友情 |
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■公開:1975年 ■制作:松竹 ■制作:上村力 ■監督:宮崎晃 ■脚本:宮崎晃 ■原作: ■撮影:川又昂 ■音楽:佐藤勝 ■編集:大沢しづ ■美術:森田郷平 ■照明:小林松太郎 ■録音:小林英男 ■主演:渥美清、中村勘九郎(現・中村勘三郎) ■寸評: ネタバレあります。 |
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いや、マジで感動した。なにせいつも温泉芸者とか、ノミ屋とか、露店でカラーひよこ売ってる人とか、そういう人が大活躍するような映画ばっか見てるもんですから。山田洋次の映画は人を高いところから見ている作品が多いので概ね嫌いですが、つまり、ようするに、たとえば寅さんを笑っている間でも、ふと気がつくと自分が笑われているような気になるんですな。そういう映画って気分悪いわけですよ、どうもね。ところが本作品は違う、山田洋次っぽいんだけど、違う。だって本当に山田洋次じゃないから、アレですが。シミジミと、ほのぼのと、泣ける。ああ、こんな作品を知らなかったなんて!渥美清のナンバーワン作品に認定しまいましょう、この際だから(どんな際だか・・・)。 東京の戸越銀座で暮らす貧しいカップル。紀子・松坂慶子は写植オペレータ、宏・中村勘九郎(中村勘三郎)はまだ学生でフリーターである。二人は同棲しているのであるが経済的に自立できない宏は思い切って夏の間、ダム工事の飯場で働くことにする。「金に困ったら飯場かマグロ船」というのは健康がとりえの野郎どもの短期集中型のアルバイトとして一昔前まではメジャーな手段であった。振り込め詐欺等の犯罪行為に下端することに比べなんとまっとうライフスタイルであろうか。 源太郎・渥美清は酒好きでサボり癖のある男だが現場のムードメーカーとして、苦労人の社長・名古屋章、事務方の安岡・谷村昌彦を含め皆から愛されている。宏の留守中、田舎のお嬢さんである紀子の叔父、順吉・有島一郎は可愛い姪っ子が貧乏学生に食い物にされているのではないか?と偵察のため上京して来る。 身体がバテバテになるまで一生懸命働いていた宏であるがトラックの事故で左腕を骨折、3週間ぶんの給料を手に、源太郎に見送られて東京へ帰る。アルバイトに行けなくなった宏はパチンコ生活に突入、だが紀子に諭され改心、新たなアルバイト先を探す。ある日、宏は警察からの電話で上野駅に向かう。東京に来た源太郎が飲み屋で泥酔し、喧嘩の仲裁に入ったのはよかったが他の仲間を逃がした上で店側の通報で駆けつけた警官たちに逮捕されてしまったのだ。 源太郎は身元引受人として宏を頼んだのである。土産の毛ガニを食いすぎた源太郎と宏は腹をこわしてしまう。人に迷惑をかけずに生きてきた源太郎は恐縮し、献身的な看護をしてくれる紀子に感涙する。順吉が宏に会いに来る。「一生愛し続ける自信がない」という宏の言葉に鬼の首でもとったように説教する順吉。実家からの仕送りがない宏は経済的に紀子に依存していることを正直に話す。若い二人の一生懸命な様子に源太郎は「二人の仲を保証する」と言い順吉を諭した。 下痢が完治しないうちに源太郎は広島ほうの現場に行くことになったので心配した宏も一緒について行く。笠岡に近づくにつれ、徐々に表情が暗くなる源太郎を訝しがる宏。源太郎は自分の生い立ちについてポツリポツリと語り始める。彼は真鍋島の出身でそこに妻子がいると言う。家族をほったらかして出稼ぎをしているうちに仕送りも止めてしまった故郷に帰る勇気がないという源太郎の代わりに宏は家族の様子を確かめるために一人で真鍋島に向かう。 旅館のオヤジ・加藤嘉から源太郎の妻、加代・佐々木愛は取り残された義父の友吉・笠智衆と二人の子供を連れて源太郎の幼馴染、健太・米倉斉加年と再婚していた。「旦那の留守に男を作ったのかいっ!」とちょっぴり憤る宏であったが、不漁が続いて大量の漁師が失業し出稼ぎの村と化したことを知った宏は自然とともに暮らす厳しさを知る。 真鍋島に源太郎がやってくる。意を決して戻ってきた源太郎に「帰ったほうがいい」と言う宏の態度に何事か察する源太郎。源太郎の子供は彼の顔を覚えておらず、自分の知らない三人目の子供の泣き声を聞く。小さな村であるから変な噂が立ってしまっては元妻の一家が迷惑するだろうから、と近所の食堂で必死に笑顔を振りまく源太郎。帰りの船で大好きな酒も呑まずに島を見つめる源太郎が泣き崩れる。宏は大急ぎで東京へ戻り紀子に「絶対に別れない」と言うのだった。 薄皮を剥がすように徐々に明かされる源太郎の過去が切ない。誰が悪いと言うわけでもないのに「意思の弱さ」が故に別れてしまい二度と元に戻れなくなった夫婦の姿に自分と紀子の関係を重ね合わせる宏。 自分自身を演じると光り輝く渥美清と、技巧がクサミにならない若きヴェテラン中村勘九郎の組み合わせがこれ1本きりというのは実に惜しい。本当にこの二人ならば役者としても高度な友情が芽生えたんじゃないかと、いや、本当に残念。松坂慶子の美しさ、宏を見守る母親のような、菩薩のような女性像も素敵だ。 人間が生きていくために本当に必要なものは何なのかということをじっくりと考えてみたくなる映画。 (2006年04月16日 ) 【追記】 |
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※本文中敬称略 |
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file updated : 2006-04-16