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赤い水


■公開:1963年

■制作: 大映

■製作:永田雅一

■企画:伊藤武郎

■監督:山本薩夫

■脚本:柳沢類寿、山形雄策、山本薩夫

■原作:杉浦明平

■撮影:小林節雄

■音楽:池野成

■編集:中静達治

■美術:柴田篤二

■録音:飛田喜美雄

■照明:山崎幸一

■主演:伊藤雄之助

■寸評:

ネタバレあります。


東宝にいたときはトランジスタグラマだったと記憶しているが、大映の永田社長のもとへ走ってからはすっかり貫禄つきまくりの中田康子が大活躍する元祖温泉疑惑映画。

禅恵和尚・伊藤雄之助は色欲坊主なので、うどん屋の女房・森光子をヤっちまったらしいという噂を聞いた亭主の利吉・八波むと志は路上で和尚をぶっ飛ばしたところを地元の新聞に書かれてしまい、それが元で利吉はこの和尚が所有している借地の賃料値上げ反対活動のリーダーに任ぜられる。さて、ここツバメ町というところは隣接するスズメ町などに比較して何のとりえも無い地方都市。今日も今日とて田舎のボスたちが牛耳る町会議が開催中。土建屋の社長をしている山口・城健三郎(若山富三郎)、銀三・大辻伺郎、クリーニング屋の河井・潮万太郎、議長・船越英二、町長・織田政雄、課長・多々良純ら物凄いメンバーが揃っているだけに町の財政は破綻寸前なのだった。

議員たちは美味しいご飯と宴会と視察旅行をエンジョイするために、隣町が温泉景気に沸いているのに目をつけて一儲けを企む。そこへ和尚が現れ、境内の一角に温泉が出るらしいとぶち上げたので議員たちは一気に盛り上がる。早速、利吉は和尚の手先となって寺の周辺の私有地の買占めに乗り出す。一方、課長は書記・三角八郎を引き連れて寺の裏山一帯の水質調査を実行、腐った赤い水をせっせとボトルに詰めて産業試験場へ送るのだった。

それはそうとマスコミに書いてもらわないと観光客は誘致できないので、地方紙の記者を集めて、町長たちは緊急記者会見を開く。そこに若い新聞記者の高石・川崎敬三がいて、彼だけはいくら接待されても温泉はインチキなんじゃないかと疑うのだった。案の定、寺の周囲の土地からは温泉成分が一切検出されない。焦る町長、公共投資を当て込んだ土建屋の山口はひそかに土地買占めをしていただけに大慌て。利吉は地権者たちから買収中止の責任を追求され困り果て、疑惑の張本人、和尚に救済を願い出る。ニンマリ和尚は周辺の地主から二束三文で土地を買い上げてやるのだった。

産業試験場に圧力をかけるべく、町のボスたちは県の職員である事務所長・山茶花究に、旅館の女中、ふみ子・滝瑛子をあてがうのだが、自分の境遇に悲観的なふみ子は日々、若いマドロス・本郷功次郎(空想シーンのみ)との逃避行を夢見るような女だったので、今まではドスケベ中年の相手も我慢してきたが、ついに堪忍袋の緒が切れた。高石との平凡な生活にもあこがれていたので、ついに「お相手拒否」という実力行動に出る。しかし、ボス達はあきらめない。ジャンボなお色気をふりまく芸者のこりん・中田康子に出動要請、あっさりと事務所長を手篭めにしてしまうのだった。

高石は偶然、地元の高校で教頭をしていたかつての恩師であり詩人である山本先生・宇野重吉と再会する。反権力の塊だったこの先生にあこがれていた高石だったが、今では百姓をしながら生計を支えている女房に頭の上がらないヘタレ人間になってしまった山本先生は飲んでクダまくだけだった。いや、本当にそれだけ、しかも延々と。

インチキ温泉水で試験場のお墨付きをもらったツバメ町議会は大喜び。高石の暴露記事は和尚の同級生がたまたま編集長だったためにもみ消された。利吉はボスや和尚の悪企みに加担するのはもうコリゴリだと訴えて全員からボコボコにされてしまう。町議たちは全国へ温泉視察へ出かけ、利吉は元通りうどん屋の家業に精を出す。ふみ子は町を出て行く決意をするのだった。右往左往したツバメ町、タダ一人大もうけしたのは他ならぬ和尚だけだった。

こんだけドタバタしまくりで、何一つ問題が解決しないなんてスゲー!田舎のボス達がねーちゃん口説いたり、女房にどつかれたり、酒飲んで暴れたり、それだけでお腹いっぱいになるのは、出てくるキャラクターが徹底的に漫画っぽいから。

いきなり前歯にお歯黒塗って伊藤雄之助が登場したときは腰抜かした。対する(別に対してないけど)織田政雄は入れ歯を外して応戦、若山先生は付けボクロっていうか巨大なイボ、とそれぞれナイスなメーキャップで泣いたりわめいたりとにかく大騒ぎな映画である。八波むと志をじっくり見たのはこの作品がはじめてだったかも。なにせね、あのマスクでしょ?てっきり元プロボクサーの人が紛れ込んでるのかと思っちゃいました。

池野成の劇判がいやがうえにも場を盛り上げる、ちょっと無理やりな感じがするけれども、映画全体がかなり無理なので全然オッケー。

2007年11月18日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2007-11-18