「日本映画の感想文」のトップページへ

「サイトマップ」へ


奇談


■公開:2005年

■制作:オズ、エンタテインメントファーム

■制作:一瀬隆重

■監督:小松隆志

■脚本:小松隆志

■原作:諸星大二郎「生命の木」

■撮影:水口智之

■音楽:川井憲次

■編集:足立浩

■美術:斎藤岩男

■照明:奥村誠

■録音:柿澤潔

■主演:藤澤恵麻

■寸評:

ネタバレあります。


 言っとくが「キダム(シルクドソレイユ)」じゃありません。で、今回の妖怪ハンターは沢田研二じゃなくて阿部ちゃんです。やっぱ、こういう役どころには胡散臭い美形がよろしい。しかし、ボケをかまさないというだけで物足りなく見える阿部寛。

 ところでジャパニーズホラーってなんだろね?怪談映画ってことなの?そのわりには怖くないし、情念も薄い。怪談映画っていうのは人間の罪悪感が母体だから、怖いんだけどよく観てると怖がっている人があんまいないのよね。気持ち悪がってる人はいるんだけどさ。

 冒頭は実相寺昭雄ワールドのような、はたまた新東宝の怪談映画のような・・・1972年、日本科学技術大学ではない大学に通う大学院生の佐伯里美・藤澤恵麻は幼い頃に神隠しに遭遇し生還、その間の記憶が欠落している。ふとしたきっかけで過去の記憶に直結する風景を発見した里美は、東北にある「隠れキリシタンの里」を訪問することにした。

 ヒロインの専攻がイマイチ不明であり、かつ知るのが怖いのだが、なにせこの大学には教授に堀内正美がいて、かつ彼女の研究室の先生は土屋嘉男であるから、日本中の人間を発狂させる装置とか人体改造とかしてるに違いない。

 さて、そんなことはさておき、里美がたどり着いた隠れ里では、その「はなれ」と呼ばれる集落について誰もが語ろうとせず、彷徨い出た住人の重吉・神戸浩の意味不明のことばに駐在・柳ユーレイや役場の加納・菅原大吉も困惑する。里美はものすごく信用できなさそうな神父・清水紘治がいるカトリックの教会で、背の高い男に出会う。彼は考古学者の稗田礼二郎・阿部寛と名乗り、自ら「異端の考古学者」ようするに、胡散臭い電波系であると名乗る。で、正体は妖怪ハンター。でもなんとなく頼りになりそうだし、ハンサムなので(そうか?)里美は博士とともに隠れ里の謎と、神隠しの記憶を辿ることにする。

 その村は渡戸村と言う。徳川時代より以前からキリスト教の弾圧を逃れた人たちが住み着いたのであるが、村のほとんどの人は後にカトリックに改宗、しかし「はなれ」の人たちだけは閉鎖された空間に独立して生活し改宗を拒み、近親相姦を繰り返したので知能が低く(推測)、また、宗教弾圧の時代に渡戸村の人たちを密告したのではないかという疑いもあって渡戸村からは村八分にされていた。、里美と碑田は寺の住職・一龍斎貞水や温泉客・守田比呂也から、静江・ちすんとお妙・草村礼子もまた神隠しから生還した人間だと教えられる。

 お妙はその結果、ささやかな予知能力を身につけ、静江は100歳を超えているはずなのに子供の姿で発見された。

 隠れキリシタンたちの聖地を訪れた里美たちは「はなれ」に住む善次の磔刑と思われる遺体を発見、死後数日経過しており腐敗が進行。しかし相次ぐ地震の発生で道路が崩壊し、村は孤立、遺体を村にとどめ置かねばならず、こともあろうにカトリックの教会に安置されることとなる。そこへ里美と一緒に神隠しに遭った新吉・田中紺海が現れる。彼は静江と同様にまったく歳をとっていなかった。新吉は「世界開始の知らせ」を呟いて姿を消す。里美と碑田そして神父は「はなれ」に向かうがそこには重太一人が残されており、村人は姿を消していた。重太は善次は村のみんなに処刑されたのだと言う。しかも善次は自ら望んで磔刑にされたのだった。

 三人は重太とともに洞窟へ向かう。そこは隠れキリシタンの聖堂のようであったが、奇妙な穴が空いていた。中を覗くとそこにはおぞましい数の人間たちがうごめいていた。

 で、ここからが面白いのであえて書かない。っつうかオチは読めるんだけど知ってるとイマイチ。CGは面白いんだけど、生身の芝居とセットがチープなんで悲しい、とか色々あるので後は本編観てね。

 東北弁の救世主っていうのがそこはかとなく笑えるのだが、あとはキリスト教の解説やら駄洒落じゃなくて語呂合わせ満載を台詞で説明されるのかなり眠い。やっぱ絵柄で見せてもらわないとね。ところで諸星大二郎というと筆者は即「リリパット」なのだが、そうした期待は裏切られずに済んだ。しかも日本を代表する(なんの?)白木みのる師匠による「洗礼のヨハネ」だもの、一緒に河に浸かったらヨハネのほうが足つかなくて流されちゃいそうだけどね。

 なんか物足りなかったな。一瀬隆重って監督やったら「帝都大戦」だったしな、あれで懲りたのかな?でもまあ土屋さんが元気だったから、いいや(そこですか・・・)。

 前フリのわりには尻すぼみの感はあるけれど、子供がたくさんでてきて可愛からいいか、あ、いや、良くない、子供可愛くしちゃイカンよね。磔刑シーンをまともに人形でやったのは最初、冗談かと思った。ラストシーンも興ざめ。ギャグに振るのか、ホラーにするのかはっきりしたほうが良かったんじゃないか?堤幸彦と塚本晋也って凄いな、と関係ないところで再認識。

2006年07月23日

【追記】

※本文中敬称略


このページのてっぺんへ

■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2006-07-23