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雷電


■公開:1959年

■制作: 新東宝

■製作:山梨稔、大蔵貢

■監督:中川信夫

■脚本:杉本彰、中川信夫

■原作:尾崎士郎

■撮影:西本正

■音楽:小沢秀夫

■編集:杉原よ志

■美術:黒沢治安

■録音:道源勇二

■照明:石森浩

■特撮:

■主演:宇津井健

■寸評:戦闘機の話じゃないですよ、お相撲さんのほう。

ネタバレあります。


日本映画で肉体派といえば三原葉子と宇津井健である、新東宝おそるべし。

江戸時代にいた史上最強と言われる伝説のお相撲さん、雷電、本名は「太郎吉(劇中)」の青春グラフィティ。

浅間山の噴火で小諸出身の娘、おきん・北沢典子と出会った太郎吉・宇津井健は田舎相撲の力士見習い。人徳のある庄屋様・高松政雄に才能を見出され浦風親方・林幹に預けられる。おきんは貧乏な母親を助けるために身を売った健気な娘だったので、女性方面はとんと疎い太郎吉だったがド助平のやくざ・小林重四郎の魔の手から身体を張って(文字通り)彼女を助けてすっかり恋人気分。だが、しかし、金の問題は解決されたわけではなかったので、おきんは江戸の大名屋敷に奉公に上がることになった。親孝行の太郎吉であったがやっぱ恋の力には勝てず、立派な力士になるために、というわけで故郷を捨てて江戸へ向かった。

身体が大きいだけできっと善良な感じがしてしまうのが人情だから、力士としてはやや上腕二頭筋が寂しい宇津井健ではあるが、おまけに16歳っていう設定は無理だろう、とは思うが、あの年代の人にしては背も高いしぽっちゃり体型だし、あまり達者とはいえない台詞回しが奏功で「太郎吉」は実にナイスなキャラ。観てるこっちが恥ずかしくなるくらい超のつくほど純情な典子(テンコ)ちゃんとのカップルは青春真っ盛りって感じ。時代劇っつうより青春ドラマだね、これは。

田舎じゃ立派でも江戸に出たら弱小部屋だった浦風親方。因業な老中、本多中務大輔・江見俊太郎が浦風部屋の有力力士の関ノ戸・御木本伸介を引き抜いてからは続々とメンバーがいなくなり、残ったのはベテランで負傷休場中の江戸嵐・舟橋元と太郎吉のみ。太郎吉の才能を惜しんだ浦風親方の尽力で彼は江戸で勢いのある相撲部屋、谷風親方・坂東好太郎のところへ円満移籍。と、ちょうどそのころ、おきんが本多に手篭めにされそうになって逃げてきた。太郎吉はかつて世話になった盗賊の一木左門太・中村虎彦の助けを借りておきんに再会するが、親方に叱られてしまう。

端正なくせにエロ親父、本多の殿様なんてすげえ美人の奥方・小畑絹子がいるくせに、そのうえテンコちゃんまでゲットしようなんてつくづくワガママでヤな奴だ。ただし小畑絹子は亭主の側室に対して「ヘマしたらお前の母親をぶち殺す」なんて平気で言うようなジェラシっ娘なのである。それじゃ、あんた(奥方)、亭主が側室ほしがるわけだよな。

そんなこんなで再度、命からがら逃げ出したおきんに、恋のパワーが大爆発した太郎吉は、一木を追ってきた役人と、本多の家の用人たちに追い掛け回されて、船大工の工房へ逃げ込み、観念して心中を決心する。

おいおい、これじゃ雷電、全然出てこないじゃんか!と思うのは当然なので、本作品は「雷電(前編)」と「続雷電(後編)」の二本立てなのでありました。

昔のお相撲さんの風俗やしきたりがたくさん出てくる。ほとんどヤクザみたいなところがあって(不勉強でどうもスイマセン)力士の移籍に際しては手打ち式のようなものが開催されたり、親方は刀さしてるし、パトロンの危機に際しては喧嘩の助っ人まで買って出てた。いやあ、知りませんでしたなあ、映画って勉強になりますなあ。

スポーツマンタイプの宇津井健であるが、学生時代は馬術部なので馬に対するアプローチはまことに手馴れているのであるが相撲のほうはさっぱりだ。当たり前だ。ボクシングとかスーパージャイアンツとかいろいろさせられている宇津井健である。それは英語を母国語としてないがゆえにハリウッドで一発当てるには肉体美で、というルートとはちょっと違うかもしれないが、ま、似たようなものと言えないことも無い。

お相撲さんの映画なので当然のことながら宇津井健、御木本伸介、坂東好太郎(は、浴衣着てたけど)、舟橋元、とケツモロのフンドシ姿が大盤振る舞い。一部、海パンの跡が生々しい輩がいるのだがそこはこの際、目をつぶってあげよう。本物のお相撲さんが海パンでは泳がないというのはこういうことだったのかと理解できるだろう。理解したからと言って別にどうってことないが。

冒頭の浅間山の大噴火は特撮。なかなか迫力の火柱。ワイド画面で贅沢なセット、青春ドラマにして超ゴージャスな一作。

2007年10月28日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2007-10-28