「日本映画の感想文」のトップページへ

「サイトマップ」へ


実録新選組 完結編


■公開:2006年

■制作:「実録安藤組」じゃなかった「実録新選組」製作委員会

■制作:水野純一郎

■監督:辻裕之

■脚本: 江良至

■原作:

■撮影:

■音楽:

■編集:

■美術:

■照明:

■録音:

■特撮:

■主演:小沢仁志

■寸評:

ネタバレあります。


 つくづく大河ドラマというのは偉大である。こういう発想が容認される環境を作ってしまったのだから。

 もしもVシネのスタアが時代劇に出たら。こうなったらなんでもありあり新選組、だけど最も実態に近いといえるかもしれない闘争だらけの新選組。

 百姓出身の近藤勇・小沢仁志、土方歳三・寺島進、沖田総司・大沢樹生は立派な武士になることを夢みて浪士隊に加わる。根っからのテロリスト、芹沢鴨・白竜との内紛を経て「新選組」を結成する。近藤が局長に就任した後も内紛は続き、ツートップ体制の危機を回避するために山南敬助・中野英雄の自首切腹を皮切りに、粛清のラッシュアワー。作戦参謀として招聘したが薩摩藩、長州藩に接触するなど裏切り行為が露見した伊東甲子太郎・松田優の暗殺、それにともなう癒し系キャラの藤堂平助・小沢和義の死。

 坂本竜馬・哀川翔の暗殺は得体の知れない浪人たちだったが、新選組に濡れ衣が着せられる。それでも幕府のために、最後まで武士らしくあろうとする新選組は、京都の町で血なまぐさい抗争を続けるのであった。

 しかしながら時代は完璧に幕府消滅の流れ。近藤が信奉していた松平容保・遠藤憲一が敵前逃亡、徳川慶喜もトンズラ。新選組はさらに敗走を続け、逮捕された近藤は切腹させてもらえずに斬首され、沖田は刀を振り回して大暴れの末に血ゲロを吐いて死亡、土方は五稜郭だろうと思われるが予算が底をついたのかスモークをばんばん焚いたセットで一人芝居で憤死。その後の新選組のメンバーの行く末がナレーションで紹介されて映画は終了。

 なりあがりの田舎者が暴力でのし上がっていく構図はよく考えるとちんぴらヤクザのそれと大差ないように思われる。あくまでも見た目においての話。て、ことは「武士になりたい」は「男になりたい」と同意であり、徳川幕府に殉ずるということは組のために一命を賭すということである。

 そのまんま、だもの、この映画。ユニフォームも爽やか系の青と白ではなく、赤と黒、渋いというより秘密結社っぽいところがムードだ。

 本作品はテロリスト集団としての新選組の抗争のみに集中し、そのメンバーは三谷幸喜の、時代劇の仮面をかぶったカレッジものと言われる大河ドラマ「新選組!」において確立された「やってることはヤバイけど本当はいい奴だった」という解釈の真逆。やってることにキャラクターをフィットさせたとしか思えないヤバイ連中ムードがむんむん。なにせ画面の9割以上を男性が占めるという、女優なんかどうでもいい観客(筆者含む)にとってはまさに至福の構図。

 白竜、小沢仁志、哀川翔(は、ともかく)、Vシネマの俳優たちは技術的には、特に活舌の悪さは国宝級であるけれども、お粗末な面も多々あるが、条件の厳しい中で数をこなした器用さと、クサミをものともしない思い切りのよさ、そしてなにより運動性能の高さが買いだ、殺陣の上手さじゃないけどさ。

 技術はともかく抜群の運動性能とハッタリ力を持ったVシネのスタアたちに時代劇のエッジになってもらおうではないか。そのトリガーとしてぜひにオススメ。

2006年11月19日

【追記】

※本文中敬称略


このページのてっぺんへ

■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2006-11-19