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暗黒街のドラゴン 電撃ストーナー(鐵金剛大破紫陽觀  STONER)


■公開:1974年

■製作:ゴールデン・ハーベスト

■配給:

■製作:Raymond Chow(鄒文懐・レイモンド・チョウ)

■監督:Huang Feng(フアン・フェン)

■脚本:Huang Feng(フアン・フェン)

■原作:

■撮影:

■音楽:

■編集:

■美術:

■照明:

■録音:

■特撮:

■主演:ジョージ・レーゼンビー

■寸評:

ネタバレあります。


なんでもかんでもタイトルに「ドラゴン」つけりゃいいってもんじゃないと思うが。

オークション会場で廃船に高値をつけて落札した胡散臭い日本人、金浦・高城丈二を不審に思った台湾警察は秘密捜査官のリー・アンジェラ・マオに捜査を命じる。金浦は香港にいる。管轄外なので銃器不携帯かつ逮捕は現地警察に任せるのが今回のミッション。キリリっとした制服姿のリーは早速、香港へと出発。

ところは変わってオーストラリア。世界各地で怪しげなイニシエーションを繰り広げ、女性信者をセックスの虜にしてしまう新興宗教が大流行。どう見ても怪しい教祖がメラニーという爆乳娘に怪しいクスリを飲ませてセックスにふけっていた。メラニーを救出すべく、麻薬捜査官のストーナー・ジョージ・レーゼンビーはマンションの一室に設けられた神殿に駆けつけたが、すでにメラニーは廃人となっており彼の腕の中で絶命、怒ったストーナーは逮捕した教祖をボコボコにしたが、彼は雇われ教祖。黒幕は香港に拠点を持つ麻薬組織らしい。

歌手から俳優へ転向した高城丈二が出ているせいだろうか(そうだろうか?)?国際派スターの共演というよりは無国籍感全開、裸(っていうかセックス)とアクション(っていうかボッコボコ&流血)、つまりエロ・グロの連続攻撃、まるで第二東映(後・ニュー東映)の映画を見ているような錯覚に陥ってしまう。黒人の教祖役はどうしてウィリー・ドーシーじゃないのか不思議なくらいだ。ちなみに高城丈二のアジトのデスクは回転する。そんなもん、ずっと座ってたら目が回ると思うのだが、そこで女はべらかしてご満悦である。日本なら天津敏だな、この役は。

ストーナーの顔写真と女好きという性癖はすでに麻薬組織に知られており、着任早々、美人局にまんまとひっかかり、デブだが強い手下・サモハン・キンポーたちに襲われてノサれ、金浦の美人秘書兼愛人のベティ・ティンペイに色仕掛けで篭絡されてしまいベッドインの写真まで盗撮されてしまう敏腕捜査官のストーナー。散々なストーナーと違い、リーは身持ちの固い優秀な刑事だったので、怪しまれないように貧乏臭いコーラ売りに化けて麻薬組織のアジト近辺に出没。金浦が落札した廃船は麻薬密売に利用されており、その組織は強力な催淫薬の「快楽丸」を開発し、香港の密売組織の大物・コーと取引していることを掴む。

武術指導の人がそのまま映画に出てくるというのはクンフー映画でよくあるような気がするが、それって東映東京撮影所の日尾孝司みたいなもんか?なんか無理やり東映に持っていこうとしてないか?それはさておき。

新興宗教の神殿に潜入したリーとストーナーは暗闇の中で互いに相手を敵と間違えて対戦するが、長身であるストーナーの腋の下くらいの身長しかないリー、体格差は大人と子供(小学生)、ただし実力は反比例。どうやら同業種らしいと分かったのでさっさと協力することにした二人である。初見でストーナーの実力を見抜いていたのか「邪魔しないでね」と念をおすりーであった。あらかじめ建物の防犯設備を調べた上で潜入した賢いリーと違い、鈍いストーナーのせいで防犯装置が作動してしまい二人は天井から落下してきた檻に閉じ込められてしまうのであった。

なんて間抜けなヤツなの!人の話は全然聞いて無いし!これで007(敏腕捜査官)だなんて聞いて呆れるわ!ウドの大木とはあなたのことよ!とでも言いたいのは山々なアンジェラ・マオのブーたれ顔がカワイイ。

金浦の粋な計らい(か?)でストーナーとリーに快楽丸が投与される。口から服用するのが通常なのだが抵抗したストーナーはクスリを注射されてしまうのだった。ここでも賢いリーは口から飲んだフリをしてひそかに吐き出してしまう。やがてストーナーは強烈なスケベモードに突入、女好きのデフォルト値が高いため薬物の効果は抜群でほとんど強姦に近いイキオイでリーに襲いかかる。アンジェラ・マオ、この映画で唯一と言っていい本気の大ピンチ!怯えながらも、まさか叩き殺すわけにもいかない。困ったリーは、ストーナーのボディに拳を叩き込んで動きを止め、後頭部をぶん殴り、とりあえず失神してもらうのだった。翌朝、さらにクスリを投与しようとして檻を開けた金浦の一味にリーとストーナーが大反撃を開始する。

悪玉側が余裕持ちすぎで自滅するのがアクション映画のパターンである。とっとと殺しとけばよかったのにね。

ここから一気に画面はクンフー映画になる。当然ながら金浦(本人=高城丈二)はクンフーはできないのでもっぱら受身に回る。アップは高城丈二だが、引きの画面や派手にぶっ飛ばされるシーンとかは全部ボディダブル。これが連続するので、リーの蹴りのスピードが物凄く違うのが丸見えである。多少摘んであるとは言え、高城丈二がそもそも技斗があまり得意じゃないからギャップが激しすぎ。今までカッコよくなかったストーナーのジョージ・レーゼンビー、ここから先は、ほぼ全部本人で暴れまくるアクションシーンがやたらとカッコいい。抜群の運動性能とスピード感はあの体格に鑑みて実にすばらしい、いやマジに。クンフーじゃないけど、凸凹コンビ(マオとレーゼンビー)の大乱闘シーンはこの映画の最大の見どころだ。乱闘シーンにはユン・ピョウもいた、まだ端役。

金浦は乱闘の最中、リーに蹴りまくられ誤って灼熱の液体を顔面に浴びてしまい絶叫しながら絶命、二枚目台無し。残ったのは香港の麻薬王であるコーとリーのタイマン勝負。やたらと強力な火薬玉が登場し、神殿は徐々に火の海になっていく。実力は拮抗、そうしないと続かないし、だがジワジワとリーの攻撃が威力を増して、ボロボロになったコーは火薬玉を浴びて炎上する。そこへ香港警察が到着し、組織の生き残りは一網打尽。リーは金浦の集めた大金に「福祉施設へ寄付します」のメッセージを残して無事、任務終了、帰国したのであった。

高城丈二は本作品の後、療養生活を送り、テレビ等で一瞬は元気な姿を見せたのだが完全な復調とはならず芸能界を引退してしまったのである。メジャー短期間で大勢のファンを魅了したアンジェラ・マオ、20世紀最大の一発屋との呼び声もある(失礼な・・)ジョージ・レーゼンビー。本作品は芸能界の光と影を体現した不思議な縁の三人組の共演なのである。

この作品は公開から実に30年以上たって無事にDVD化された。そこでやっと本編を鑑賞することができたのだが、DVDの特典映像で、アンジェラ・マオ、場末のバーのマダムのような雰囲気になっていた現在の彼女のインタビューによると「高城丈二?台湾の俳優かしら?ごめんなさい、覚えてないわ」とトンでもない思い出にされていた。ま、実際、ほとんどカラミのシーンがないから当然なのだが。日本代表として色敵役を必要にして十分にやり遂げた高城丈二の活躍も特筆すべきことなのでよく見ておこう。ちなみに香港映画に詳しい人から聞いたところによると日本映画の二枚目顔ってあっちの映画だと悪役顔らしいです。

2008年04月20日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2008-04-20