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怪談残酷物語


■公開:1968年

■制作:松竹

■製作:小角恒雄

■企画:

■監督:長谷和夫

■脚本:成澤昌茂

■原作:柴田錬三郎「怪談累ヶ淵」

■撮影:丸山恵司

■音楽:鏑木創

■編集:太田和夫

■美術:森田郷平

■録音:松本隆司

■照明:市橋重保

■主演:強いて言えば田村正和

■寸評:

ネタバレあります。


「仁義なき戦い」の事例に鑑みて、映画の中では、何人も金子信雄から金とか恩とか義理とかは絶対に貰ってはならない。もれなくあなたの人生に祟りを及ぼすであろう、しかも、生きたままで。

落ちぶれ旗本の深谷新左衛門・戸浦六宏は虚弱で粗暴というアブナイ奴であっちこっちで子供をこしらえる精豪でもある。新左衛門は病弱な後妻のとよ・花柳幻舟の薬代とか自分の遊興費とかで金に困り、強欲そうな金貸しの按摩、宗順・金子信雄から高い利子で借金していた。宗順は患者の性感が百倍くらいになるツボを知っているらしく、とよはこのエロ針中毒と化している。

新左衛門は借金の取立てに来た宗順に「女房と一発やっていいから借金チャラにしろ」と言い出した。新左衛門にあきれ返る宗順であったが、実はまんざらでもない。しかし、そこはそれ金にちっちゃい男であるから「5両(借金総額は62両、利子分が12両らしい)で」と値切り交渉。新左衛門が他所で産ませた男子、新一郎・田村正和が帰宅し一部始終を目撃。正和、大ショック。逆上した新左衛門が宗順をスプラッタに惨殺し、新一郎に手伝わせて近所の川へ死体遺棄。これで少しは懲りるかと思いきや、ジャンボなお色気をふりまく女中、おくま・春川ますみを雇った新左衛門はさっそく彼女を妊娠させてしまう。性欲溢れまくりのおくまはルックスが抜群の新一郎に目をつけ、まだ童貞だった新一郎を力づくでモノにしてしまうのだった。

初体験の相手が春川ますみだったことが人生のトラウマとなったらしくマサカズはこの後、転落人生を歩むことになるのである。

新一郎は行方不明。そこへ偶然現れた按摩に宗順の幻影を見た新左衛門は按摩ととよを斬り殺し、ついでに錯乱して自分の刀に喉を突かれて即死。そんな惨劇の直後、次男の新三(父:新左衛門、母:とよ)を連れて外出先から戻ったおくまは血の海をものともせず金目のものを奪って逃走。一人残された新三もまた行方不明に。

数年後、新一郎は立派な不良青年に成長し、インチキ切腹芝居で裕福な質屋の惣兵衛・北村英三に取り入り、そこの女中であるはな・賀川雪絵に目をつける。はなは針打ちが得意という変わった娘であったがセックスの最中のその針が頚動脈を突き刺してしまい彼女は絶命。新一郎は質屋の金蔵を襲撃し、大金を奪って逃走。お尋ね者になった新一郎はとうとう役人と捕らえられ死罪が決定するが、護送中にまたもや逃亡する。

さらに十年後。浄瑠璃師の豊須賀・川口小枝は歳は食っていたが美人でセクシーと近所でも評判の師匠であった。職人に拾われた新三・川津裕介は豊須賀の弟子の一人であるお久・桜井浩子という恋人がありながらも、金目当てで豊須賀に誘惑されたフリをして若いツバメとなり、二股生活をエンジョイする。ある晩、お久が情事の現場に踏み込み、乱闘の最中に豊須賀は顔面から大流血、そこから雑菌でも入ったらしく醜い腫れ物ができてしまう。こうなると新三の暗黒面が表出しはじめ、豊須賀のルックスへの愛情ゼロとなり、とうとう豊須賀を絞殺し、彼女が蓄えていた大金を強奪、お久とともに逃亡生活へ突入

ここで因縁。お久とはなは実は姉妹でその母親というのがおくまなのであった。新左衛門のDNAが新一郎と新三に受け継がれてグレまくったように、お色気DNAは二人の娘にしっかりと繋がっていたのである。

逃亡途中、新三とお久は小塚原で処刑される罪人の行列に出くわす。それは強盗殺人のあげくに逃走し公務執行妨害も科刑された新一郎であった。新一郎は幸せだった昔を思い出し、可愛かった(小さい頃は)弟の新三の名前を叫んで斬首された。累が淵にたどり着いた新三とお久は豊須賀の幽霊に惑わされ新三はお久を拾った鎌で殺してしまう。錯乱した新三はさっきの死刑囚が実の兄であることを発見。さらに新三は後を追ってきたおくまから、姉であるはなの父親が宗順であり、お久と新三は何を隠そう兄妹だと聞かされる。新三はすべての因縁を知って精神があぼーんしてしまい、義理のお母さんであるおくまを殺して、自殺するのであった。

お行儀の良い松竹とは思えないほどの血みどろ場面の連続。なまじ白黒映画なので口から迸る血のりがまるでコールタールのように見えて、リアル以上の気色の悪さが効果満点。おまけに不味そうだ。

2007年09月17日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2007-09-23