乱れる |
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■公開:1964年 ■制作:東宝 ■制作:藤本真澄、成瀬巳喜男 ■監督:成瀬巳喜男 ■脚本:松山善三 ■原作: ■撮影:安本淳 ■音楽:斎藤一郎 ■編集:大井英史 ■美術:中古智 ■照明:石井長四郎 ■録音:下永尚 ■主演:高峰秀子 ■寸評: ネタバレあります。 |
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加山雄三は主役をしていないと単なる馬鹿だが、黙っていればこれほど雄弁で美しい男優もいないのではないか?と思われるくらい絶品である。実に映画的な俳優ですな。 戦後の復興が地方都市にまで及ぶ頃、進出してきたスーパーマーケットの清水屋に客を取られてしまった地元の商店主たち・十朱久雄、佐田豊は真昼間からパチンコ、マージャンに明け暮れる日々。 清水屋の半額セールの宣伝トラックの荷台にはいけすかないスーパーの営業マン・藤木悠、中山豊(背広が驚くほどアンマッチ)が乗っている。商店街をこれ見よがしに走り去るトラックを、イラっとしながら見送っていたのは、焼け跡にバラックを建て、婚家の舅と一緒に森田屋酒店を切り盛りしてきた礼子・高峰秀子である。彼女はわずか半年の結婚生活で夫に戦死されたのだが、実家に戻ることなく婚家の再建に尽力した地元で評判の「できた嫁」であった。 森田屋の構成員は、銀行員・北村和夫に嫁いだ義妹の久子・草笛光子、バツイチで再婚した孝子・白川由美、ぼさっとしているように見えて意外としたたかな義母のしず・三益愛子、そして、大学出て都会で就職したのにあっという間に退職してしまい、現在ニート生活をエンジョイしている義弟の幸司・加山雄三。それと、バイク大好きな店員・西条康彦であった。ある晩、幸司はバーで清水屋の営業マンとトラブルを起こし、警察沙汰になってしまう。礼子が保証人となって身請けに行くと、幸司は悪びれるふうもなく、かといって反省をしているようでもあり、礼子にとっては今もっとも心配の種が幸司であった。 大量仕入れで低価格を実現する清水屋。女は歩く自由経済であるから、昔馴染みのおかみさんですら「あら、スーパーより高いのね」と森田屋の店先で嫌味満点の値引き交渉をしてくるようになり、礼子はいよいよ店の行く末が心配に。食料品店の店主・柳谷寛が自殺した。原因は経営不振であった。そのころ幸司は久子の夫に、スーパーのフランチャイズ店になることを提案中で、ゆくゆくは自分が経営者になり、今まで世話になりまくった礼子を重役として迎えたいと考えていた。 家を出ていた久子と孝子は、いずれは結婚するであろう幸司のお嫁さんと礼子との軋轢の予感、および、あまり遠くない将来に訪れるしずの遺産相続問題への懸念から、礼子を実家に返すことをしずに進言していた。建前上はまだ若くてきれいな後家さんの礼子に第二の人生を、ということであったが本音は金銭。経営者としての自覚に目覚めたのか、まじめに働くようになった幸司はもともと優秀であったビジネススキルと健康体にモノを言わせて、デリバリーサービスに奔走。出番のなくなった礼子はなんとなく手持ち無沙汰になってしまう。 ある日、礼子は幸司から「好きだ」と告白される。義理の姉と弟との禁断の愛。「だめよダメダメ!」禁欲的な人生を自分に科してきた礼子的にはそんなの全然無理なのだ。しかし、女ざかりの礼子であるから、心の奥底にぽっと火がついてしまう。「このままではダメになっちゃう!」と、そんなこんなで礼子は森田家を出る決心を固める。 いたずらっ子が好きな女の子の机に生きたカエルを入れておくのと幸司のヤンチャは同レベル。そこいらへんのはしっこそうな男優がやったら単なるクサミになりそうなくらいの直球勝負の幸司という役柄は加山雄三以外にちょっと見当たらない。 「好きな人がいます」宣言を、小姑と姑の前で実行した礼子は、その足で汽車に乗り森田家を出て行った。ふてくされた幸司は駅まで見送るのを拒否。ところが動き出した汽車にはなんと幸司が乗っていた。びっくり&ドキドキの礼子。禁欲的な自分と違い、純粋で豪快に食って豪快に寝る幸司の素直さにぐいぐいっと惹かれてしまう礼子であるった。礼子と幸司は温泉町の駅で途中下車する。幸司の愛を礼子は受け入れられるのか・・・ 幸司は最初からずーっと礼子が好きなのである。途中でアプレなセフレの女・浜美枝が出てくるが、残念なことに浜美枝にはそういう下品な感じがゼロなので、幸司の捨て鉢感がいまいちなのは惜しいところなのだが、とにもかくにも幸司があまりに天然なので、礼子の苦悩に観客は存分に共感できる。 空気読め!と幸司(っていうか加山雄三)に言っても無駄というオーソライズが簡単に得られるところがこの映画の肝だ。 そんなわけなので、最後は本当に意外すぎ。まさに「乱れる」デコちゃんの驚愕の表情が、客の、おそらくは何人かは「なんでだーっ!幸司!(っていうか加山雄三)」と心の中で慟哭、と、ものの見事にシンクロ。だからこの映画は加山雄三を得た段階で完全勝利という感じ。 (2007年01月28日 ) 【追記】 |
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※本文中敬称略 |
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file updated : 2007-01-28