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雌が雄を喰い殺す 三匹のかまきり


■公開:1967年

■制作:松竹

■制作:升本喜年

■監督:井上梅次

■脚本:池田一朗、井上梅次

■原作:

■撮影:丸山恵司

■音楽:広瀬健次郎

■編集:大沢しづ

■美術:平松時夫

■照明:佐久間丈彦

■録音:大谷巌

■主演:根上淳(功労賞)

■寸評:

ネタバレあります。


筆者はかつて地元の商店街をうろついていたときこの世の不機嫌を凝縮したような仏頂面で大型の乗用車を運転しているダンディーなおじさまを目撃したことがある、根上淳であった。たしかにカッコいい、二枚目だ、しかしながらこれといって映画に当たり役がない(ていうか知らない)、しかし有名である。「帰ってきたウルトラマン」の隊長として(しか)知られている(いない)そのキャリアがあの難しい顔の根源であるとしたらちょっと辛いが、この作品を見る限り、鼻っ柱の強さとともに意外すぎるくだけた一面もお持ちであったと思われる。

プレイボーイの大場・根上淳は勤務先の服飾メーカーで専属モデルを務めているジュリー・佐藤友美を愛人として囲い週に二度きちょうめんにセックスをしている。その光景を隠し撮りした8ミリフィルムを暗がりで鑑賞している若い男・入川保則とサングラスの女がいた。

大場の会社は、社長が超ワンマンで顔も鬼瓦な軍平・内田朝雄、専務は息子の昭・穂積隆信、腹違いの妹で現在独身中のあかね・岡田茉莉子、以上3名の重役で仕切られており、大場は昭にスカウトされて入社し、現在は部長である。不細工の分際で女好きで、いまさら芸者に子供を生ませた軍平はその子に会社を継がせようとしていた。

大場の妻は喫茶店でバリスタやってた洋子・香山美子だが、彼女は昭の元彼女であった。昭は大場に、あかねを誘惑し結婚するように依頼する。洋子は昭が誘惑して浮気させるからそれを責め道具にして離婚する。ビジネススキルは高いあかねだが、父親に無理やり離婚させられた辛い過去があり男日照りなので、テクニシャンの大場なら落とせるという。昭はあかねを子持ちにして仕事に専念できないようにして、会社を我が物にしたいのだった。

大場はあかねにモーションをかけるが、そこをジュリーに目撃されてしまう。ちょうどその頃、洋子が海難事故で行方不明になってしまう。想定外の幸運に浮かれる大場であったが、それはあかねも同様で、二人は婚前旅行に出かける。宿泊先のホテルに奇妙な電話がかかってくる。大場はその電話の声に聞き覚えがあった。

電話の不気味な声は洋子であった。彼女はちゃっかり救助されていたが夫のたくらみを見破り死んだふりしたまま大場を脅迫する。とうとう大場は三股生活を強いられることになった。さすがの性豪も徐々にED気味となりセックスドクター・大宰久夫の診察をしてもらうのであった。

あいかわら女好きの昭が、定宿にしていたホテルで変死する。警察は社内で対立関係になっていた大場に疑いの目を向ける。その矢先、ワンマン社長が自宅で禿げアタマをカチ割られて殺されてしまう。直前まで口論していた大場にまたもや嫌疑がかけられとうとう大場は逮捕されてしまうのだった。大場と関係のあった女たちの証言はいずれも彼に不利なものばかり。絶望の大場に下った判決は死刑。彼は放心状態で刑務所へと送られていった。あかねは会社の社長に就任し、全国から同情票を集めて業績はうなぎのぼり。

ジュリーは、洋子とあかねが組んで会社乗っ取りを企んだことを探り出し、あかねに接近する。あかねはジュリーに強烈な薬物を渡し、洋子殺害を唆す。あかねは返す刀で洋子にジュリーを事故死に見せかけるように仕向けるのであった。

ったく、どいつもこいつも身の程知らずに女好きな野郎ばかりで呆れかえる。とりあえず二枚目の根上淳はともかく、金で女をモノにしまくりの軍平と昭の親子はいっそ地獄へ落ちてしまえ!と思ったら本当に落ちやんの。

石原裕次郎映画の監督として名をはせたがミュージカルへの夢絶ちがたく、「黒蜥蜴」という奇天烈な作品を経て、土曜ワイド劇場「明智小五郎シリーズ」で天知茂ととともにやりたい放題なカルト作品を残した剛の者、井上梅次が女性の権利と自立を訴求した(か?)「かまきり」映画の第二作目。

とにかくセックスシーンのオンパレードである。乳首大好きっ子の井上梅次はタイトルバックにおっぱいとヌードの大サービス。まさに男性天国の予感。無類の女好きに下った天罰映画かと途中までは思っていたが、雄を食い殺す雌かまきりが正体を現す後半は、雌対雌の底の浅いかけひきが見所になって、きれいな女優さんたちがばかすか死んでしまう。こうなるとカマキリというよりは狸の化かしあいに近い。

映画デビューしてすぐなのにハリウッド女優も尻尾巻いて逃げ出すほどのコケティッシュな魅力をふりまく佐藤友美。抜群の行動力も発揮し、優れた運動性能(あかねの別荘に草むらからフェンス乗り越えて侵入の図、ただしパンチラとかはなし)も披露。

こんだけの犯罪を犯す原因になったのが入川保則っていうのが説得力ないけど、意外性はあり。

2007年02月25日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2007-02-25