女番長 |
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■公開:1973年 ■制作: 東映 ■企画:天尾完次 ■監督:鈴木則文 ■脚本:大原清秀、皆川隆之、鈴木則文 ■原作: ■撮影:増田敏雄 ■音楽:八木正生 ■編集:堀池幸三 ■美術:雨森義允 ■録音: ■照明:和多田弘 ■主演:杉本美樹 ■寸評: ネタバレあります。 |
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台詞は棒読みだが、身体のメリハリは凄い、杉本美樹が主演。 池玲子と杉本美樹はともに十代で東映ポルノ映画にデビューし、当時の男子のみなさまの愛玩対象として名を馳せた人たちだが、裸で勝負していたため活躍期間は数年と短い(瞬間復活したりはしてるが)。昭和のグラマーと言えば乳の大きさが身体全体の脂身と比例している場合が多かったため、今見るとバランスのいいボインであったことがわかる。生体に異常をきたすようなダイエットに励む少女たちは、彼女達のような先達の、ナチュラルでイケてる身体を鏡とすべきである。 護送車の中で派手な衣装にケバイ化粧の、とうてい未成年とは思われないような少女達が喧嘩を始める。一人は大阪で不良少女集団を束ねる遼子・衣麻遼子、イージーなネーミングである。もう一人は一匹狼の関東小政・杉本美樹である。二人の喧嘩は伝説の女番長、学ラン摩耶・池玲子によって仲裁がなされるが、直後に遼子の舎弟たちが護送車を襲撃したため一同は脱走に成功する。 大阪に流れてきた小政とラン子・丘ナオミ、桃子・西来路ひろみたちはヤクザの北竜会が仕切るレストランで無銭飲食をやらかそうとしてボコられ、遼子が率いる黒菊会との抗争が勃発、食い物に困った小政たちは公園の鳩を捕獲して焼き鳥ビジネスを開始するのであった。小政は、靴磨きの傍ら謎のオッサン・金子信雄を相手にポルノ写真を売りさばく、自称映画監督の一郎・荒木一郎と出会う。一郎の兄貴分であり、摩耶の元彼で、北竜会の下部組織である三星会のリーダー、達夫・宮内洋はうっかり有力者の息子をカツアゲしてしまい北竜会の組長、淀・天津敏から半殺しの目に遭うのだが、それでも勢力拡大を図る達夫は、かつての恋人、学ラン摩耶すら売り渡すのであった。そもそも摩耶が鑑別所送りになったのは、達夫を助けるために淀を刺し、片腕を潰したからなのである。 一郎は、上納金の値上げに窮していた兄貴分の達夫を救うべく、達夫にカツアゲされて両親に泣きつくような情けないセガレの父親であり、かつ、北竜会に便宜を図るド腐れ公務員の二官・遠藤辰雄のジャンボな妻・三原葉子をだましてラブホテルで欲情させ、セックスシーンを撮影したフィルムを作成、二官を恐喝し金を奪う。 達夫は関東ヤクザの大物・名和宏の暗殺を命令されこれを果たすが、後々の手打ちを考えた淀は、功労者である達夫を殺そうとする。ヤクザ社会の本当の厳しさ(か?)に直面した達夫は北竜会の事務所で大暴れの後、行方をくらます。兄貴分のピンチであっても一郎は、そういうアブナイ場に赴くことをあっさりと拒否する。自分を犠牲にすることはヤクザ社会ではもっとも投資対効果の低い行いであることを知り尽くしている一郎と達夫の違いがここにある。 達夫は真面目が過ぎるほどの性格なので結果的にトンでもないことをするのだが、元高校球児にして中学生だった摩耶が暴行されそうになっているところを助けて負傷し、将来がパーになったという気の毒な面もあり、北竜会の幹部・内田勝正にリンチされていた小政を助けたりするナイスなところもあるので結果的には善玉で二枚目である。で、そういう二枚目や善玉のナンバー2はヤクザ映画ではクライマックスにおいて落命するのが常道であるから、案の定、達夫はわざわざ甲子園球場で狙撃され、摩耶に看取られて息を引き取るであった。 琵琶湖のほとりに罰当たりなトルコ風呂(現・ソープランド)を開業した北竜会は遼子たち女番長たちに家出少女や弱小女番長たちを集めさせ、暴力で脅して働かせようとしていた。小政は手下を殺され、摩耶は恋人を殺され、怒髪天を突いた女番長たちは復讐に燃えるのであった。 全編これリンチとキャットファイトが大盤振る舞いの映画である。裸で縛られたり転がされたりする女優さんたちも大変だが、彼女達をなぶりものにする男優さんたちもその心中は複雑なものがあったに違いない。もちろんのことであるが、こういう映画は大人の俳優でないと成立しないわけで、池玲子を暴行するシーンで「いただきます」と両手を合わせる汐路章、隣室のセックスを覗き見して腰をバクバクいわせる三原葉子、縛られた杉本美樹をほうきみたいのでバカスカ(でも、どうみてもちょいちょいっと突付いているようにしか見えないが)叩きまくる内田勝正、何時いかなるときでも自信満々で高笑いの挙句にアッサリとやられてしまう天津敏、こうした自我を捨てて誠実に役を演じる人たちなくしてはこういう馬鹿エロい映画はできない。 そう、そしてなにより女番長シリーズ最大の謎は、およそ走力がハイレベルとは思われない女番長たちを追跡するヤクザたちがなかなか追いつかないという状況である。バーゲン時のオバサン状態の彼女達が大阪の市街をほとんどゲリラロケであろう、縦横無尽に走りまわる姿になぜか昨今、現代人の失われた生命力のすばらしさを感じる人は多いことと思う。日本が低迷している二十一世紀初頭の今、見るべき映画の一つである。 (2007年12月02日 ) 【追記】 |
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※本文中敬称略 |
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file updated : 2007-12-02