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東京よいとこ


■公開:1956年

■制作:東宝、東京映画

■製作:

■監督:西村元男

■助監督:

■脚本:池上金男

■原案:関沢新一

■撮影:伊東英男

■音楽:宇野誠一郎

■編集:

■美術:狩野健

■録音:中野倫治

■照明:森康

■主演:南道郎

■寸評:

ネタバレあります。


戦中派(本当に)の俳優、南道郎の高度な運動性能によるスラップスティックギャグと流れるような日本語ちゃんぽんの英語によるマシンガントークが堪能できる小粒な作品。

密輸組織の大物にして殺し屋のデイリー・E・H・エリックは神戸で警察に急襲され東京方面へ逃亡。ちょうどそのころ、すし屋の居候、山下三平・南道郎はプロ野球チームの東京アンギラスのマネージャー・トニー谷に「ハワイ出身の名選手」を売り込もうとしていた。三平にはハワイに叔父さんがいるらしい。その名選手の名前はウィリアム・ラドン・E・H・エリック(二役)という。デイリーを匿って名を上げようとしていた新興やくざの親分、砂川・三井弘次はラドンをデイリーと間違えてしまう。

プロ野球選手とギャングの大物が瓜二つだったことで映画は一気にドタバタへ突入。

アンギラスのプロテスト受験のためにラドンと三平は球団に向かうが砂川の手下、パン猪狩(注:「レッドスネーク、カモン!」のショパン猪狩の実兄)、加藤春哉中村是好らによってどぶ川河口の倉庫に軟禁されてしまう。東京に現れたデイリーは刑事・天津敏に身元が割れると拳銃を取り出して逃亡。寿司屋のおやじ・宮田洋容、娘のお妙ちゃん・光丘ひろみが心配する中、デイリーとラドンは倉庫で接近遭遇。正体がバレたラドンがあわや撃ち殺されそうになったとき、警官隊が駆けつけ、デイリー、砂川たちは逮捕された。

晴れてプロ野球選手としてデビューしたラドンであったが優勝が掛かった大事な一戦であえなく三振。審判・二出川延明(本物)のコールによってゲームセット。東京アンギラスの監督・小西得郎(本物)は敗戦を解説し、敵チームのキャッチャー・森繁久彌が観客に勝利の挨拶をした。しょんぼりしてしまったラドンを三平たちが慰めてくれた。

十二月八日をジョン・レノンの命日と記憶している日本人が大多数を占める平成の世であるが、日本語ぺらぺらのE・H・エリックは十二月二十五日を大正天皇崩御の日だと南道郎に教え「日本じゃ英語ができりゃあ学があると思われるんだってな!(馬っ鹿みてえ!)」と米国を盲目的に信仰する日本人のふにゃふにゃぶりを説教する。右翼の街宣車が似合う男、南道郎がアメリカ人(正確にはオランダ人とハーフだが)に説教される絵柄を見て、人にはそれぞれの歴史があるものだなあと感嘆せざるを得ない。

国史をないがしろにして英語教育を優先せんとする平成の教育改革の是非について、すでにこの頃、指摘されていたとは!すごいぞE・H・エリック!っていうか関沢新一?どうでもいいけどそういう映画じゃないんだと思うが歴史というのは面白いもので、添え物映画にこんな見方を与えてしまうのだ。そういう客がほかに居るかどうか知らんが、どうでもいい。

E・H・エリックの二役は、こわもてのギャングとお人よしのスポーツ選手というギャップの激しさがウリ。小柄な南道郎との凸凹コンビはテンポも見た目も将来性を期待させるものだったけれども知る限り、この二人の競演は二本のみらしい。

アンギラスにラドンだとおっ!なめてんのか!とでも言いたくなるがシスター映画は駄洒落の世界、真面目に考えてはイカン。このほか近所の馬鹿っぽい酒屋の店員・有島一郎がゲスト出演。

2007年05月13日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2007-05-14