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殺しの烙印


■公開:1967年

■制作:日活

■制作:岩井金男

■監督:鈴木清順

■脚本:具流八郎(鈴木清順、木村威夫、大和屋竺、田中陽造、曾根中生、岡田裕、山口清一郎、榛谷泰明)

■原作:

■撮影:永塚一栄

■音楽:山本直純

■編集:丹治睦夫

■美術:川原資三

■照明:三尾三郎

■録音:秋野能伸

■主演:宍戸錠

■寸評:思いつきで突っ走る不条理アクション

ネタバレあります。


 言っとくが、世間で言われているほど「カルト」でも「スタイリッシュでカッコいい」映画でもないと思うぞ。

 プロの殺し屋として、ある組織においてナンバー3にランクされている花田・宍戸錠は、今は酒に溺れてランク外に転落中の仲間、春日・南廣とともに某組織の幹部と思われる男の護衛を依頼される。途中、襲撃され花田はその抜群の運動性能でもって応戦するが春日は殺される。そしてなにより無口で迫力の満点の幹部の男の射撃スキルが圧倒的に高かったことに花田は驚いた。

 ご飯の炊ける匂いに欲情して勃起するというやっかいな性癖を持つ花田は、鶏ガラのような女房、真美・小川万里子とセックスに耽る。薮原・玉川伊佐男から新たな殺しの依頼が来る。ターゲットは四人、しかし最後の一人を殺すとき、うっかり別の通行人を殺してしまう。組織はこの依頼の協力者であり、かつ、殺し屋である美沙子・真理アンヌに花田を狙わせる。殺し屋組織のランカーから一転、逃亡者になった花田に銃を向けたのは女房の真美。負傷した花田を救ったのは美沙子であった。

 抜け忍、カムイのような状態になった花田、彼をかばった美沙子が拉致される。組織の殺し屋に襲撃され、車を使ったトリッキーな対戦をなんとかかわした花田の前に、かつて護衛した組織の幹部が現れる。彼は大類・南原宏治、実は組織のナンバーワンの殺し屋は大類なのだった。なんとも無気味で大柄な大類に狙われ、後楽園ホールで対戦することになった花田。組織の殺し屋はあらかた全滅した。最後に残った者がナンバーワンになれるのだ。

 南原宏治はいいっ!ファンの人には申し訳ないが、宍戸錠よりかはるかに目だってカッコ良かった、と断言しよう。どうせなら真理アンヌと南原宏治のカップルのほうが良かったんじゃないか?っつーくらいである。これは宍戸錠の温厚でつつましい性格が南原宏治の濃い作りこみに遠慮したかのようである。同じ野獣系列ではあるが、日活のスタアシステムの関係上、やむをえないキャスティングであろうが、筆者は「南原さんと宍戸さんは役を入替えたほうが良かったんじゃないの?」だ。

 花田の殺しのテクニックは奇抜で斬新な(当時)ものが多く、水道管を使った射撃術や、動く看板の陰から発射するライフルなど、多数あってここが最大の見どころと言える。こういうアイデアが豊富なのはひとえに脚本家グループのおかげだ。そう「隠し砦の三悪人」と同じように。

 同じ「殺し屋」を扱ったフランス映画「サムライ」(香水じゃないよ!アランドロンが主演した映画のほうだよ。原題は「Le Samourai」)における主人公はストイックな生活をしておりひたすらターゲットを殺傷し、その目的のためならなんともあっさりと死んでしまう。実に簡潔な武士道精神を発揮していたフランス人と違い、本作品の殺し屋は生きることに執着し己の評価にこだわる、きわめてダサい殺し屋である。人間臭さ大爆発の花田を見ていると実社会で鬱積した人たちを体現しているように思われる。

 真理アンヌのナイスな肢体のおかげでエロは満点だがいかんせん、ちょっと出場が少なかったかも。あと、ぐっと眉毛に力をこめたときに玉川伊佐男はちょっとだけカルロス・ゴーン似。

2006年08月17日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2006-08-18