南海の花束 |
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■公開:1942年 ■制作:東宝 ■制作:森田信義、伊藤武郎 ■監督:阿部豊 ■脚本:阿部豊、八木隆一郎 ■原作: ■撮影:小原譲二 ■音楽:早坂文雄 ■編集:後藤敏男 ■美術:北猛夫、 北辰雄 ■照明:大沼正喜 ■録音:樋口智久 ■特撮:円谷英二 ■主演:大日方伝 ■寸評:日本の民間航空の草分け、大日本航空株式会社が協力。 ネタバレあります。 |
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真珠湾攻撃は1941年12月8日。日本がまだ悪い意味の八紘一宇だった頃。 航空会社の南洋支社に新しい支社長が赴任してくることになった。外地の開放的なムードがそうさせるのか?単なる暑さのせいなのか?ここの従業員は規律緩めで自律性は低い。現支社長・菅井一郎は当らず触らずでなんとか衝突をやり過ごしていたのであった。 新支社長は五十嵐・大日方伝といい、片足に障害がありスマートなルックスに似ず顔おっかなく(メイクが笑っちゃうくらいすごい)厳格そのもの。古参の操縦士、堀田・真木順は五十嵐とは旧知の仲らしい。五十嵐を空輸してきたヴェテランの操縦士、西條・清水将夫は「着水が乱暴だ」とケチをつけられた上に禁酒を言い渡されて面白くない。ていうか酒気帯び運転の常習者だったいうほうが問題なのだが。西條は無事故の実績で反発、しかし「(過去の実績が将来を保証するものではないので)そんな自信よりも大切なのは細心だ」とロジカルに反論されてしまう。 従業員教育とともに管理を徹底する五十嵐は、全員に健康診断を実施。診断の結果、若い操縦士の石川・田中晴男が視覚の異常を理由に地上勤務を命じられる。がっかりした石川はなんとか空を飛ばせてもらおうと堀田に頼み込むが五十嵐の性格を知る彼にはどうすることもできない。 不人情な五十嵐のやり方に大ブーイングの操縦士たち。実は五十嵐の片足の障害は堀田の操縦ミスによるもので、操縦士の夢が絶たれた人間の悔しさを誰よりも知る五十嵐であるから、石川の気持ちがわからないはずがなく、よほどの理由によるものであろうと堀田は五十嵐の考え方を他の操縦士たち・竜崎一郎らに説くのであった。 石川の代わりに郵便物の輸送を担当した原田・大川平八郎と伏見・月田一郎は嵐の中を飛行中、燃料漏れが発生、やむなく荒れる海上に不時着を敢行し行方不明。他の従業員と原田の妻・堤真佐子は五十嵐の管理者責任を追及する。そんなどたばたの最中に内地から新任の操縦士、日下部・河津清三郎はやってくる。彼もまた五十嵐の知り合いらしい。事故調査委員会・進藤英太郎らの結論によれば原因は天候ではなくエンジントラブルらしい。五十嵐のミスではないことに日下部はほっとするが、行方不明の操縦士の家族にとってはそんなことどうでもいい。ただ、輸送していた郵便物だけはブイにくくりつけられて無事だったと報告がなされ、原田の決死の努力に感動する五十嵐であった。 原田は近くの島の漁船に救助されていた。しかし臨月の妻・谷間小百合を残していった伏見の子供は生まれて2日目に死んでしまい、伏見は初めての子供を見ることができなかった。いよいよ日本が本格的に南半球へ進出するにあたり、赤道を超える南太平洋の空路開拓が予定されていると知った操縦士たちの胸はワクワク。その第一号として五十嵐が指名したのは日の浅い日下部であった。退職間近の堀田は日下部に「最後の花道」を理由に代わってほしいと懇願する。外見はゴツイが性格は親切な日下部は最終決断を五十嵐に託す。現地へ空輸されてきた4発飛行艇を見た石川は、操縦士復帰が絶望になったことを苦に発狂してしまう。 晴れて第一号に任命された堀田であったが赤道通過目前に行方不明となる。堀田の妻・杉村春子が、第二号に任命された日下部に、かつて五十嵐が愛用し、堀田が譲り受けたパイプとたばこを遺品として遭難現場に投下してほしいと頼みに来る。日下部は快くひきうけ、現場で黙祷をささげた後、花束といっしょに遺品を落とし空路開拓のために命を落とした同僚たちを悼むのであった。 で、タイトルは「南海の花束」というわけ。 国策映画というと、きな臭くてうそ臭くて胡散臭いという先入観は捨ててよい。ただし南洋委任統治地が日本領だった頃なのでその点においては「いかがなものか?」と平成の時代の観客は腫れ物に触るような気がしないでもない。そういう歴史的ダメ点を差し引いてもこの映画は公共の利益のために努力する人々の姿が清々しく描かれており、ドラマも波乱万丈、プロフェッショナルとして道義的責任を感情に優先させる男たちの物語に仕上がっている。ってまるで「プロジェクトX(注:2000年3月28日から2005年12月28日までNHKで放送されていたドキュメンタリー風ドラマ、後半は情緒過多および美化過剰な演出で一部の関係者が眉をひそめることもあったという)」みたいだが、そういう感じ。 戦前(太平洋戦争)なので出演者が皆、驚くほど若いのだが、戦後のオッサンになった姿しかほとんど診たことが無い田中春男と河津清三郎はハリウッド映画に出てても違和感のないくらいカッコいい優男だったのが驚き。清水将夫もちょっと不良っぽいところが男くささと相まってやたらとカッコいい。かように戦前の日本の男性俳優はみなカッコよかったのだが、プリントが残っていない作品が多いと聞くたびに、なんとまあモッタイナイこと!と嘆息しきりだ。 日本の二枚目俳優を愛好する筆者にとっては希少な眼福映画であった。 飛行艇のシーンは半分くらいが特撮であとは実写、特に4発式は本物と実写なので航空マニアは必見なのかも、よく知らないけど。プロペラがひとつしかない既存の飛行艇のシーンは特撮。また、飛行艇から海面を見下ろすシーンもある。特撮と実写と比較するのも難だが正直、あまり違和感がないのが驚き。 (2007年03月11日 ) 【追記】 |
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※本文中敬称略 |
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file updated : 2007-03-11