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潜水艦イ−57降伏せず


■公開:1959年

■制作:東宝

■制作:堀江史郎

■監督:松林宗恵

■脚本: 須崎勝弥、木村武

■原作:川村六良

■撮影:完倉泰一

■音楽:團伊玖磨

■編集:黒岩義民

■美術:清水喜代志

■照明:森弘充

■録音:刀根紀雄

■特撮:円谷英二、荒木秀三郎、有川貞昌、渡辺明、岸田九一郎、向山宏

■主演:池部良

■寸評:海上自衛隊協力映画、一部「太平洋奇跡の作戦キスカ」に流用

ネタバレあります。


 バカ!良ちゃんのバカ!

 潜水艦の内部は実にせまい。小学校に上がる前の筆者がそう思ったのだから大人にとってはマッチ箱以下のような感じだったかもしれない。凝縮された空間で運命を共有した人たちの物語。

 昭和二十年、敗戦濃厚の日本。マレーシアのペナン島に向かったイー57潜水艦の館長、河本少佐・池部良は現地の司令官・高田稔と横田参謀・藤田進から「和平工作のため外国の要人をカナリー島へ輸送せよ」という極秘任務を言い渡される。和平、つまり日本が降伏する手助けなんかするもんか!と熱血タイプの河本は拒否しようとするが、すでに戦争の継続が困難であること、負けるどころか条件次第では日本がなくなっちゃうことのほうがマズいと説得され不承不承であったが命令を呑む。

 艦に戻った河本は先任将校の志村大尉・三橋達也に事情を打ち明けるが、河本よりもさらに軍人魂炸裂の志村は部下のモチベーション低下を心配しつつも艦長への厚い(てか、熱い)信頼ゆえに命令に従う。某国の外交官であるベルジェ・アンドリュー・ヒューズとその娘、ミレーヌ・マリア・ラウレンティを収容したイー57の荒くれども・南道郎中島元宇留木耕嗣石田茂樹、そして炊事担当・大村千吉は全員もれなくほぼ女日照りだったため超ドキドキ。そんなやんちゃ坊主たちを自分の息子のように可愛がる水雷長・織田政雄。もともと日本人が嫌い(肌の色が違う!とほざく)なうえにクソせまい、かつ、不衛生(たぶん)な艦内にイライラしていたミレーヌは「水あびがしたい!」とワガママを言い出す。

 ジェントルマンで英語が堪能な軍医長・平田昭彦(様)と乗組員たちの我慢の賜物でなんとかこのワガママ娘のゼータクな要求を果たしつつ目的地へ向かうイー57潜水艦。しかし赤道通過の暑さのためか無線機が壊れてしまう。ちょうどそのころ、ペナン島の基地へはすでに和平工作の余地はなくただちにポツダム宣言の受諾をしなければならないという状況の悪化が伝えられていた。そうとは知らないイー57潜水艦の河本は、敵の駆逐艦に発見されてしまい、やむなくこれを撃破したため、その後は次々と攻撃を受ける。

 ストレスのためか?ミレーヌが発熱。なんとか氷を確保した軍医長に対して「こんなのもうイヤ!死にたい!」と口走るミレーヌ。命を軽んじる輩はどこのどいつだろうが許さんっ!的堪忍袋の緒が切れた軍医長の「黙れ!」(超かっこいー!平田様!)の一喝にコロっと改心してしまうミレーヌ。うんうん、わかるよミレーヌ、平田昭彦(様)に面罵されたらどんなじゃじゃ馬だって腰が蕩けるというものさ(ってそういう話じゃないけどさ)。

 そういえば、平田昭彦(様)は「太平洋奇跡の作戦キスカ」でも軍医長やってたな。「殺してくれ」という部下に「命を粗末にする奴は許さん!」て叫んでた。こういう役、平田昭彦(様)以外には絶対NG(筆者断定)。

 途中、ミレーヌに卵を食べてもらったことを喜んでいた少年兵が死に、その責任を感じてイー57潜水艦を守るために甲板仕官・久保明が囮になって自爆。ミレーヌは日本人を見直し、謝罪。やっと努力が報われたと思ったのもつかの間、カナリー島周辺で待ち伏せしていた三隻の敵艦に対し、艦長の河本はベジェとミレーヌを無事に引き渡すために降伏を決意する。

 二人が艦を離れた直後、修理が終わった無線機に「和平工作のための任務は中止」の連絡が入る。

 ボートで別れ際にミレーヌが河本に向かって「生きていて!」と叫ぶシーンで泣かない奴は正座だ、正座!もう見えちゃうんだよ、ラストシーンが、ここで、ちきしょう!無線機なんかぶっ壊れたままでいればよかったんだ。ベジェとミレーヌが乗った駆逐艦が間に入って必死に止めようとするミニアチュアは本当に模型が演技する、いや、本当に叫びまくっているように見えるんだよ。それでも突進するイー57(と、池部良)、人馬一体じゃなくて人艦一体って感じだ。

 こんなもん見せられたら大概の潜水艦映画なんてガキの遊びだぜ。信じる人に命を預ける、これは男の映画だ、まぎれもなく。

 ひさびさに戦争映画で泣いちゃいました。

2006年11月26日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2006-11-26