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女探偵物語 女性SOS


■公開:1958年

■制作:東宝

■製作:田中友幸

■監督:丸林久信

■助監督:

■脚本:若尾徳平

■原作:中山保江

■撮影:山田一夫

■音楽:宅孝二

■編集:

■美術:浜上兵衛

■録音:上原正直

■照明:小島正七

■主演:白川由美

■寸評:ワイルドな平田昭彦(様)VSジェントルマンな土屋嘉男、この絵柄が最大のウリ(たぶん)。

ネタバレあります。


白川由美の主演作品といえば地方の高校を舞台にした「林檎の花咲く町」くらいしか思いつかないが、といってもどんな映画なのか見たことある人がそもそも少ないと思われるが、お嬢様ぞろいの東宝にあって準主役クラスの女優さんというイメージが強い。プロポーションのよさと美貌が最大のウリである反面、およそどんな役柄を与えられても表情が乏しく、かつ、理知的な魅力といえば聞こえは良いが頭のカタい学級委員みたいなとっつきにくさも相まって、いまひとつ決め手に欠ける。

そんなクールビューティーが主演した希少なラブコメ映画。

のっけから道路の清掃車に放水攻撃を浴び衆人環視の中でスカートをたくしあげるという大胆な手口に出たのは探偵社に勤務する信江・白川由美。同僚の木下・佐原健二は、要領悪そうだが性格だけは良さそうでちょっとヌケてるところが母性本能を刺激する、そう、いつも彼はそう、そんでもって木下は信江のフィアンセでもある。

ある日、金持ちの令嬢、とくればわがままと映画の中では相場が決まっている西条家のお嬢様、みどり・峯京子が熱を上げている相手の男の身辺調査の依頼が舞い込む。信江はいぶし銀の所長・小沢栄太郎の指名を受けてさっそく「岩田洋一郎」という人物の勤務先へ向かった。岩田洋一郎・平田昭彦(様)はおよそセレブと縁があるとは思われない、お下品でバンカラな人物であった(でもそこが素敵、平田様の信者的には・・うふっ)。信江は洋一郎の学生時代の友達・中丸忠雄のところへも出向くがそこで、同じく洋一郎の身辺調査をしている男、山本・堺左千夫と出会いその場をごまかすために信江は自分が洋一郎の許婚だと答えてしまう。

信江のこの一言が事態を複雑にさせるのだが、それはこの際、置いといて。

山本と信江はみどりの両親・一の宮あつ子林幹がそれぞれに依頼していた探偵だった。どうやら洋一郎が結婚詐欺を働いているのではないかと睨んだ信江は夜の街に出没した洋一郎を木下とともに見張っているとそこに現れたのは「岩田」と名乗るもう一人の紳士・土屋嘉男であった。洋一郎の話によると、その男、みどりが「岩田洋一郎」だと思っている男は実は洋一郎の従兄弟の岩田民夫であり、彼は相当に身持ちが悪く、まだ二十代前半のくせにジャンボなお色気を振りまくバーのマダム・中田康子のヒモをしており、頭の弱い婦女子を次から次へとパクパク喰っていたのだった。

で、すったもんだあって(いや、ほんとうに)みどりはデートの途中で民夫に強姦されそうになったくせに「あの人と結婚できなきゃ死んでやる」くらいな暴言を吐いて信江にひっぱたかれ、浮気の現場に乗り込む寸前に盗聴装置の故障(正確にはコンセントが抜けただけ、まったく佐原健二(注:映画の中での)のやることはいつもこう!)によりマジで信江がピンチになったりなんかして、やっとこさ民夫の正体を目の当たりにしたみどりが婚約を解消し、両親は一安心、身体を張って依頼者をガードした信江と木下は仲良く清掃車の水をかぶってメデタシ、メデタシ。

手ごたえなし、お色気なし、スリルもサスペンスも全然なし、という実に退屈極まりない映画なのだが、特撮ヲタクの琴線に触れるすばらしくゴージャスなキャスティングのおかげでこの映画は歴史に名を残すに違いない、うん、たぶんね。

バンカラで知性の欠片も感じさせないが実直で真面目な平田昭彦(様)、異星人の力を借りることなく(わかる人だけでいいです)女にモテまくりいざとなったら強姦まがいの手口を披露する土屋嘉男、そして瞬間出演の中丸忠雄(当時のポジション的にはそういうこと)それに沢村いき雄と堺左千夫のコメディリリーフも万全で、平田昭彦(様)の放ったおもちゃの矢でお尻をヒットされて「きゃっ!」なんて声をあげるは金星人の若林映子であり、探偵コンビが張り込むホテルのボーイにいたっては加藤春哉である。

まさに特撮だらけの出演者、なのである。

通常、東宝のラブコメ映画に出てきそう、かつ、出るべきスタアが一人も出てこない。宝田明とか久保明とか夏木陽介とか藤木悠らが不在。そのかわり平田昭彦(様)がランニングに短パンという男くささ爆発な肉体美(か?)を披露するのでファンはその瞳にジリジリと焼き付けたまえ。どうでもいいような映画ではあるのだが、ある意味、きわめて冒険的な実験映画であったと言えよう。何の実験なんだかはどもかく。

2007年06月03日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2007-06-17