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乱歩地獄


■公開:2005年

■制作:アルバトロス・フィルム

■制作:宮崎大

■監督:竹内スグル「火星の運河」、実相寺昭雄「鏡地獄」、佐藤寿保「芋虫」、カネコアツシ「蟲」

■脚本:竹内スグル「火星の運河」、薩川昭夫「鏡地獄」、夢野史郎「芋虫」、カネコアツシ「蟲」

■原作:江戸川乱歩

■撮影:竹内スグル、八巻恒存、芦澤明子、山本英夫

■音楽:ゆらゆら帝国(エンディングテーマ)

■編集:

■美術:

■照明:

■録音:

■特撮:

■主演:浅野忠信

■寸評:

ネタバレあります。


 この作品はオムニバス形式、全4話。北村道子の衣装がひょっとしたら俳優よりも雄弁。

 「火星の運河」。放送事故かと思われるほど長い、無音の黒味画面。「2001年宇宙の旅」ならここで「ツァラトゥストラはかく語りき」だな、などと思っていたらノイズとともに全裸の男・浅野忠信が寒そうな草地をとぼとぼ歩いて、眼前に現れた丸い黒い池のほとりにたどり着く。インサートされるのは幽霊の出そうな廃墟でくんずほぐれつしている男と女。観終って気がつくのだが、この、ここがどこで今がいつなのかさっぱり不明な映画のプロローグがこのパートなのである。

 浅野忠信は全作品になんらかの役割で登場する。

 「鏡地獄」。可愛い娘を縛って叩いて埋めちゃう実相寺昭雄監督。男癖の悪そうな女たちが集って開催された茶会。その主催者である師匠が突然死、しかも顔面崩壊というプレミア付。捜査を担当するのは胡散臭さ爆発の刑事・寺田農堀内正美のコンビ。そこへアブナイ事件大好きな名探偵、明智小五郎・浅野忠信がどう見てもお小姓さんとしか思えない小林君を連れて登場。明智は現場に残された和鏡に注目。その作者は高級文具を扱う商店の若旦那、透・成宮寛貴。母親・原知佐子は長患いでほぼ寝たきり。若い後家さんは義理の弟である美青年の透とSMプレイに夢中。そして第二の犠牲者が、茶会の出席者から出てしまう。明智は死亡推定時刻に近所の踏み切りの信号が誤作動したという証言を手がかりに、和鏡に仕組まれたトリックを見破る。

 鏡張りの球体の内部に入ったらどんな風に見えるのか?ということよりも、笑うと爬虫類系の透ちゃんの、イケてる変態演技が素晴らしく、面白い。

 「芋虫」。出た、出た!中学生のときついうっかり「踊る一寸法師」と一緒に読んでシマッタあの作品はついに映画になっちまった。大きな目以外の感覚器官と手足を失った傷痍軍人とその貞淑な妻(原作では、ね)。ビジュアル的には怖いものがあるが、ラストは思わず泣いてしまったあの原作。

 明智小五郎・浅野忠信のところへ手足のホルマリン漬けを撮影した悪趣味なフィルムが送付される。芋虫状態の元軍人・大森南朋とお色気ムンムンの妻・岡元夕紀子と一緒にどことも知れない廃屋のような離れに住み、毎晩、ヤルことはヤッテル二人の姿を母屋に住んでいる美青年・松田龍平が覗き見している。二人のプレイはエスカレートしていき、ついに妻はその手足を切断してしまう。

 「芋虫」と「陰獣」と「パノラマ島奇談」がいっしょくた。原作読んだ身としては「おいおい」って感じだが、だって、そのプレイとかそういうんじゃなくて「ジョニーは戦場へ行った」くらいの感動だったのになあ。

 「蟲。」最後はまさに、っていうか「火星の運河」「鏡地獄」「芋虫」で「蟲」っていうこの順番でますます絵柄が派手でよくわかんなくなっていく。

 頑固な皮膚病を患っている・浅野忠信。皮膚科の主治医・田口浩正は心因性のものだと診断するが男はどーも納得がいかない、薬かなんかで治らないのかなあ、と思っている。男の仕事は運転手、しかも超人気女優・緒川たまきのお抱えである。女優は毎晩、恋人たちと密会を重ねている。妄想の楽園で女優を独占した男は、現実と幻想との間を行ったりきたりするうちにブリーフ一枚で商店街に出現し「すいませんでしたあ!」と頭をさげ、優しいお巡りさんに自宅まで送ってもらうのであった。

 ってさっぱりわかんないでしょうが、そういう映画。緒川たまき嬢の体当たり(ある意味)の演技が悪趣味テイスト満載だが、「徳川いれずみ師・責め地獄」のハニー・レーヌのほうが凄いぜ、なにせ蝶々みたいなダンス踊らされちゃうんだからな。

 江戸川乱歩といえば石井輝男である。人体をバラバラにしてみたり、ボディペインティングしてみたり、やっぱり「地獄」は石井ワールドの狂気にトドメをさすんじゃないかと、ますます自信を深めた。深めたからといって本作品の面白さが半減することはないので安心してね。若い映像作家たちが(実相寺昭雄は除く)挑んだ狂気の世界感のバリエーションを楽しむ、悪趣味お子様ランチ。

2006年12月16日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2006-12-17