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キングコング対ゴジラ


■公開:1962年

■製作:東宝

■配給:東宝

■製作:田中友幸

■監督:本多猪四郎

■脚本:関沢新一

■原作:

■撮影:小泉一

■音楽:伊福部昭

■編集:

■美術:北猛夫

■照明:岸田九一郎

■録音:藤好昌生

■特撮:円谷英二、有川貞昌、

■主演:ゴジラとキングコングと平田昭彦(様)

■寸評:

ネタバレあります。


筆者は平田昭彦に(様)をつけるくらいのファンである。したがって平田様の悪口はまず、書かない。

初代はオキシジェンデストロイヤーで東京湾の藻屑と消え、二代目は冷凍された。そんなゴジラが米国のトップモンスターと共演するために復活!これだけでも当時の日本国民の熱烈歓迎が想像されるが、実は違う!本当の復活は「ゴジラと平田昭彦(様)」なのであると断言しよう、問答無用だ。

製薬会社の宣伝部長である多胡部長・有島一郎はいかにも胡散臭いアナウンサー・田武謙三が真面目に解説する科学情報番組の聴取率(当時)不振、そして、ライバル企業が展開する、わざわざチャーターした本物の潜水艦による極地探検番組に大きく水を開けられていることに、頭から湯気を出して(多胡=タコだけに)大暴れ。

今日も今日とて生産性の低そうな部下・堺左千夫加藤春哉に八つ当たり(多胡=タコだけに)。それだけでなく、いぶし銀のようなスポンサーの威光をカサにきて、しがない民放スタッフの弥次喜多コンビ、桜井・高島忠夫と古江・藤木悠に命じて南方の島から謎の赤い実を持ち帰った松村博士・松村達雄を取材。「伝説の魔神復活」の話に手足をニョキニョキして喜んだ(多胡=タコだけに)多胡部長は早速、二人に現地ルポを命じる。

その頃、北極海では光る氷山が発見されていた。潜水艦に乗り込んでいた地球の恩人(参照:「地球防衛軍」)でもある調査団員・ハロルド・コンウェイは雄叫びとともに熱線攻撃を受けた潜水艦の中で「ゴジラ!」と叫んでいた。同じ頃、けばけばしいオッサン、じゃなかった、酋長・小杉義男が仕切っていた土人たちの協力を得て無事にファロ島探検に出発した桜井と古江は、深夜の海から上がってきたリアルなオオダコ(本物、生身)が、原住民の少年とそのお色気満点のナイスバディな母・根岸明美を襲撃する現場に遭遇。すると、島の奥から巨大なお猿さん=キングコング・広瀬正一が出現し、タコを撃退(注・殺さない)し、赤い汁をがぶ飲みして島民のドラムと合唱に爆睡してしまう。

グースカ寝ているキングコングを日本まで輸送することになった桜井と古江だったが、輸送船にわざわざ多胡部長がやってきて二人を激励。ついでに覚醒キングコングが暴れ出したので、輸送船が巻き込まれるのを防ぐために、反対する多胡部長の制止を振り切った桜井と古江はコングを載せていた筏を爆破するのだが、コングは全然平気。それどころか、彼(だよな、たぶん)は動物的カンで、ていうか動物(大きな猿)なんだけど、ゴジラの存在を直感し、決戦会場となるであろう日本へ向かうのだった。

聴取率(現・視聴率)の呪縛から逃れられない、スポンサーの命令とあらば非合法な行為も全然平気という民放体質を揶揄った本多監督の洞見には感嘆しきりであるが、それだけでは終わらない、その権力に毅然と(しかし半泣きのヤケクソで)立ち向かう藤木悠!天晴れ!かつて、映画の中でこんなにカッコいい藤木悠がいただろうか?いたかもしれないけど、ま、どうでもいいや。

ゴジラとキングコングの同時出現に沸きあがる、じゃなくて震え上がる日本全土。この、未曾有のタスクフォースの責任者の一人が重沢博士・平田昭彦(様)だ。慌てふためく取材陣に対してコングの生命力にエールを贈る、この余裕。周囲を取り囲む地球人類とは一線を画す、この美貌。きゃーっ!きゃーっ!

東宝の30周年よりも、キングコングよりも、ゴジラよりも、平田昭彦(様)がばーんと登場した瞬間、スクリーンを凝視していた婦女子は間違いなく腰が蕩けたはず!久しぶりのコンビ(敢えて断言)復活が一大慶事であることが、妙に明るい画面の色調と、なんとなく笑顔気味な平田様のダンディーなお姿から焔のように揺らめくではないか!祝え!国民!平田昭彦(様)とゴジラの同時復活を!

二大怪獣決戦のアイデアは大貫博士・松本染升の発言をヒントに重沢博士とゴジラより強そうな自衛隊の総監・田崎潤の決断によるもの。期待ワクワクのファーストコンタクト。ところが飛び道具を持たないキングコングはゴジラの熱線攻撃にあっさり撃退されてしまうのだった。

ガッカリだぜ!キングコングの「キング」は飾りか?!所詮はただ図体がデカイだけのエテ公じゃねえか!とファンの期待を裏切ってしまったキングコング、巻き返しなるか?

ゴジラの進撃を食い止めた電撃作戦で一度は株を上げた自衛隊だったが、キングコングは高圧線を丸かじりしてしまい、こともあろうに熱線攻撃が平気な、むしろ電気でパワーアップしてしまう特殊体質に進化してしまうのだった。ダメじゃん!田崎!少しは申し訳ないって顔、しなさいよ!だが、捨てる神あれば拾う神あり(ちょっと違うか)、ピンチのあとにチャンスあり。

日本に上陸したキングコングは、意図的に破壊した人口建造物は東京の水道橋にある後楽園遊園地の近傍の講道館(しかもグーパンチ)くらいのもので、モスラ幼虫と同じように、はた迷惑だけど無邪気な乱暴狼藉しかしないところがミソ。そして、キングコングといえば美女である。今回のお宝は、桜井の妹にして、婚約者の藤田・佐原健二といちゃいちゃしまくるふみ子・浜美枝。ゴジラ出現によって遭難した船に乗り込んでいると思い込み、北へ向かったふみ子は南進していたゴジラと鉢合せ。当然、超法規的手段で恋人救出に向かった熱血野郎の藤田に無事助けられるのであるが、このふみ子、よっぽど怪獣運が良いのか悪いのか?今度は東京にやってきたキングコングから逃れるために乗った地下鉄の丸の内線をコングにゲットされてしまい、そのまま国会議事堂までお持ち帰りされてしまうのだった。

キングコングの手の中でぎゃーぎゃー騒ぐ演技をガンバった浜美枝。婦女子がピンチの時にわめき散らすのは「助けて欲しいから」または「泣けば助けてもらえると知っているから」という惰弱な発想に基づくのだが、しかしここ、東宝の怪獣映画においては「佐原健二を呼ぶ呪文」と心得て観るべし。恋人が叫べば佐原健二がやって来る、それがルール。

コングは桜井の機転で、ファロ島から持ち帰った赤い実で作った汁をがぶ飲みし、ドラムの音でまたもや爆睡。藤田の会社で発明した超強力ピアノ線(っていうかテグス)で吊るされてゴジラが待つ富士山へと空輸される。さすが富士は日本一の山であるから、麓で戦う二頭はまるでソフビ人形のスケールだ。最初は劣勢に回っていたキングコングだったが突然の落雷で体内に強力電流を溜め込んで復活し、ゴジラと互角の対決は熱海城をぶっ壊してもみ合うように海中へ。先に浮上したキングコングは日本には目もくれず、一目散に故郷へと帰っていくのであった。

これといって何もしていないのに日本を救った感じの重沢博士としては「いやあ、まだまだこんなもんじゃ死にませんよ、ゴジラは。やっぱ溶かさないとね!(嘘)」とでも言いたげだったが、この後、シリーズ化されることを見越したかのようにゴジラの生死を煙に巻くのであった。映画の最後を飾ってしまったのは平田昭彦(様)、全部もっていっちゃったの感。

ゴジラがその存在を明示せずに雄叫びと紅蓮の炎で知らせる最初のほうの登場シーンが好き、豚っ鼻になってない八頭身ゴジラの造形も好き、でもなんだかんだ言っても、ゴジラと平田昭彦(様)が一緒に出ているところを観るだけで大満足。ゴジラは恐怖の対象であると同時に観客の心を最高にヒートアップさせる大スタア。その二つの性格が幸いしたり災いしたりしながら、ゴジラは東宝のトップスタアの一人として活躍を続けていく。

2008年06月28日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2008-06-28