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最後の特攻隊


■公開:1970年

■制作:東映

■制作:大川博

■企画:俊藤浩滋、太田浩児

■監督:佐藤純彌

■脚本:直居欽哉

■原作:

■撮影:飯村雅彦

■音楽:津島利章

■編集:長沢嘉樹

■美術:中村修一郎

■照明:銀屋謙蔵

■録音:井上賢三

■主演:鶴田浩二

■寸評:小松方正(ナレーション)は顔を出すと危ないおじさん役が多いが、声だけならバリバリの二枚目。

ネタバレあります。


出た人、作った人、見てる人、それぞれに戦争体験者がたくさんいた時代の戦争映画。

遠慮の塊、情緒過多、そんな軍人いたのかよ?それらをひっくるめてどういうモノサシや枠組で見るかは客の仕事。

大戦末期の話です。ちなみに太平洋戦争のことですよ、よいこの皆さん。

戦局の悪化により海軍は、米軍が続々と来襲しているレイテに兵力の大半を集中。ミッドウエイでボロ負けした後、負け戦続きという責任もあるため海軍としてはこのまま負けるのは仕方ないとしても止めるわけにもいかない。そういうわけで杉浦中将・内田朝雄は、矢代少将・見明凡太朗の反対意見を押し切って必殺必中の特攻作戦を決定。矢代少将はその第一号作戦を指揮する。宗方大尉・鶴田浩二は早速志願し、他の志願兵を選抜。特攻当日、矢代少将が出撃に参加するという。校長先生がいきなり甲子園大会に先発するかのような無茶ぶりに、飛行長の辺見中佐・小池朝雄は制止するがそんなの全然無視。宗方は少将をサポートしつつ特攻せねばならず、それでも矢代少将の「第一号作戦を最後にしたい」という言葉に共鳴して飛び立つ。

少将は見事に敵艦へ体当たりしたが、宗方は直前に被弾した少将の機体を守るために爆弾捨てて、しかも無事帰還してしまう。菊地中佐・藤山浩二にののしられ、カーッと来た宗方であったが、そこへ母親・三益愛子の心配をふりきって矢代少将の遺児、矢代”ジュニア”中尉・高倉健が特攻志願してくる。内地へ一時戻された宗方はそこで美人の奥さん・藤純子から妊娠を告げられる。再び外地へ戻った宗方と、頭の固い矢代ジュニアは微妙に衝突。しかしながら相手は先輩、長幼の序を一応はわきまえていたジュニアであった。ある日、吉川飛鳥・渡辺篤史が「整備不良」を理由に特攻しないで戻ってきた。過去において「生還」の前科がある吉川が整備の責任だという発言をしたことに怒った荒牧上整曹・若山富三郎に対し、宗方は実証実験を試みて高空での異常発生を杉田少尉・待田京介に連絡してきた。

粗暴でインキン持ち(しかも重症らしい)だが精神的な大人の荒牧と違い、矢代ジュニアは吉川をかばう宗方に怒り爆発、殴り合いにまで発展する。「吉川の死ぬ覚悟ができるまで待ってあげよう」と宗方に諭されるジュニア。吉川には盲目の母・笠置シヅ子がただ一人の身内。ある晩、吉川は意を決して脱柵する。母親は「そんな卑怯なことをするな」と吉川を家からたたき出す。吉川はやっと死ぬ覚悟をするが整備班に回されてしまう。被弾して火災を起こした特攻機が爆弾を抱いたまま帰還した。このまま爆発したら基地まるごと吹っ飛ぶ機体に、なんと吉川が乗り込んで離陸する。爆弾は装置の故障で切り離されることなく機体は飛散した。吉川の遺骨を前にした母は「こんなことなら卑怯者に育てればよかった」と号泣。

いよいよ敗戦ムード濃厚となり、宗方もジュニアも出撃の時期が迫る。ジュニアは嘘ついて宗方を呼び出し、生まれたばかりの赤ちゃんを抱えてきた奥さんと会わせてあげるのだった。宗方たちの任務は特攻隊を無事に送り届けること。ジュニアと予備士官たちの出撃の日が決まる。

たった一機で敵艦一隻沈めた矢代ジュニアも含めてほぼ全員を無事に特攻させた宗方たちが基地へ戻ると、荒牧が一人で大酒をあおっていた。唖然とする宗方に、荒牧は「さっき戦争が終わった、上層部は10日前からわかっていた、それでも特攻を出し続けた」と告げて泣き崩れた。杉浦中将は切腹した。宗方は荒牧の体当たりの制止を振り切って一人、基地を飛び立った。

この映画はモノクロであるが、最後の出撃シーンのみカラー。

戦争が終わったとたんに、基地がもぬけの殻になるという切り替えの早さがクールだ。指揮官たちはどこへ?特攻に送り出した人たちはどこへ?全員切腹、したわけないよ、ね。

身長(と運動性能)で圧倒的な高倉健と小柄な鶴田浩二の殴り合いというだけでもこの映画の興行的価値は高いと言える。無理やりなオールスターもすごい。瞬間顔出しの特攻隊員・伊吹吾郎菅原文太渡瀬恒彦千葉真一(なんかもう、あれ?っていうくらいの瞬間出演)、宗方の父・笠智衆なんて出演理由が理解不能だし。

宗方の片腕である、たたき上げの堂本上飛曹・山本麟一は、予備士官で特攻志願したアタマでっかちの弟、堂本少尉・梅宮辰夫の批判的意見に対し「お前みたいにきちんと意見すら言えない二十歳前の子供たちに特攻なんか命令できるか!」と心情を吐露する。純粋な若者をガチンコで諭す人生経験豊富な年長者、結果として素直に精神的な成長をしていく若者。こういうの、いいなあ、でもみんな死んじゃうんだ、戦争じゃなかったらよかったのにね。

2007年02月04日

【追記】

※本文中敬称略


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file updated : 2007-02-04