孤独の賭け |
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■公開:1965年 ■制作:東映 ■制作:俊藤浩滋、渋谷幹雄 ■監督:村山新治 ■脚本:長谷川公之 ■原作:五味川純平 ■撮影:坪井誠 ■音楽:飯田三郎 ■編集:田中修 ■美術:進藤誠吾 ■照明:銀屋謙蔵 ■録音:渡辺義夫 ■主演:天知茂 ■寸評: ネタバレあります。 |
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戦後最強の陰鬱男優、天知茂のレーゾンデートルを確立した本作品は、本人によって何度も繰り返し映像化されていることでも明らかである。筆者はついついテレビ(カラー)ドラマの「野望」とごっちゃになってしまうのである。そういう天知茂っぽい作品、それは一つのジャンルであると言ってよい。 クリスマスイブ、洋装店でしがないお針子をしている乾百子・佐久間良子はパトロンの資金繰りが怪しくなった女社長が店を売りたがっているという情報をキャッチする。百子は野望お針子なので、さっそくひょんなことから知り合った青年実業家の千種・天知茂に対し肉体を武器に融資を迫る。千種は前しか見てないタイプだったので百子の度胸に融資を約束、百子は店を手に入れ、同僚を雇い入れて精力的に商売を展開する。一方の千種はアミューズメントパークの建設に奔走し、高利貸しの東野・内田朝雄や実業家の赤松・上田吉二郎に接近する。 東野の秘書である大垣・北龍二の妻・木暮美千代から、百子がかつて家政婦として住み込んだ資産家の若旦那を口説いたことがある事実を知らされた千種は百子の過去に興味を持つ。百子は叔父夫婦に実家を乗っ取られた上に落ちぶれたので身の丈以上の復讐心に燃えていたのであった。同様に赤貧生活から成り上がった千種はいわば同士のマインドで百子と付き合うが、百子はあくまでもビジネスライク、持ち前のヴァイタリティで株にも手を出し千種の更なる応援を得て、病床の叔父・沢彰謙から実家奪還。百子の妹、美香・大原麗子は叔父夫婦に引き取られていたが家を飛び出して百子を頼って上京。ところがこの妹がとんでもない食わせモノで、元は百子の同僚だったが今は従業員の信子・岩崎加根子のヒモ生活をエンジョイしていた不良大学生・岡崎二郎を寝取り、洋装店の売り物を横流しするなどやりたい放題なのだった。似たもの姉妹とでもいえばいいのか。 思いつめた信子が大学生と無理心中をする。千種は秘書、高木・梅宮辰夫を政略結婚させるなどビジネスに奔走するが、徐々に資金繰りが苦しくなり、すべての融資を引き揚げられた上に、計画まるごと大手企業に譲り渡されてしまう。海千山千の古参実業家たちに体よくあしらわれて使い捨てにされてしまった千種に、百子は融資を申し出るが断られてしまう。千種のことがあきらめられなかった百子であったが千種は控えめで地味な秘書の京子・小林千登勢とくっついて夜の街に消えていく。 本当に悪いことの出来る人間でなければ成功しない、実業の世界とはそうしたものである。商売はスポーツではない。ロマンチストの千種と現実派の百子とでははじめから勝負が見えていたわけで、同じ貧乏な出自でも、それをバネとするかトラウマとなるかでその後の人生が大きく変わるものである。 天知茂なんて人生全部がトラウマみたいな役が多いので最後に大団円を迎える役をたまには見てみたい。たぶん、あるけど、なんか物凄くテレてる天知茂が想像できるが。 野望に燃える女の唇は概ね厚ぼったい。百子は下半身のねばり強さとともに野望女は常に色恋と金銭をわけて考える胆力を持っていたのだが、復讐の目的を果たした後のビジョンがこれといって無かったため、金銭的な勝利を得ても色恋のほうは結果敗北、たぶんその老後はかなり寂しいものになるであろう。 結局、どっちが幸せなのか勝負は下駄を履いてもわかりませんな。 天知茂といえば三白眼である。三白眼をもつ人は一生のうち一度くらいは「天知茂」というあだ名がついたことと思う。実のところは「目つきが悪い(または怖い)」という意味をソフトフォーカスしたことに気づくのにそうは時間がかからなかったと思うが。昭和の頃、あの眼はそれくらい彼のトレードマークであった。天知茂(天地茂)の本格デビュー作は「恐怖のカービン銃」。賢い上に端正な顔であるため小柄とはいえ粗暴で凶悪だったりするもんだから得体の知れない恐怖キャラだった。その彼が後年はテレビの刑事役でどちらかというと、やってることは非合法だが善玉だったがために世の「目つきが悪い」人たちは天知茂というある意味ヒーローを得てどれほど救われたことであろう。ありがとう!天知茂。 「女真珠王」で初の善玉役をこなした天知茂は善悪混合した階層構造が複雑な人物を多く演じたが、共通しているのはロマンチストであったことだと断言しよう。たとえ吸血鬼という役どころであったとしても。人柄なのか?それとも作り手が求めている理想の男性像の一つとしてそうした要素を天知茂がフル装備していたからなのか?男が惚れるタイプだ。ちょっとアブナイ方面にも走りそうだが、いや、ファンが、である。 (2008年01月20日 ) 【追記】 |
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※本文中敬称略 |
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file updated : 2009-02-12