「日本映画の感想文」のトップページへ

「サイトマップ」へ


続 雷電(雷電 続編)


■公開:1959年

■制作: 新東宝

■製作:大蔵貢、山梨稔、柴田万三

■監督:中川信夫

■脚本:杉本彰、中川信夫

■原作:尾崎士郎

■撮影:西本正

■音楽:小沢秀夫

■編集:

■美術:黒沢治安

■録音:道源勇二

■照明:石森浩

■主演:宇津井健

■寸評:元現役力士が審判員として出演しているらしい(だってよくわかんないんだもん)

ネタバレあります。


江戸時代に実在した物凄く強いお相撲さん、雷電の映画。本作品は正編に続く続編。信州の山奥から江戸に出てくるところまでが正編、冒頭にダイジェスト版あり。純朴で馬が大好きで、そんでもって強いお相撲さん、太郎吉・宇津井健は、浅間山の噴火をきっかけにして知り合った恋人、おきん・北沢典子が貧乏な家計を救うために江戸へ身売りされていったので、結果的にそのあとを追って江戸へ出てきたが、おきんちゃんは美人だったのでドスケベな大名に手篭めにされそうになり、太郎吉のほうはまたこの大名のお抱え力士と決戦直前という風雲急を告げる真っ最中。なんだかんだあって二人は駆け落ちして心中を決意しちゃうのだった。

ドスケベ大名の本多中務大輔・江見俊太郎とそのオッカナイ奥方・小畑絹子の魔の手を逃れたおきんと太郎吉は心中しようとするがそこへ寝惚(ねぼけ)とあだ名される大田蜀山人・沼田曜一がぬっと姿を現したので二人はかなり怖かったのだが下っ端役人なんか歯が立たないくらいのバックボーンを持つ蜀山人のおかげで難を逃れる。彼はおきんを匿ってくれるのだった。

他の映画で沼田曜一は信用しないほうがよい(ような役どころが多い)のだがたまにはこういうこともある、人間見かけで判断してはいけないね。

さて、可愛い小鳥(おきんちゃん)を太郎吉(っていうか蜀山人)に分捕られてカチンと来ている本多の殿様は以前、太郎吉がいた部屋を裏切った関ノ戸・御木本伸介を呼んで本場所で太郎吉をぶっ壊すように命令する。関ノ戸は天井から吊り下げた岩石に頭突きをかましてオデコを鍛えるというマニアックな特訓方法を編み出したので、太郎吉も負けずに米俵を吊るしてそれを受け止めて大胸筋を鍛えるというプレイを考案するのだった。おまえらは「アストロ球団」かい!とでも言いたくなるが、結果は太郎吉の大勝利。本多の殿様の嫌がらせはさらに続き、江戸で相撲がとれなくなった太郎吉は小田原へ行く。

小田原ではおきんちゃんが田舎ヤクザの沓掛の久八・小林重四郎に拉致られて軟禁状態だったので太郎吉は早速助けに行くのだがタッチの差でおきんちゃんは脱出していたのだった。江戸に戻った太郎吉は師匠から「女出入り禁止」を言われて相撲に精進。ある日、茶店でたちの悪い旗本に絡まれていた八重・池内淳子を助けたところ、八重は太郎吉に一目ぼれ。八重の実家は金持ちだったので太郎吉の錦絵(今で言うブロマイドですな)を早速、大人買い。蜀山人に助けられて江戸に戻ってきたおきんはその姿をみて太郎吉はすでにファンあってのお相撲さんになったことを実感するのであった。

強いお相撲さんが出てこないので江戸の相撲人気は駄々下がり。本多の殿様のライバルであり、男前の大名、松平出雲守治郷 ・伊達正三郎の計らいで人気力士の小野川・佐伯秀男と太郎吉の対戦カードが組まれることになった。大喜びの八重、男装してまで太郎吉の取り組みを見物していたおきんは相撲に集中できなくなるから、というので太郎吉には会わないようにするのだった。八重は言い寄ってきた旗本をうっかり刺し殺してしまい大慌て、これを見た彼女の父親が責任とって自害、父親は死に際に駆けつけた太郎吉へ「八重と結婚してね」と言い残すのだった。

ったくこの、親ばか親父が余計なことを言いやがったので太郎吉はおきんちゃんも好きだけど八重もほっとけなくなってしまう。おきんはしつこい本多の殿様から逃れるために太郎吉と田舎で百姓したかったのだが、大勢のファンの期待は裏切れないので潔く身を引く。内心「うふふ・・これで太郎吉はアタシのモノよ」と思ったに違いない八重は太郎吉とめでたく祝言を挙げる。小野川に勝っても今ひとつ気が晴れない、おきんちゃんが忘れられない太郎吉である。関西巡業に出発する太郎吉とのセレブ婚にウキウキの八重、その姿をそっと見送るおきんちゃんなのであった。

ああ、なんてかわいそうなんでしょうね、テンコちゃんは。それに引き換え、池内淳子のウキウキ加減が癪にさわるったらありゃしない。そういう映画じゃないのだけれど、亭主が新婚早々元気がないんだから「どうしたの?」くらいは訊けよなっ!松平の殿様の口利きがあったからってさー、ホント性悪だよな。てなわけで雷電のお相撲さんとしての偉業よりも周囲を取り巻く人々の人間ドラマと恋愛ドラマが思いっきりクローズアップされてしまうという、相撲そっちのけの相撲映画なのだった。

2007年11月11日

【追記】

※本文中敬称略


このページのてっぺんへ

■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2007-11-11