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暗号名 黒猫を追え!(コードネーム ブラックキャットをおえ)


■公開:1987年

■製作:Uプロダクション

■配給:

■企画:上住忠彦

■製作:千葉哲也、沼田芳造、船津秀恒

■監督:井上梅次、岩清水昌宏

■助監督:富永憲治

■脚本:河田徹(井上梅次)

■原作:

■撮影:梁井潤

■音楽:都倉俊一(主題歌:伊藤愛子)

■編集:飯塚勝

■美術:筒井増男

■照明:小中健二郎

■録音:谷村彰治

■特撮:

■主演:柴俊夫

■寸評:

ネタバレあります。


生き馬の目を抜くような芸能界で、青春スター(死語ですが)が健全な発育を遂げるのは実に難しい。人はそこに郷愁とか、悲哀とか、二度と戻ってこない何かを発見することであろう。

特撮変身ヒーローと、特捜最前線(および、トミーとマツ、そして、二人の事件簿)と、NHKの朝ドラ出身者が、北の国から来たスパイと戦う話。スパイ防止法の啓蒙映画と言うタブー、おまけにハッタリの効いた演出では右に出る者がいない(誰も出たがらない)井上梅次が監督とくれば、いやがうえにも期待が増す。

アレコレと公開が長らく実現しなかった本作品の背景は複雑らしいが、ソ連(当時)と北朝鮮(当時〜現在)が伏字にもなっていない伏字で登場することや、スパイ活動を具体的に取り締まる法律がないため「スパイ天国」「情報取り放題」と馬鹿にされていたことを悔しいと思った人々の後押しがあったにも関わらず、結局のところ「ハゲにハゲと言ったら怒られる」の理の通りに当事者たちの反対やら見えざる敵の皆さんのおかげで二十一世紀にやっとこさ不特定多数対象の劇場公開と相成った次第。

ちなみに筆者はDVDで鑑賞。ちょっとその、上映会場に行ったんだけどそのスジの猛者のような人たちが多かったので個人的にドン引きだった故。

同じ大学のラグビー部(後輩・内藤剛志)に所属していた、野々村・柴俊夫@シルバー仮面は警視庁の若輩警視。吉野・榎木孝明は弱小だった商社を大手企業に成長させた立役者として今や重役に出世。高松・国広富之は新進気鋭のジャーナリストで人気雑誌の編集長。ヒゲもじゃで一見すると某新興宗教の元教祖に似ていないことも無い(以下、自粛)大田黒・高岡健二はフリーターでありながら貧困救済を訴える人道的な活動家として低迷中。それぞれに社会的な地位を確立していたりしていなかったりするが、幼くして父が行方不明になった吉野、女房が長患いの高松、万年貧乏の大田黒、と抱える事情は様々でもある。

その頃、某(だから「B」)連邦から送り込まれたらしい暗号名(コードネーム、と読む)「黒猫(ブラックキャット、なんか暴走族のチーム名みたいだが)」が日本で暗躍中であった。警視庁で野々村が率いる外事課アジア方面捜査チームは精鋭揃い。上司の中田・本郷功次郎をはじめ、谷・荒木しげる@仮面ライダーストロンガー、 坂本・三ツ木清隆@光速エスパー、加藤・真夏竜吾@ウルトラマンレオ、これだけのヒーローを集めておけば勝ったも同然。隣の課には欧米方面担当の三上・新藤栄作も在籍。ところが黒猫の正体はなかなかつかめない。暗号の乱数表も最近変わったらしいし。

高松の妹・音無真喜子はカメラ店を営む島田・伊吹剛という真面目な男と事実婚、子供もいるのだが、なぜか未入籍。お兄ちゃんの高松としてはそこんところが気がかり。しかし気がかりな事は実は他にもあって、なぜか島田は自衛隊の基地とか裏日本の海岸線を撮影するのが大好き。名前もコロコロ変えているし、軍事産業系の企業に就職していたときに機密文書の持ち出しでクビになっているし。仕事場と称する現像室にはなぜか無線機まであるし。

救済活動のために借金の申し込みに来た大田黒に白人男性の後援者を紹介した高松。その直後、今まで貧乏一直線だった大田黒に、今度は中国系の実業家・川合伸旺が援助を申し出る。慣れない大金を目の前に積まれて有頂天の大田黒、おまけに金髪美女の秘書までゲット、夜も昼も充実した救済活動にまい進する大田黒であった。

しかし双方のスポンサーから諜報活動まがいの情報提供を求められた大田黒は、一度は不審に思ったが、本編とは何の脈絡も無く乳首丸出しのシャワーシーン(なにせ監督が井上梅次ですから、土曜ワイド「明智小五郎・美女シリーズ参照」)も全然平気な金髪美女の身体を張った癒しに、彼の警戒心もトロトロにされてしまうのであった。

警視庁のマークが島田に急接近。某半島からの密入国者でごったがえす(大島渚の「帰ってきたヨッパライ」参照)能登地方の出身だった野々村の実家では、兄弟同然に育てられた化粧の濃い妹・中島ゆたかと実兄・森次晃嗣@ウルトラセブンが野々村と一緒に危篤状態の実父・久保明を見守り中。頑固な父親は死に際に、かつてシベリア抑留時代に裏切った仲間の一人が戦後、北の連邦のスパイとして暗躍していた仰天事実を息子に話して聞かせるのであった。生活が苦しいため船を手放しまくっていた実兄から、最近小型船を買った怪しい男・片桐竜次は島田の店にちょくちょく顔を出していた。

実は拉致被害者の戸籍を使って日本人に成りすましていた島田。戸籍を奪った別の被害者の姉・月丘千秋と対面させられそうになり、いよいよ立場が危うくなった彼は、工作員の立場を忘れ、情が移った高松の妹とその子供達を残して泣く泣く、海保と警視庁の追跡を振り切り、高速艇で北の共和国へと帰っていくのだった。警視庁、面目丸つぶれ。半年近く捜査していた島田こそが「黒猫」だと思っていた野々村たちは一瞬ガッカリしたのだが、本物の「黒猫」は別の人物だった。

大田黒は結果的に2つの国のスパイに利用されていた。北の共和国のスパイ活動を潰すために、B連邦からマスコミに暴露記事を流され、活動中止に追い込まれた大田黒は、記事を書いた高松を問い詰めるが知らぬ存ぜぬで見放されてしまう。高松もスパイ、そして当然ながら金髪秘書もスパイ、島田もスパイ、テニス好きの白人男もスパイ、中国系の実業家もスパイ。

とにかく野々村の半径数十メートル、知り合いはほとんどスパイ、日本国中あたり一面スパイだらけというトンでもない状況であることが判明。

善良で真面目な人間の弱みにとことんつけ込んで、知らず知らずのうちにパシリに仕立て上げてしまい、色と欲とでがんじがらめ、挙句は役に立たなくなればチリ紙同然に廃棄処分されるという、非道で非情で極悪なスパイ業界の事例を、実際にあった事件に基づいて映画化しているだけに、ややてんこ盛りの感は否めず、設定はご都合主義だがディテールは嫌になるくらいリアル。特に、当時はあまり一般的でなかった、だから手口がバレるのをおそれた当事国からクレームが?とすら思える「拉致方法の詳細再現フィルム」はまさに迫真である。

そして、とうとう正体を現した「黒猫」は一体誰だったのか?親子二代でスパイだったという皮肉な運命を呪った本物の「黒猫」の運命は・・・。

ヒーローものと刑事ものとNHK朝ドラ出身の俳優達、つまりクリーンなイメージをかきあつめてぶつければ勧善懲悪な感じになるかも?という期待は十分に理解できる。ただし、さらに時を経て、各々がVシネマでヤクザの幹部だったり、時代劇の悪役になってしまった今日としてはその期待は相当な空振りになってしまったとも言える。

当時の盛りの過ぎたヴェテラン青春スター俳優達の今日的知名度の低さがある意味、奏功とも言えるわけで、結果的に再現フィルムにしては予想外の迫真力という出演者の方々にはまことにお気の毒な作品でもある。本作品が劇場公開映画では初の大役(か?)らしい榎木孝明のその後は予想外の出世であるが、どうだろう?榎木としては「パンドラの箱をこじ開けやがって!」くらいな感じなのではないか?アーティストとしてのアレ的に(どれだよ?)。

同国人同士だったら母国語で喋ればいいのに、と思ったが、でも何処の国の言葉で?ロシア語とか朝鮮語はNG、となればあの、聞いててイライラするほどのたどたどしい外人同士の日本語会話もむべなるかな。別にギャグじゃなかったのね。

情報の流通速度が飛躍的に高まっている二十一世紀の日本では、当時の情報戦に登場するツールに時代を感じてしまうけれども、、スパイ防止法が未整備なために刑事たちは何度も「目の前でスパイされているのに逮捕できない!」と歯軋りしまくるシーンを連続で見せられるとサブリミナルにドキドキさせられてしまう。

よくできている映画である、啓蒙映画としては。謎の高速艇追跡シーンの飛び道具(ヘリコプターですが)大盤振る舞いを鑑みるに十分すぎる資金力である。だがしかし、金に目がくらんだという気がしないでもない。これに味をしめた東映は1994年にまたまた「ノストラダムス戦慄の啓示」なる某宗教団体の宣伝映画を製作するのである。

ところでなんでこんなところに?と思われるのが警視庁の幹部・山村聰、強いて言えばこの人だけが明確に豪華出演者である。

2008年09月23日

【追記】劇場で見れなかったことが別に残念な気がしないのでアレですが、とにかくレアな作品をご提供くださいましてありがとうございました。本郷さんの役どころが「中田忠雄」だったのが個人的にはかなり微妙でございました(爆)<「どこ見てるんだよ!」ここ、ツッコミどころですよ>皆様(自爆)

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2008-10-27