フレッシュマン若大将 |
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■公開:1969年 ■制作:東宝 ■制作:藤本真澄、大森幹彦 ■監督:福田純 ■脚本:田波靖男 ■原作: ■撮影:逢沢譲 ■音楽:広瀬健次郎 ■編集:永見正久 ■美術:本多好文 ■照明:森弘充 ■録音:刀根紀雄 ■主演:加山雄三 ■寸評: ネタバレあります。 |
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家電製品や社会的インフラの進化はあっても出演者の年齢と容貌が変化しないテレビアニメの「サザエさん」と異なり、若大将は実写で生身であるから経年劣化には抗えない。 そんな若大将の今回の運動課目はアイススケート。 たっぷりと時間をかけて大学を卒業した田沼雄一こと若大将・加山雄三は、ニート生活をチョイスせず大手自動車会社の面接試験に向かう途中、高齢者を同伴した若い娘・酒井和歌子をサポートしていて大遅刻。しかしながら、偶然出会った叩き上げの同社社長・藤田進に、そのおおらか(すぎる)性格と歯に衣着せぬ発言の度胸のよさを認められ、無事に入社を果たす。 社長が藤田進、人事部長が小泉博、社長秘書が高橋紀子、東宝特撮映画ファンならもれなく就職を希望しそうな日東自動車は日産自動車が全面協力。ただし、庶民派の庶務のおねーちゃんが岡田可愛なのはともかく、直属上司がお調子者の藤岡琢也、重役が押しの強そうな田中明夫であるから、おそらく残業は多いと思われる。 試験会場へ向かうのに、時間の読めないタクシーを使うというセンスがすでに社会人としてはいかがなものか?という気がしないでもないが、セレブ(注:日本で定着している「金持ち」という意味で使用)な若大将としてはあくまでも自然なのだ。 部活のマネージャーというよりも若大将のコバンザメとして活躍していた江口・江原達怡は、若大将の妹・中真千子と結婚し、マスオさん生活を満喫中。若大将が工場実習で留守のあいだにちゃっかり部屋を占拠してしまうのだった。しかたなく日東自動車の独身寮で生活する若大将の同期は、セオリーどおり途方も無く老けた小山・小鹿敦(当時、小鹿番)であった。 若大将の周囲には老け顔の配置が欠かせない。たとえば青大将・田中邦衛であり、カラミのチンピラ(中山豊、桐野洋雄ら)である。つまり若大将は常にスクリーン上で絵柄の中で相対的に若さを演出していたのである。アイドル張るのも楽じゃないね。 若大将は、商談をライバル会社にもっていかれないように取引先の社長・高田稔にコンタクトをとろうとするが、失敗。まだローカル空港に格下げされていない頃の羽田空港でレンタカー会社に勤務していた節子・酒井和歌子と再会した若大将と青大将。節子の兄は零細自動車修理工場のオーナー・藤木悠。自動車つながりですっかり仲良くなってしまう若大将、節子もノリノリである。 ところで本作品にはもう一人の主役がいる。それはパパ大将こと田沼久太郎・有島一郎である。母親のりき・飯田蝶子には頭が上がらず、娘夫婦にはいちゃいちゃされて、面白くないので帰宅拒否に陥った久太郎は、未亡人のバーのマダム・草笛光子に一方的にアタック。マダムもその気になったように思われたが、いよいよ告白タイムのその夜、マダムは金に目がくらんで質屋のジジイ・左卜全と再婚してしまう。マダムの店の名前は「ジャッキー(ジャクリーン)」でジジイの名前は「大梨(オナシス)」、単なる駄洒落である。 若大将に惚れる女子は澄ちゃん(星由里子)を筆頭に漏れなく了見が狭く嫉妬深い。これは若大将以外の男子に対して、何様のつもりだ?的失礼な態度をとることと、若大将の八方美人的な性格、または好感度100パーセントな性質による親しみやすさ、ハードルの低さ、脇の甘さ、などが根拠の無い自信を彼女たちに与えてしまうからなので、結果として独善的なわがまま娘になってしまうのである。罪作りな男であるなあ、若大将は。 例によって例のごとく、実習中はタコ部屋でギターなんぞ奏でて歌を披露し、社長令嬢・長慶子とスケートリンクでデートしたりしながら、なんとなく事態は好転していき、青大将の横恋慕もものかは、若大将と節子はなんとなく上手くいってしまうのだった。すべての女子にフラれた青大将はパパの関連会社の副社長というリッチな社会見学を卒業し、ホンモノのフレッシュマンになることを誓うのであった。 三十路を過ぎてもなお映画の中では元気一杯の若大将。演じる加山雄三はすでに職業が若大将であるから、還暦過ぎてもそのテンションがあまり変化したように感じられない平成の加山雄三を知っている現代の観客は、あの加山雄三の若き日々を垣間見るような気分になるかもしれない。 派手でわかりやすいが、時として観客をドン引きさせるマニアックな福田純の演出もあいまった、後期若大将映画の一本。 ところで若大将映画のコンセプトは「スポーツと音楽とを融合する人」であると思うが、コレを英語にすると「Sports Music Assemble People」である。この頭文字をならべると「SMAP」男子アイドルのやることは昔から決まっていた。 (2006年09月11日 ) 【追記】 |
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※本文中敬称略 |
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file updated : 2006-09-12