していた坂本竜馬(の霊)・笠兼三でした。 と、ここまではうっすらと先が読めつつもハラハラドキドキで展開もテンポも良い感じでしたがこの後が宜しくない、というより個人的には浮きまくりでした。ついでに回想シーンで、玲子のセーラー服姿も対応に困りました。「この子の七つのお祝いに」のお志麻さんもビックリです。星ようこファンの皆様には申し訳ないですが、もう少しメイクでなんとかできたと思うので特筆しておきます。 学生運動と明治維新が同列かのような取り扱いは左翼臭がキツすぎてどうにもこうにも身体が受け付けません。それに「剣をペンに持ち替えて革命をおこす」というのも如何なものか?というよりも「お前何様」という印象が拭えません。最後の10分、最終ロールで語りまくる映画は嫌いというか、SFアクション時代劇の前半のムードをぶち壊し気味のオルグ演説はご勘弁なので、終盤が実に惜しいです。 岡田以蔵役の浜田学は東映東京のタフガイ(ちなみにナイスガイは中田博久、筆者認定)・浜田晃の息子、武市半平太役の柴田光太郎は田宮二郎の息子、ついでに坂本龍馬の笠兼三は笠智衆の孫です。いつから映画俳優は世襲制になったのか?とでも言いたくなりますが、そろそろオヤジの七光りのホトボリもさめて、いい感じになってきた三人です。笠は名前が足かせかもしれませんが気にせずに、浜田のお父さんを知っている人はかなりコアですからある意味楽ですし、柴田はオトボケ司会者(?)という華麗な二面性で順調に人格が形成されつつあります。日本映画に映画俳優が不足している現状を憂う観客としてはこの三人の今後がつくづく楽しみです。 男闘呼組の高橋和也(当時・高橋一也)はすっかり下っ腹の出たオヤジになってしまいましたが、私生活では少子化日本の救世主とも言うべき子沢山の素敵なパパのようで、なによりです。 最初は映画のほころびだけに目を奪われてハラハラ(本当はイライラ)しましたが、後半(ただし左翼オヤジのボヤキ節全開部分は除きます)、岡田以蔵ファン(昔の大河ドラマ「勝海舟」のショーケン参照)としては、かなりウルウルしてしまいました。SF時代劇としてはかなり上質だと思うので、そこに注目して楽しんでいただければ、と思います。 男が齢四十ともなれば同窓会で話題は「デブ・ハゲ・ビョーキ」の三大話。そんなくたびれた中年=オヤジがしっかりすれば、ガキが人殺して全然平気という狂気の時代も変えられるはずなんだという人生の応援歌的映画でありました。 (2008年11月23日 ) 【追記】 |
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※本文中敬称略 |
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file updated : 2008-11-24